「クエルナバカの碧い空」
-呑気家族のメキシコ移住計画-
出版:近代文芸社
石田 かり・著
第9章 「猫 パートII」から
−−不思議なのは、ニエベがウチに住み始めてから、前からいたような野良猫で はなく、とてもきれいなシャム猫の子猫とか、ニエベと対になりそうな真っ黒の 子猫が、ウチの玄関先に来るようになった。でも、これ以上、扶養家族が増える のは、許せない。飼い主として避妊手術もうけさせた。−−                             以上抜粋でした。 そう、絶対にこれ以上の扶養家族は許されない。ところが、メリッサときたら、 またメスの子猫を拾って来た。まだ、目も開いておらず、やせこけているけれど ビロードのようなブルーグレイの毛並みが美しい。
親分ニエベと子分アナスタシア      仲良く昼寝(行儀いい?)

(クリックで拡大)
でも、何度も言うようだけれど、扶養家族は夫と子供、そしてニエベだけでもう
充分。メリッサが何度も胸に子猫を抱えて見せに来たけど、今回ばかりはきっぱ
りとした態度を取ったから、子猫はメリッサの家で飼われることになった。

ところが、子猫はやがて一人歩きするようになる。ニエベにまとわりついて遊ぶ
だけならまだしも、ニエベについて歩くうち、我が家の猫穴から出入りすること
を覚え、いつしかニエベの餌箱に首をつっこむようになる。メリッサのお母さん
のヒルダと立ち話をしていたら、「ウチの猫はあんまり食べなくて心配だわ」な
んて言うけれど、三度三度、大猫のニエベの三倍くらいの量をウチで食べるのだ。
自分の家に帰ってまた食べるとしたら、その方がよっぽど心配だ。

この猫を拾ったとき、メリッサはアナスタシアという可愛らしい名前をつけた。
その後、何が気に入らなかったのか名前を変えたのはいいけれど、メリッサのお
父さんが始めたラミナ(物置の屋根などにする波状のプラスチックの板)を売る
店の、ラミナの一種のガルバとかガリンバとか言う変な名前になったから、覚え
られない私達はアナスタシアとかアナちゃんとか呼び続けている。

ニエベは、他の猫は追い払うのに、アナちゃんには弱いらしくて面倒臭そうに相
手をしている。そのうち父性愛にめざめたのか、体をなめてやったり、一緒にじ
ゃれて遊ぶようになった。こうなると、ニエベの娘のようなもので、ウチで3食
たべ、ウチで遊び、ウチの庭で寝て、ウチの名前で呼ばれて、これが我が家の扶
養家族でなくて何だ! ハッと気付いたら、やっぱりウチの猫?!

猫の本性はよく知らないけれど、まだ生まれて一年もたっていないこのアナスタ
シア、春が来たら急にサカリがついたらしくて、変な鳴き声をあげながら歩き回
るようになった。こんな時、本当の親なら、人への迷惑とか色々考えて大変だけ
れど、そこは実の親メリッサとヒルダが、さっさと獣医につれて行き、避妊手術
をしてしまった。

ちなみに、クエルナバカで猫に避妊手術を施す費用は、約100ペソで日本円で
約1300円。メキシコ人は高いと言うけれど、日本に比べたらただ同然だ。

ある日、手術痕も痛々しく、毛を剃られて狸のようなお腹をしたアナスタシアが、
元気に餌を喰いに来た。もとのガキっぽいアナちゃんに戻って、仕草も可愛らし
さを増している。

よく考えたら、病気だの、手術だのと本当の心配はメリッサやヒルダがしてくれ
る。どんなに我が家に入り浸っても、これじゃ扶養家族とは言えない。まるで、
ジイさん、バアさんが機嫌のいい時だけ孫を可愛がるようなものだ。実家の親は
しっかりしている上に、子守のニエベはおっとりと根性よしで優しい。ジイさん、
バアさんは無責任に甘やかすしで、アナスタシアは幸せ者です。

表紙に戻る
次に進む
バックナンバー
#1 「運転しよう」から:何でもありのメキシコ式運転
#2 「猫」から:猫の獲物はどうする?
#3 「免許証」から:ここでは買うんです
#4 「仕事をしよう」から:押し掛け助手は大活躍
#5 「仕事をしよう」から:コンサート後のご馳走
#6 「仕事をしよう」から:黒沼邸でのミニコンサート
#7 「スペイン語」から:無口な日本人
#8 「免許証から」から:車の所有税
#9 「クエルナバカ」から:蜂鳥

[PR]あなたへ届く、ラブレター:ココ!ラブレター日記。≪大人気の0円≫