3月5日の金曜日に、メキシコ市で、チャイコフスキーのバレー「白鳥の湖」を
見てきました。と言っても、そこらの劇場で見てきたのではありません。語れば
長いお話です。是非、聞いて、そして、一度実際に訪れて下さい。
メキシコ市の中心部に広がるチャプルテペックの森は、都市部の公園としては、
南北アメリカ大陸最大であり、市の幹線道路を跨いで広がっていながら、深い木
々に覆われ、湖や湧き水などの豊かな自然が残されています。静かな遊歩道を散
策するのもよし、動物園、美術館、劇場、人類物博物館などの様々な博物館や、
植物園、お城などを訪れるのもよし、遊園地、波のあるプールで遊ぶのもよしと、
メキシコ人にも、外国人ツーリストにも、格好の憩いの場となっています。
このチャプルテペックの森の中に、本当の白鳥の湖があります。ある日、当時国
立バレー団(CAMPANA NACIONAL DE DANZA)のディレクターであったヴァスケス・
アラウホが、この湖にかかる小島を眺めて、ひらめきました。そして、話がトン
トンと進み、フェリペ・セグラが「白鳥の湖」の圧縮バージョンのシナリオを書
き、ベジャス・アルテス劇場のオーケストラが曲の録音を担当、ホルへ・ケロッ
グによるナレーションが出来上がって、1976年セマーナ・サンタ(3月の終
わりから4月の初めにかけての連休)の一週間前に、国立バレー団によって、7
回連続の「白鳥の湖」こけら落とし公演が行なわれたのでした。
それ以来、改良を加えながら、今日まで23年に亘って、年に一度(2月の終わ
りから4月の初めにかけて約25回のシリーズ)の公演が、この自然の湖を舞台
にした伝統行事となったのです。
私達は、クエルナバカにある旅行社が企画した3月5日金曜日の「白鳥の湖」バ
ス・ツアーに参加しました。旅行社前に夕方5時集合、5時半に出発し、チャプ
ルテペックの森のふたつの湖のうち、舞台となる小さい方の湖に、7時過ぎに到
着しました。公演は、夜8時に始まります。
8時になると、暗がりの湖の左手にできた舞台に照明が当たり、華やかな音楽と
共に、湖に狩猟とパーティの為に集まった美しく着飾った人々が浮かびあがりま
した。奥からは、このパーティの主役である王子ジーグフリードが馬に乗って現
れ、狩猟の人々と湖の向こう側を通ると、木々の間に馬や人が見え隠れして、実
に幻想的です。また、人々は、松明をかざしながら湖を小舟で渡り、私達の正面
にある小島に辿り着き、舞台をこの島に移して、お馴染み白鳥に姿を変えられた
オデッタ姫や、黒鳥オディレ、そしてその他の白鳥たちの踊りが始まります。