
#1 クエルナバカ紹介
クエルナバカ見所第6弾は、クエルナバカの郊外、もうヒウテペック市に入った 所にある「CAMINO REAL SUMIYA」というホテルと、その敷地 内にあるTEATRO KABUKI 歌舞伎座をご紹介します。隣の市ですが我が家から車で 20分くらい、SUMIYA周辺の豪華高級分譲住宅地のつきあたり、「角屋通 り」、「京都通り」など優雅な雰囲気の中を通って突き当たった所にあります。 このメキシコの歌舞伎座、考え様によっては、日本の本物の歌舞伎座よりも贅沢 な歌舞伎座であります。ここに、日本から来たアグアイヨ室内楽団の曲と、岡田 流大正琴の家元、岡田琴海さんの奏でる琴の音が響いたのでした。大正琴の他の メンバーの皆さんや招待客の皆さんと共に、このコンサートを聴けたのは、です から、大変幸運なことでした。(#2文化情報参照)
とてもメキシコとは思えない風景、角屋の歌舞伎座

アメリカの大百貨店ウールワースのただ一人の相続人で、大金持ちにして大女優 のバーバラ・八ットンは、しかし数度の離婚の果てにアルコールに溺れ、心と体 を病み、静かに余生を過ごせる場所を捜していました。そこで、世界各地に人を 派遣して調査した末に見付けたのが、地理的にも、気候も、歴史的にも理想的な クエルナバカでした。 建築は、日本贔屓のハットン嬢が、数人の日本人建築家に設計を依頼して始めら れ、江戸城の門を模倣した正門から、果ては歌舞伎座まで、日本から宮大工を呼 び寄せ、木材、石材、金箔、絹などを取り寄せ、金に糸目をつける事無く続けら れました。そして6年の歳月の後、歌舞伎座、黙想の石庭、茶室、居間、台所な どを含む贅沢な住宅が、1959年に完成したのでした。 SUMIYA(角屋)という名前は、平和な静けさや長寿をもたらす場所という 意味合いを持つそうで、3枚の蓮の花びらと刀を組合せ、知恵と愛を表す紋章も 設けられています。 これらの名前の持つ意味や、紋章にもかかわらず、ハットン嬢は、ここで7番目 で最後の夫となったベトナム人男性レイモンド・ドーン・ビン・ナ・チャムパサ クと結婚し、貴族の称号を買い与えてまでして彼を引き止めようとした上、その 後間もなく心臓病が悪化して米国に帰り、クエルナバカに戻ることなく死を迎え ているのですから、金がふんだんにあっても、長寿や知恵、愛はなかなか入手し がたいもののようです。しかも、米国に帰国する頃には、お金も使い果し、惨め な最後だったそうで、うっそうと木々の繁る敷地内に立って、豪華な建物を眺め ると、背後に悲しい女性の人生が浮かび上がります。ここでちょっとシンミリす るのもオツなものです。 週末には、無料で、しかもガイド付きの30分程度の歌舞伎座見学コースがあり ます。希望の方は、以下の時間に歌舞伎座前で待っていてください。 金曜日: 午後4時半から 土曜日: 午前11時半からと、午後4時半から 日曜日: 午前11時半からと、午後1時半から 歌舞伎座の舞台背景には富士の絵が描かれ、絹織りの屏風式幕が置かれています。 天井からはスクリーンが降りてくるようになっていて、ハットン嬢が自分が主演 した「ベン・ハー」などの映画を見るのを楽しみにしていたそうです。 48畳敷きの畳の観客席には、お殿様が使うような腕置きが置かれ、マホガニー 材のふすまにはベンガル虎や中国の絵などが金箔を使って描かれており、この場 所を見守っています。天井は126の升目に分けられて、メキシコと日本の両国 に共通、あるいは近しい草花が、これも金箔を使って描かれています。どれも手 書きです。下がっている真鍮の円形または半円の提灯は、生命の初めと終わりを 意味すると言い、東洋的な思想や色合を表しています。 観客席の最後部には、木と鉄でできた美しい輿(駕篭)が置いてありますが、す っかり心臓が弱くなったハットン嬢は、これに乗って担いでもらい、庭などを散 策(?)したそうです。 歌舞伎座の裏側に回ると、インドから運ばれた白檀で作られた風呂があり、役者 が舞台に上がる前に体を清めました。入り口付近の引き戸には、風呂の楽しみと 題する浮世絵が描かれています。これ、全部ハットン嬢の個人的な楽しみのため なのですから、何という贅沢でしょうか。
木づくりの風呂 石庭 パンの木

また、最後に日本の石庭を真似た黙想の庭を見ることができます。石庭は、きれ いに波の模様に掃き清められ、大小15の石が置かれています。この石、ある一 点以外からは14個しか見ることができず、また、それぞれ8分の一しか地表に 現れていないそうで、「誰も、全ての真実を手中に収めることはできない」とい う禅の教えを表しているそうです。まあ、哲学的な素養のない私なので、禅の教 えはともかく、8分の一という数字から考えるに、どれも非常に大きな石だと推 測できるのですが、それが全て日本各地の石切り場から運び込まれたというので すから、ナニヲカイワンヤです。 庭の右側には、ボンディの木または命の木というのが植えられ、左側には、パン の木が小玉スイカくらいの丸いジャガ芋色の実をつけていました。ガイドの説明 では、このパンの木は日本原産で、実を煎じてお茶にし、精神安定剤または媚薬 として服用しているというのです。また右側の命の木については、日本では、男 の子が生まれると、その成長を祈ってこの木を植える習慣があるという説明です。 そんな話は知らないというと、「あなたたちは本当に日本人か?」と疑われてし まったのですが、どこぞの地方でそのような木や習慣があるのでしょうか? また、歌舞伎座は京都の古い歌舞伎座を模したものだという説明ですし、石庭は 「Riyonlli」という日本の市の禅の庭園を真似たものだということですが、東京で はなく、京都に歌舞伎座があったことも、「Riyonlli」という市がどの市かも分か りかねて、日本人として恥ずかしい思いをしてしまいました。どなたか、この方 面に詳しい方は、お教えいただけますでしょうか。 歌舞伎座を離れてホテル全体に目を移すと、現在ホテルのレセプションがある広 々としたロビーは、当時はハットン嬢の居間だったそうで、ここのソファに着物 姿でくつろいでいる写真が風呂場前の廊下に飾られています。 この個人の住宅だった場所は、その後メキシコの大ホテル・チェーン、カミノ・ レアルに買い取られ、「カミノ・レアル・スミヤ」として、163の客室および スイート、いくつものプール、テニス・クラブを擁して営業しています。近くに ゴルフ場もあって、ちょっとしたリゾート・ゾーンになっています。また、週末 には結婚披露宴の他、宴会、テニス・コンペなどが開かれてにぎやかです。 宿泊費用は、通常の部屋で590ペソ+税金とのことです。ホテル内には、歌舞 伎座を見下ろす場所に朝食用のメキシコ料理レストラン「ラ・アルボレーダ」と、 午後に開店する和食、中華、西洋料理の「レストラン・スミヤ」があります。和 食といっても、味の方はあまり期待はできませんし、お値段もお高いので、あま りお薦めではありませんが、メキシコ料理に食傷の方には、救いかも知れません。 さて、最後にひとつ問題です。正面の門には「薔阿薔薇波津頓 角屋」と達筆の 表札が掛かっています。さて、何と読むでしょうか。
角屋入り口の看板 さて、?

バックナンバー
#1 クエルナバカの位置、高度
#2 クエルナバカの歴史
#3 峡谷の町、クエルナバカ
#4 常春の街、クエルナバカ
#5 モレロス州紹介
#6 カテドラル(大聖堂)
#7 コルテス宮殿
#8 ボルダ庭園
#9 ブレイディ博物館
#10 セントロのソカロ