ヒマドールの仕事は熟練した技術と力を要します。肉厚の葉に覆われたピーニャ
が十分に成熟しているかどうかを外見から判断し、長い柄のついたコアと呼ばれ
る道具などを用いて、昔ながらの方法で掘り起こして切り、手際良く分厚い葉を
落としてから車へ運びます。大変なのは、一個30キロから50キロにも達する
ピーニャを、頭の上に乗せてアガベ畑のなかを歩き、車が待つ山道まで運ばなけ
ればならない事です。ピーニャ一個から約4本のテキーラができるそうです。
このピーニャを車で工場へ運び、ふたつ割り、もしくは四つ割にして、窯のなか
で澱粉質が糖分に変わるまで加熱します。加熱されたピーニャは、湿った木材の
破片のようですが、噛むと、繊維質の多いサツマイモのような味がします。
加熱済みのピーニャを圧搾機にかけて絞り、絞り汁を特別のオケにいれて醗酵さ
せます。100%アガベのテキーラでない場合は、ここで砂糖黍の絞り汁などと
一緒に発酵させます。その後、蒸留器にかけ、高温で最低2度蒸留を繰り返し、
不純物を取り除いたら、高純度の飲み物が出来上がるのです。工場で、出来たて
を試飲しましたが、飲むというより、舐めるだけで頭の頂点に達するような濃い
のみものでした。これを薄めて商品として出荷します。
これがテキーラです。非営利団体「テキーラ品質管理審議会」は、このように造
られた飲み物のうち、アルコール分38%から55%(強度76から110度)
の物だけをテキーラと呼んで登録しています。メキシコで市販されているテキー
ラのラベルには、「100%アガベ」と書かれています。この表示のないものは、
前述のように、砂糖黍などが混ざっており、審議会の規定として、テキーラと呼
ぶには、アガベが60%以上使われていなければならないとしています。
さて、テキラには3種類あります。
1)BLANCO (水のように透明なテキーラ): 2度目の蒸留の直後に得られるテ
キーラ。味がより純粋で、通が好む。
2)REPOSADO(樽でねかせたテキーラ): BLANCO を少なくとも2ヵ月間、樫の
木の樽にねかせたもの。少し茶色で、まろやかになる。もっとも消費量が多い。
3)ANEJO(年代物テキーラ): 少なくとも1年以上木樽にねかせて成熟させる。
REPOSADOより色が濃く、木の香が心地よい。初心者にオススメの飲みやすさ。
テキーラではないけれど、同じような焼酎飲料にプルケとメスカルがあります。
1)PULQUE : プルケは、アガベ・アスールとは異なる種類の、マゲイというサ
ボテンの抽出液を発酵させて造ります。これは、スペイン侵略以前からの飲み物
で、長寿の象徴として儀式の時の飲み物だったそうです。
2)MEZCAL: メスカルは、アガベ・アスールではない他のアガベから造られます。
テキーラが2回以上の蒸留で純度が高いのに対し、一度の蒸留で完成される、も
っと濃くて、強烈な飲み物です。蒸溜前にピーニャを地下の窯で焼いたりする習
慣があるので、いわゆるスモーキーな薫製ぽい匂いがし、通にはこの匂いがたま
らないのだそうです。いわゆる地酒というか、他の飲み物のペット・ボトルに入
ったメスカルをふるまわれることがあります。喉が焼けるような危ない味でした。
このメスカルのビンに芋虫が入って売られていることがあります。これはこの植
物を食べて育つ虫で、アガベのエッセンスが出るだろうということで、びんに一
緒にいれているものです。もちろん、テキーラには入っていません。
テキーラは、ストレートで飲むときは、CABALLITO カバジートと呼ばれる小さな
グラスを使います。このカバジート、もとは、タベルナ(今は居酒屋のこと)と
呼ばれた工場で、できたてのテキーラを試飲するときに、現在は試験官のような
入れ物を使うのですが、昔は牛の角を使っていたので、角の形を真似て造られま
した。もちろん、牛の角と違って、テーブルの上で引っくり返らないように底は
平らです。
さて、長くなりましたが、有名なテキーラ・ベースのカクテルをご紹介します。
マルガリータです。このカクテルが知られるようになってから、米国でテキーラ
の消費量が倍増したという、誠に美味の飲み物です。
まず、カクテル・グラスの縁にレモン(ここではライム−緑色の小さいものを使
います)汁をこすり付けて湿らせ、皿に入れた塩に付けて、塩で縁取りします。
コアントローというリキュールと、レモン汁、氷、そして好みの量のブランコの
テキーラを混ぜ合わせ、ミキサーにかけて雪状にして、上記のカクテル・グラス
に注ぎます。既に出来上がったマルガリータ・カクテルも売られています。同様
に、氷と一緒にジューサーにかけてフローズン・ドリンクとして飲むとイケます。
レストランやバーで注文するときには、お酒に弱い人でも、"SUWAVE, POR FAVOR"
(薄めに)とお願いすると、テキーラを少なめにしてくれます。ちょっぴり甘くて、
さわやか、とても飲みやすいので、飲みすぎないようにと、私自身に注意!!
メキシコで大好きになったテキーラを、日本へのお土産に持って帰った人の感想
によると、なぜかメキシコで飲んだ味とは異なるそうです。気候の違い、レモン
の違い、塩の違い、雰囲気の違い? ちょっと試して見てください。
お土産といえば、メーカーや銘柄によってビンの形や色が様々で美しく、宝石の
ようなビンや、50センチくらいの高さの細長ビン、有名なトナラの陶器のもの、
ビンのなかにサボテンが植わっている(もちろんガラス製)ものなど、たとえ、
日本の気候とあわなくとも、長く目で楽しめます。
ああ、テキーラのこととなると、文章が止まりません。でもテキーラは書くより
飲むもの。今日はここまでにして、いつかまた、続編を書くことにします。だっ
て、カズさんが、レモンを絞り始めたのです。"SALUD"サルーッ!!乾杯!!