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「クエルナバカの碧い空」 - 呑気家族のメキシコ移住計画 - |
出版:近代文芸社 石田 かり・著 |
第8章 「猫」から一部抜粋−−−だから、メリッサが真っ白い子猫を抱いて、「木の上にいたんだけど、 降りられなくなって震えていたから、助けてあげたの」と言ったときには、お おいに警戒した。メリッサは、ウチが飼うと言わないものだから、そのまま抱 えて帰っていったけれど、翌日には、「コンドミニオの庭で、皆で飼うことに 決めたの・・・」といって、再び猫を見せにきた。友香理が、自分も餌を買っ てあげると言う。ニエベは何か捕まえると必ず家に持って来る (クリックで拡大)
「ウチの猫だと思われたら困るんだから、人に知られないように、なるべく、 遠くに餌を置いてね。」最後まで、抵抗した。
飼猫だったらしく、ひどく人懐こい。透き通るような青い目と、耳の中と足 の裏がピンクなのを除くと、全身が上品な真っ白だ。メリッサが、メスだと主 張するから、子供たちは“ニエベ”(雪という意味で、女性名詞)と名前を付 けた。これが、家に入りたがって入り口の網戸の前に座って、青い目で人を見 つめる。網戸を開けろとひっかく。庭を歩けば、足の間に体をすり寄せながら 付いて来て、足が絡まって転びそうになる。庭のテーブルで勉強しようと、ノ ートや本を広げれば、その上に座り込んでしまう。消しゴムに戯れて遊ぶ。可 愛さのあまり抱きかかえると、ごろごろと喉を鳴らして、胸に擦り寄ってくる。 家に居る時間の長い私は、自分で自分の罠にはまって行くのが、目に見えるよ うだった。−− 以上抜粋でした。
最後まで、飼うことに反対していた猫だったけれど、飼ってみるとこれほど かわいい物はない。メキシコ人に聞くと、犬派が圧倒的に多く、猫派は、子供 や一部の大人だけで、ごく少数派だ。猫は、おしっこが臭くて、毛が細かいか ら不潔という理由らしい。でも、庭が広いから、ニエベがおしっこをするとこ ろを見たことがないほどで、匂いなんかしない。家で飼われている犬が家の中 で粗相をするのを見ているから、猫の方がよっぽど清潔だと思うくらいだ。
ただし、このニエベ、もう可愛い子猫ではない。以前は、我が家を訪ねに来 て、初めてニエベを見た人は、「かわいい猫ですね」とか、「かしこそうですね」 とか、人間の赤ちゃんを誉めるときと同じような言い方だったのが、今では、 「でっかいですね!!」の一言。何せ、大の字ではなく、伸び切って万歳 したまま一の字に寝ている時にこっそり測ったら、90cm近くもあったのだ。
私は、ニエベの獲物は、全てニエベの所有物であると割り切っている。庭で 蛇と戯れているのを見たときには、お隣さんのルイスが、蛇を猫から取り上げ て逃がしてあげようとするから、必死にそれはニエベのだから返してくれと抗 議したものだ。ルイスは、無類の動物好きだから、たとえ蛇といえども、動物 愛護の精神を発揮する。けれど、それって、ルイスの奥さんのヒルダが、ねず みが大嫌いで、台所の回りに殺鼠剤を置いているのと矛盾しないか? それに、 ねずみと猫は友達だから、ねずみを殺さないよう抗議したいくらいだ。(もち ろん、本当は、殺鼠剤を食べたねずみを、猫が食べると死んでしまうからとい う理由なのだけれど・・・。)
ニエベが夜中に、ねずみを連れてくる時ほど、困ることはない。なぜかとい うと、このねずみ、体が鶏のタマゴくらいの大きさで、目がくりくりと大きく て、とっても可愛いのだ。ニエベの所有権を尊重するか、ねずみの訴えるよう な大きな眼差しに答えて助けてあげるか、本当に困ってしまう。