-呑気家族のメキシコ移住計画-
出版:近代文芸社
石田 かり・著
#6 「クエルナバカの碧い空」続編 − 社交サロンの話
クエルナバカはメキシコでも中央部分にありますが、緯度で見ると、インドのボン ベイや、ベトナム、アフリカならサハラ砂漠のど真ん中当たりに位置しているので、 もし、1600メートルという高地でなければ、とても暑くて、こんなに快適な生 活はできないでしょう。メキシコは、日本と同じく南北に長く、しかも、5000 メートル以上の高い山もいくつかあるので、北と南というだけでない複雑な気候風 土が絡み合っているようです。 先日、メキシコ州でピンポン・ボール大の雹が降りつもり、家はこわれるし、車の 事故は続発するしで大変な状況でした。それでも、テレビ・ニュースには、子供た ちが、雪合戦らしきことをしたり、雪だるまみたいなものを造って遊んでいるのが 映し出されて、感心してしまいました。私は、札幌生れなので、雪を見た事のない メキシコの子供たちに、札幌の雪一面に降り積もった銀世界を見せたらどんなに驚 くだろうかと思うことがありますが、意外と驚かずに、早速、雪だるまなど、慣れ た手つきで作り始めるかもしれません。雪を見たら、雪だるまや雪合戦をしたくな るという本能が、人間には元々あるみたいです。 さて、本題に入ります。先日、友人のパトリシアからある会合への招待状が来まし た。この会は、彼女が仲間とともに作ったもので、ACADEMIA DE LETRAS "JUAN RUEDA ORTIZ"(フアン・ルエダ・オルティスの文学アカデミー)と称します。 フ アン・ルエダ・オルティスとは、モレーロス州生れの作家だそうで、最近亡くなっ た彼の業績に敬意を表して、会の名前にしたそうです。そうして、月に一度の会合 で、自分たちが書いた小説やエッセイを読みあい、評論しあうということでした。 ヨーロッパなどでは、よく金持ちのパトロンが自宅を開放して、詩人や画家などを 集めた会合を開き、サロンと称して社交の拠点とするという話を聞きます。いま、 はやりのデビ夫人も、かつてフランスの社交界で芸術家など有名人と交流があった と聞いたことがあります。まあ、集まる人によってピンからキリでしょうが、お金 と時間がたっぷりある人には、貧乏な芸術家を支援するという名目があって、しか もおしゃれをして、おしゃべりする機会を与えられるのですから、いろんな意味で 自己満足するのでしょう。 メキシコでは、お金持ちという人種は、それこそ桁外れにお金持ちですし、金持ち というのは世界共通、普段はケチなのですが、こういう時には出費を惜しみません。 この種のサロンにつきもののミニ・コンサートなどでは、食事付きで500ペソ、 時には1000ペソという値段の切符を売りますが、買う人々は音楽が好きという よりも、社交の場にいられるという楽しみのために参加しますから、単なるコンサ ートでは滅多に会う事のない人々です。 幸いなことに、パトリシアの会はまだ始まったばかりで参加費用も安く、一度は見 学の為にと、わたしも参加することにしました。まあ、社交界デビューというとこ ろかしら?ホホ。会場となったパトリシアの家は、高級住宅街ビスタ・エルモッサ VISTA HERMOSAにあって、庭には、会合の後のおしゃべり会の為にテーブルが並べ られ、ワインと軽食が用意されています。パトリシアは、大学を卒業した息子や娘 がいるとは見えない若々しく華やかな装いで、みんなを迎えています。もっとも集 まった約30人くらいのメンバーは、クエルナバカという土地柄もあって、特別な おしゃれをしている人はなく、そこは、フランスの社交界とは異なるところです。 こうして、集まった人々と知り合ってみて驚くのは、作家と自称する人の多い事で す。まあ、私も、メキシコに来てからは、別にそれで食べているわけではないのに、 職業を尋ねられると、誰も知る人がいないのをいい事に、「私はエッセイストです」 とか「文筆業です」とか(但し、小声で)言っているので、人のことは言えません。 日本では、読者人口よりも書きたがる人の方がずっと多くて、月刊誌が懸賞小説を 募集すると、雑誌の発行部数の何倍もの応募が来ると聞いたことがあります。やっ と出版しても、段ボールの梱包を解かないうちから、ゴミ捨て場直行という悲惨な 本も沢山あると聞きました。若い人は、字や言葉を知らないとか、本を読まないと かいう割には、みんな書きたがっているんですね。いや、私もその一人ですが…。 この会では、自分の作品の一部を朗読して、批評しあうのですが、だいたいみんな 自分が読む時だけ一生懸命で、人の話をあんまり聴いてないように見受けました。 いずれにしても、書いたり読んだりという行為は、それだけが目的だったり、活動 の中心だったりするものではなく、集まって朗読したり聞いたりするのは、ちょっ と私には退屈で、あんまり面白くありませんでした。 やっぱり、そこら辺に首を突っ込んで、失敗して恥をかいたり面白がったりするこ とが肝心で、そういう経験を、頭の中で具体的に整理して、もう一度、楽しむため に書くというのが正しい姿勢のような気がします。翌日、夜、アミーゴス・デ・ラ・ ムジカのコンサートがありましたが、受け付けに陣取って、切符を売ったり、知ら ない人にコンサートの宣伝をしたり、同じような社交の場ですが、こちらの方が、 私には向いています。 先日、愛車のゴルフの走行距離メータを見て、びっくり、何と、77777マイル を表示しているではありませんか! 中古で買った時には、24000マイルくら い。この5年間よく走り回ったものです。証拠の写真がはいこのとおり。これは、 私が、恥じをさらしながら、いろんな所に首を突っ込んでいる証拠でもあります。
ま〜、よくも走ったもんだ。事故? いろいろあら〜な でも人身事故はないよ

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バックナンバー
#1 「運転しよう」から:何でもありのメキシコ式運転
#2 「猫」から:猫の獲物はどうする?
#3 「免許証」から:ここでは買うんです
#4 「仕事をしよう」から:押し掛け助手は大活躍
#5 「仕事をしよう」から:コンサート後のご馳走
#6 「仕事をしよう」から:黒沼邸でのミニコンサート
#7 「スペイン語」から:無口な日本人
#8 「免許証から」から:車の所有税
#9 「クエルナバカ」から:蜂鳥
#10 「猫 パートII」から:捨て猫アナスタシア
#11 「猫穴」から:アメリカ・ドライブ・転々旅行
#12 「女性」から:老化現象と更年期障害
#13 猪俣猛作曲「クエルナバカの碧い空」
#14 日本へ一時帰国しました/その他
#15 運転したら事故はつきもの
#16 私たちの夏休み日記
#17 最近の感動:みんな生きている!
#18 ホームページ1周年記念
#19 仕事人「かり」
#20「葛飾諏訪太鼓」の日々
#21 クエルナバカから謹賀新年
#22 薬の話

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