
クエルナバカの修道院は、スペイン人がアメリカ大陸に建設した最も古い修道院の ひとつで、中南米における布教活動の主な拠点であっただけでなく、フィリピンな どアジア地域にキリスト教を広げるための重要な通過地点でもありました。 クエルナバカのカテドラルについては、ホームページ第6号の#3タウンガイドで ご紹介しましたが、今回は、修道院と野外聖堂について、もう少し詳しく解説した いと思います。 現在は修道僧や尼僧は住んではいませんが、日常的に使われる台所や、修道僧たち の食堂、居間などがあり、二階に上がると僧房などの小部屋がならび、現在では、 図書室、管理室、会議室、司教の事務所などとなっています。「死者の日」に、カ テドラルを訪れた私達は、広々とした中庭を囲む回廊に飾られたいくつものお供え を見学することができました。 この回廊には、植民地時代の建築装飾や16世紀、17世紀の壁画や彫像などが残 り、貴重な時代の証言となっています。特に、16世紀に創られたと言われている、 クリストバル聖人が肩に子供のキリストを担いだ像は、その独特な表情も印象的で、 メキシコ国内だけでなく、北アメリカや、ヨーロッパ各地の博物館でも展示された 貴重な文化財です。
おどけた表情のクリストバル聖人にもお供え物が

また、野外聖堂は、この修道院の入り口に接して位置し、6つのアーチと中央の丸 天井が特徴です。昔、中央奥の壁がんにサン・ホセ聖人の蒔絵が飾られていたこと から、サン・ホセ野外聖堂と呼ばれています。今回この野外聖堂を紹介するのは、 来月12月に、今年最後のアミーゴス・デ・ラ・ムジカの恒例コンサートがここで 開かれるからです。 これは、千年祭メガ・コンサートと名付けられ、20世紀を締め括る記念のコンサ ートとなります。もちろん、20世紀と言えば、2000年の来年もあるのですが、 なぜか、メキシコでは、すでにミレニオと囃たて、様々なイベントが予定されて、 盛り上がっています。様々なイベントの中でも、クエルナバカはもとより、モレー ロス州で一番ビッグなイベントがこのメガ・コンサートです。 この野外聖堂に、イダルゴ州からフル・オーケストラとその合唱団を、そして、モ レーロス州の様々な教会や大学に付属する大小の子供や大人の合唱団と、メキシコ を代表する3人の独唱者を招いて、その数300人以上の大編成のコンサートが、 このクエルナバカで開かれるのです。この大コンサート開催にこぎつけるまでに、 様々なスッタモンダがありました。 当初は、クエルナバカのピラミッドを舞台とする予定でした。しかし、メキシコも お役所や組合の組織が難しいところで、ピラミッドの使用許可を文化庁に申請した にもかかわらず、許可を出す政府機関まで申請書が届かず、どこかで宙ぶらりんに なってしまったのです。12月は迫ってくるし、許可は届かず、結局、ピラミッド を舞台の大コンサートの夢は破れ、カテドラルの野外聖堂に変更されたのです。 しかし、ピラミッドでのオペラといえば、ユカタン半島にあるピラミッドでの世界 3大テノールの競演というのが、数年前にありましたから、考えようによっては、 野外聖堂の方が新規であるかも知れません。なにより、ピラミッドというとてつも なく広がった空間よりも、音響の点では優れているに違いありません。 また、このコンサートのプログラムである「カルミナ・ブラナ(CARMINA BURANA)」 は、今世紀になって、カール・オルフが、ドイツの教会にあった13世紀の風刺詩 を発見し、それに曲をつけたもので、単純だけれど豊かな音量で聞かせる、近年人 気の楽劇です。つまり、古い教会で見つかったこのオラトリオを、クエルナバカの カテドラル横の野外聖堂で聞くことができるというのは、非常に幸運なことであり ます。 内緒なのですが、この「カルミナ・ブラナ」は風刺詩であり、もともとラテン語で 書かれていたため、深く意味を知るのは難しいのですが、実は、非常に、人間的と いうか、人間の欲望そのままに、飲めや歌えは当たり前、男女の交わりなどを高ら かに歌って、厳粛なクリスチャンが聞いたら腰を抜かすのは必然の内容なのだそう です。 しかしながら、お役所と違って、マリアッチ・ミサなど、新進の流行を取りれた前 オビスポ(司教)を引き継いだ現在の司教は、アミーゴス・デ・ラ・ムジカのワト ソン会長と親しく、また芸術にも理解があって、あっという間に許可が下り、今回 のコンサートとなったのです。 教会で聞く風刺詩オラトリオ、すでにクエルナバカだけでなく、メキシコ全土から 問い合わせ殺到のこのコンサートは、250ペソ、150ペソ、100ペソ、50 ペソの切符を用意し、境内いっぱいに2000人近いの聴衆を見込んで開催されま す。
バックナンバー
#1 クエルナバカの位置、高度
#2 クエルナバカの歴史
#3 峡谷の町、クエルナバカ
#4 常春の街、クエルナバカ
#5 モレロス州紹介
#6 カテドラル(大聖堂)
#7 コルテス宮殿
#8 ボルダ庭園
#9 ブレイディ博物館
#10 セントロのソカロ
#11 角屋(Sumiya)の歌舞伎座
#12 テオパンソルコのピラミデ
#13 モレーロス庭園
#14 マキシミリアーノの家「薬草植物園」
#15 小さな写真博物館 “El Castillito”
#16 シケーロス工房
#17 MERCADO DE ARTESANIA (民芸品市場)
#18 ホームページ1周年記念号 MERCADO(中央市場)