-呑気家族のメキシコ移住計画-
出版:近代文芸社
石田 かり・著
                          「クエルナバカの碧い空」第26号
#6「クエルナバカの碧い空」続編 − 我が家のガーデニング
先日、すご〜くおっかしい風景に出会いました。素焼きの植木鉢を買いに、トラヤ
カパンTLAYACAPANという村に行った時のことです。時間があったので、テポツ
トランTEPOZTLANという村に、遠回りして帰ろうということになりました。

テポツトランの道は石畳で狭くて混み合っているので、車ものろのろとしが走れま
せんから、あやしげな道端の置物やお店などをゆっくり眺められるのですが、そこ
へ現れたのが一匹の犬です。この犬、白と薄茶色のツートン・カラーの、毛の短い
中型犬で、明らかに雑種ですが、どことなく品がいいのです。まっすぐに顔を上げ、
ごちゃごちゃした雑踏の中をしっかりとした足取りで、目的地にまっしぐらに早足
で歩いていますから、私だけでなく、運転中のかずさんも、思わず見つめました。
そして同時に気づいたんです。この犬、なんと黒の蝶ネクタイをしている・・・。

それも、首輪になっているのではなく、人間が蝶ネクタイをした時のように、どう
やってか、きちんと喉元にして、胸を張って歩いているんです。まるで、これから、
ディナーCENAがあって、会場に駆けつけようとしているみたい・・・。そう言
えば、丁度4時くらいで、メキシコのディナーの時間だったし・・・。本犬は真剣
そのものの顔つきでしたが、通り過ぎてから私達は顔を見合わせました。ン、ン?
そして大爆笑。さすが、魔女の住む村テポツトランでは何が起きるかわかりません。

さて、そもそも何故トラヤカパンに行ったのか? かずさんは、会社を辞めた時に、
初めて持つ大量の自由時間をどう使おうか色々考え、第一に挙がったのが、近郊に
土地を借りて家庭菜園をしようということでした。ところが、いざ辞めてみると、
自由時間の大部分はピアノの練習に割かれ、毎日、野菜の世話をしに出かけるなん
てことは、すっかり忘却の彼方。私が頼んでおいた美味しい茄子や枝豆の栽培は、
全く絶望となったのです。

しかし、時間が豊富があるということは、肥沃な土地のごときもので、黙っていて
も収穫があるものです。というのは、時間に任せてあちこちに首を突っ込んでいた
ら、それが目的でなかったのに、物欲しげな目つきが役にたったのか、いつのまに
か、あちらからミョウガの苗が、こちらから紫蘇の鉢が、そっちからはニラがとい
う具合に、おいしいものが我が家の庭先に集まってきてしまったんです。
ゴボウまで植木バチで育てるってか〜?


(クリックで拡大)
実は、かずさんが会社を辞める前に、日本から隠し持ってきた野菜の種を裏庭に植
えたことがあります。しかし、植物たちは、私が世話をするとなぜか枯れてしまい、
唯一、食べられるまでに育ったのは、放っておいたゴボウだけでした。誰も信じな
かったけれど、日本食料品店で買ったゴボウの切れっ端を植えておいて、忘れた頃
に掘り返したら、岩盤にぶち当たって下に伸びず、太目のゴボウが育っていたので
す。あとから聞いた話では、犬のはいいけれど、猫のおしっこがかかると毒素が含
まれていて、植物って枯れるんですって。本当でしょうか?

そんな訳で、植木鉢を買っても買っても足りなくなって、ときどき、トラヤカパン
の村へ鉢を買い足しにゆくのです。トラヤカパンはこの素焼きの鉢や土鍋で有名で、
直径50センチほどの大鉢が30ペソ(400円足らず)で買えますから、散歩が
てら買い足していくうち、大小8個の野菜用の鉢と、8個の花用の鉢とで、我が家
の前庭は足の踏み場もないほどになりました。

現在育っている8個の鉢は、以下の通り:

1) 紫蘇:  バイオリニストの美子さんから貰った一本の紫蘇は、現在も増え
続けて元気。手巻き寿司パーティの時には大活躍で、食べきれないほどです。

2)あさつき:  ワトソン夫人の家から無理をいって一束、根っこごともらって
きました。ニラほどは味が強くなく、味噌汁に散らしても美味しいよ。

3) ペレフィル:  西洋パセリとも呼ばれていて、普通のスーパーでも売って
います。メキシコ料理にも日本食にも合います。

4) ニラ: 農作業のお店をしている岩本さんから貰いました。本当のニラの味
で、餃子には欠かせません。根元からバッサリ刈って使っても、3週間ほどで次の
収穫期がきます。同じ鉢に、バジルという香味草もはえています。細かく切って、
サラダなどにかけると一味違います。

5) シラントロ:  メキシコ料理には欠かせない香味草。サルサ・メヒカーナ
を作っておくと、何にいれても合うので便利。これが無い生活は考えられません。
岩本さんのお店で、種を買いました。

6) ゴボウ: メキシコ市にある日本食料品店のミカサから買ったゴボウの葉と
根の一部を植えておいたものです。深い鉢を買ったのに、先日、植えてから半年後
に収穫したら、朝鮮人参みたいに貧弱なのが3本ほど育っていただけでした。でも
威力は抜群。かずさんが作ってくれた豚汁が、格別おいしかった。

7)なす:  日本から持ってきた種を植えました。種を買ったのが1996年で
すから、とっくに賞味期限が切れてますが、それでもケナゲに育っています。収穫
はまだまだ先。メキシコのエグイなすとは違う、日本のおいしいなすが懐かしい。
でも、あんまり長い事食べていないから、味を忘れてしまったのが哀しい。

8) みょうが:  これは、セントロにある写真やさんFOTO MAYUMI のご主人、
オキさんからいただいたもの。オキさんの家の庭から、このみょうがを持ち出して、
よそで根づいたためしがないそうです。でも、今のところ、我が家の庭先で順調に
育っています。いつ、みょうがの味噌汁や、ソーメンにみょうがの薬味付きなんて、
贅沢ができるでしょうか。

メキシコは野菜が美味しい国だし、種類も豊富です。でも、なぜか日本人の大好物、
なすや大根、ゴボウにレンコン、ウドやフキ(あぁ、名前を挙げているだけで、生
唾ゴックン!)がないんです。それでも、メキシコ人が知らなかったキヌザヤや白
菜、もやしなどの新しい野菜がスーパーで売られるようになって、私達はラッキー
なほうです。

かずさんは家を出入りするたびに水をあげてくれるし、例年は6月の後半に始まる
雨季が、今年は幸いにも5月初旬から始まって、毎夜、大量に散水してくれるから、
コンドミニオの芝や木々と共に、野菜たちも生き生きと育っています。そんな訳で、
我が家のガーデニングは、実用的な野菜の鉢と、じか植えのキンカンなど、いつで
も何かの収穫時期を迎えていてます。常春のクエルナバカは、毎日が収穫の春です。

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バックナンバー
#1 「運転しよう」から:何でもありのメキシコ式運転
#2 「猫」から:猫の獲物はどうする?
#3 「免許証」から:ここでは買うんです
#4 「仕事をしよう」から:押し掛け助手は大活躍
#5 「仕事をしよう」から:コンサート後のご馳走
#6 「仕事をしよう」から:黒沼邸でのミニコンサート
#7 「スペイン語」から:無口な日本人
#8 「免許証から」から:車の所有税
#9 「クエルナバカ」から:蜂鳥
#10 「猫 パートII」から:捨て猫アナスタシア
#11 「猫穴」から:アメリカ・ドライブ・転々旅行
#12 「女性」から:老化現象と更年期障害
#13 猪俣猛作曲「クエルナバカの碧い空」
#14 日本へ一時帰国しました/その他
#15 運転したら事故はつきもの
#16 私たちの夏休み日記
#17 最近の感動:みんな生きている!
#18 ホームページ1周年記念
#19 仕事人「かり」
#20「葛飾諏訪太鼓」の日々
#21 クエルナバカから謹賀新年
#22 薬の話
#23 社交サロンの話
#24 夏時間、ク日比較アンケート
#25 母は強し

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