#4.トピックス

誇り高くもモレーロス原産の植物 − ノーチェ・ブエナ物語 

メキシコでは、クリスマスをクリスマスと言わず、ナビダ(NAVIDAD−キリスト
の降誕を祝う祭)と、言います。また、クリスマス・イヴをノーチェ・ブエナ
(NOCHE BUENA-良き夜)と言います。植物のノーチェ・ブエナは、11月から
12月になると、自然に赤くなって街を彩るこの季節特有の花です。植木屋の
店先は洗練されたデザインのこの植物の鉢植えでいっぱいになり、路上にもノ
ーチェ・ブエナ売りが、たくさんの鉢を並べ、時には鉢を背負った花売りが家
を訪ねて来ることもあり、急にクリスマス気分が高まるのです。

ノーチェ・ブエナは、3メートルにも成長する潅木の一種で、茎に傷をつける
と乳白色の樹液を出す、葉は互い違いに生える、赤くて目立つ花と見える部分
は実は花ではなくて葉包という本当の花を保護する部分であり、本当の花は目
立たない小さな黄色っぽい部分で、花びらはなく、蜜を分泌する部分だけを持
つ、という特徴を持っています。

この植物は、日本などではポインセチアと呼ばれていますが、モレーロス州が
誇る、モレーロス州原産の花です。その数奇な運命の物語を聞いて下さい。

西暦1440年頃、メヒカの偉大な皇帝モクテズマは、豊かに繁るオアクステペッ
クを訪れ、メヒカ語で「皮の花」を意味するクエトラソチトゥルが赤く色づく
景色を見て、すっかりこの地が気に入り、自分の領土にしました。

16世紀に入ると、当時のオアクステペック、現在のモレーロス州のこの領土
にスペイン人が到着し、僧院を建設するなど、様々なカトリックの習慣を持ち
込みました。彼らは、毎年クリスマスの時期になると、緑色の葉が濃い赤に変
化するこの美しいクエトラソチトゥルに気付き、庭に飾るようになりました。

現在のゲレーロ州、タスコ市のサンタ・プリスカ教会は、降誕祭を祝い、キリ
スト誕生劇を上演し、ナシミエントの飾り等を飾るなど、現在も広く世界で親
しまれている様々なクリスマスの伝統行事を始めましたが、同時に、この時期、
必ず緑色から赤く色づき始めるこの花を、「サンタ・ノーチェ・ブエナの花」
と呼び、新たな信心の証として、各家庭に贈り、飾る習慣を作りました。

1823年にタスコのサンタ・プリスカ教会を、訪れたアメリカ人大使、ジョエル・
ポインセットは、この花に強い印象を受け、任務の終了後に、この種を自国に
持ち帰り、「ポインセチア」と言う名前で登録し、改良に務め、全世界に広め
たのでした。

今日でも、原種のクエトラソチトゥルは、野性種のまま、モレーロス州に広く
分布していますが、ポインセットによる改良種も、造園業者によって従来の方
法により屋外で栽培されています。

しかし、広く世界では、ノーチェ・ブエナは、遺伝子的に改良され、最先端の
技術を持つ温室で、商業的に大量栽培することが可能になりました。今では、
この植物は、4、5ヵ月で成長し、成木で高さ25から30CMの手ごろな大きさで、
季節を選ばず、長く花を楽しむことができ、また、野性種とは反対に、直射日
光を避ける室内用の装飾植物となったのです。

乳白色の樹脂、互い違いに生える葉、小さくて目立たない本当の花の部分は、
原種のクエトラソチトゥルの特徴を失っていませんが、色は、野性の濃い八重
の赤とは異なって一重で、やわらかな薄い赤から、濃い赤、クリーム色、黄色
がかった緑色、そしてそれらの色の組み合わされたものまで、気候や好みに応
じ様々な種類が揃っています。人間の気まぐれは、生物学的にすっかり別の植
物に変えてしまったのです。

モレーロス州原産のこの植物が、現在は、日本を含めて世界中で見られること
は、喜ぶべきことでしょうが、冬でも強い陽射しの中で、濃い八重の赤が重く
重なって青い空の高みで揺れるこの迫力の原種はまた別のものです。是非、我
が家の庭へ見にきてください。

写真は、左から、

  我が家の庭にある3メートルほどの野性種の八重のノーチェ・ブエナ;
  緑と赤が一段毎に交互になった、花売りが売りに来た改良種;  
  薄い赤と、黄色っぽい薄緑色の配色が組み合わさった改良種;  
  似ても似つかないけれど、これもノーチェ・ブエナ、白いチロチロの花が満開
どれもこれも全部ノーチェ・ブエナ

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