
|
「クエルナバカの碧い空」 -呑気家族のメキシコ移住計画- |
出版:近代文芸社 石田 かり・著 |
第27章 「仕事をしよう」
−−黒沼邸は、クエルナバカから小一時間のところにある大邸宅で、その家の 様子は、最近出版された写真本「メキシコのわが家へようこそ」で見ているから だ。−− 以上抜粋でした。 前回と同じ章の抜粋で申し訳ありませんが、今回も、大きな恩恵を受け、美味し い思いをしてしまった出来事を報告します。 ゆっくりすることだけが楽しみの正月休みでしたが、メキシコ在住のバイオリニ ストの黒沼ユリ子さんから、2日の新年会へのご招待がありました。黒沼邸のお 手伝いさんが正月休みで不在なので、料理を運んだりするお手伝いをするという ことで、お呼びがかかったのです。ところが、若い人たちが沢山助っ人に来てお 手伝いしてくれたおかげで、私達は、食べて楽しむだけという贅沢をさせてもら いました。
すべて黒沼さんの手作り、料理も一流

黒沼邸は、メキシコ・シティとクエルナバカの中間点を東にそれたところに位置 するトラヤカパンという土器や陶器などで知られた村にあります。最初に伺った 時には、道なき道の奥に突如として出現するカラフルな「バイオリンの家−CASA DE VIOLIN」を見て、とても感動したものです。この「バイオリンの家」を訪れる 人で、交通量も増えたせいか、現在は、道路も舗装されて行きやすくなりました。 このバイオリンの家を訪ねる時の最大の楽しみは、ユリ子さんがご自身で料理さ れる美味しい食事です。「メキシコの我が家へようこそ」にも沢山写真が載って いますが、ユリ子さんは料理好きの料理名人で、和食メキシコ料理を問わず、見 た目も味も超一流なのです。真に才能のある人は、何通りにも才能を発揮するも のだと、心底感心してしまいます。今回も、大皿に盛ったちらし寿司や手巻寿司、 刺身などを、さまざまな国から来た訪問者が群がって、あっと言う間に平らげた のでした。 ゲスト達も豪華です。アミーゴス・デ・ラ・ムジカのワトソン会長他、様々な分 野で活躍するメキシコ人、アメリカ人、日本人などの要人や、多くの音楽家が招 かれていて、ユリ子さんの交際範囲の広さにまたまた感心してしまいます。普通 なら、同席することさえ夢にも考えられないような人々と、一緒に食事をしたり、 冗談を言い合ったりできるのですから、なんの肩書も、音楽はもちろん特別な才 能もない私達がそこにいることを奇跡と思わざるを得ません。 さて、今回の特大の楽しみは音楽でした。食事のあと、駐墨日本大使の奥様であ る田中夫人が、もう一人のゲストのピアニストと、ピアノの横で談笑しながら、 ちょっぴり歌い始めたのです。すると、さっそく、人々が集まり、椅子が並べら れて、ミニ・コンサートの準備が整ってしまいました。私達も、階段の手摺りに もたれて聞く体勢にはいりました。 田中夫人に、以前にちょっとお会いしていたときには、オペラを歌うとは言って も、「ほんの素人で、仲間内で歌うだけですから・・・」とおっしゃったので、 「ああ、そうですか」と、素直に答えてしまった正直者の私でした。 ところが、感情のこもったアリアで素晴らしい喉を披露したので、みな大感動で 拍手が鳴り止まなかったのです。それではと、今度は、日本の曲「浜辺の歌」を しっとりと歌ったので、とても感激しました。その後は、他にも招かれていた、 それこそ本職の二人のオペラ歌手が、次々に迫力の声を聞かせ、そしてついには、 ユリ子さんが登場したのですから、たまりません。ユリ子さんを含めた弦楽四重 奏とピアノが、軽妙な小曲を次々と奏でるものですから、お腹いっぱいの私達は、 体中満腹の幸せさを味わったのです。
思わぬミニコンサートに感激、料理も音楽も堪能しました

さらに、メキシコ・シティで働いている庭前さんや、渡部さん、メキシコ大学で 学んでいる矢代さん等など、メキシコという外国で、それぞれ、しっかりとした 目的を持って活躍している日本人の若い女性たちに会えたことも、新年の収穫で した。本当に、正月早々縁起がよかった一日でした。