「クエルナバカの碧い空」第27号
#4 トピックス ― メキシコの選挙
メキシコの大統領PRESIDENTE選挙が7月2日にありました。今回は、丁度、
クエルナバカがあるモレーロス州の州知事GOBERNADORとクエルナバカ市長
PRESIDENTE MUNICIPAL選挙も重なり、私達にもとても身近な選挙となり、
興味深くその成り行きを見守ったのでした。

さて、メキシコの主要政党は以下のみっつです。

   PRI(PARTIDO REVOLUCIONARIO INSTITUCIONAL 制度的革命党) 
   PAN(PARTIDO ACCION NACIONAL国民行動党)
   PRD(PARTIDO REVOLUCIONARIO DOMOCRATICO民主革命党)

それ以外にもPT、PCD、PARM、DOMOCRACIA SOCIALなどがあり、これら
の候補者を含めて、今回は6人が大統領に立候補し、1年くらい前から選挙運動が
始まっていました。PRIは、前身のPNRがメキシコの最初の政党として1938
年に創設されて以来、71年間ずっと大統領の座を独占してきたのが、今回、対立
候補に敗れた訳で、現在、非常な混乱に陥っているようです。

PRIが政治を独占してきた裏には、前回までの選挙が民主的ではなかったという
事情があります。1ヶ月先に到着した夫を追って、子供たちと私がメキシコに到着
したのが1994年12月1日で、この日、現在のエルネスト・セディージョ・ポン
セ・デ・レオン氏が大統領に就任しました。しかも、当時カリスマ的人気の候補が
暗殺されるという事件の末で、いずれもPRI内の争いでありました。まだ、よく
わからないスペイン語で聞いた限りでは、当時、メキシコ人の知人達にもPRI以
外の政治を考えている人は少なかったように思えます。それは、好きだからという
のではなく、諦めの心境だったようです。

ところが、同じ頃、グアナフアト州でPANの州知事(今回大統領になったビセン
テ・フォックス氏)が生まれ、3年前にはPANのクエルナバカ市長が誕生、メキ
シコ市の市長もPRDのクアウテモック・カルデナスになり、しかも、PRIのモ
レーロス州知事が汚職を指摘されて、住民投票により解任されると、汚職にまみれ
たPRIの威力が人々の間で薄れて、今回、変化CAMBIOを合い言葉に戦った
PANが勝利するに至ったのです。

例えば、6年前の大統領選挙までは、選挙運動期間中のテレビ・ラジオなどでの政
党のコマーシャルは、圧倒的にPRIが多く、国民は他の政党の意見を知ろうとし
ても、それすら難しい状況にあったそうです。ところが今回に限っては、テレビな
ど報道機関の露出度はPRIよりも他の政党が多いほどで、しかもテレビ公開討論
会なども何度も開かれたのでした。

このように、ごく民主的かつ公正な選挙が行われた最大の理由は、現大統領のセデ
ィージョ氏が、IFE(INSTITUTO FEDERAL ELECTORAL)という政党色の全くない
選挙管理組織を作り、しかも常日頃から、IFEの元で行われる選挙は非常に公正
であり、どのような結果が出てもそれを受け入れ、次期大統領に対してきちんと引
継ぎを行うと明言してきたことです。また、6年毎の大統領の交代時期には、必ず
起こる通貨危機などの経済危機も、今回はない事を約束してきたのでした。

それでも、直前まで、僅差でPRIが有利と言われていたのです。それが、約7%
もの大差をつけてPANの大統領候補が当選し、選挙翌日には、すでに当確となっ
た新大統領のビセンテ・フォックス氏に対し、セディージョ氏は直接電話で、就任
するまでの様々な支援とスムースな引継ぎを確約したのですから、国民はこれで非
常に安心したのです。今のところ、株価もペソも安定しています。

今回の投票率は、大統領選挙が全国平均64%、南部のチアパス州やオアハカ州、
北のバハ・カリフォルニア州など以外では、そろってPANが勝利していました。
また、モレーロス州の州知事選挙での投票率は66%で、都市部のみの投票率は
72%にも達し、我が家から一番近い投票所であるクエルナバカ第289区の投票
所では、現市長である州知事候補が、PRI候補者の約4倍という投票差で圧勝し
たのですが、選挙前には考えられない大差でした。

この選挙会場は、息子が通う中学校前です。我が家から徒歩2分の歩道に段ボール
箱にセロファンを貼っただけ(のように見えた)の窓付きの投票箱が置かれ、選挙
管理(IFE)の人々がテーブルの前に椅子をならべて待っています。人々は写真
付きの選挙登録カードを持って投票に訪れます。投票は、投票用紙に書かれた候補
者の政党のロゴ・マークにX印をつけるだけ。投票が終ると、投票を済ませたこと
を記す黒墨を親指に塗ります。このような投票場所が、車で走っていても、街のあ
ちこちに見られ、投票が非常にしやすいのを感じました。

さて、メキシコの選挙の三つの特徴について話します。

第一の特徴は、再選禁止法があることです。メキシコ革命前、ポルフィリオ・ディ
アスは大統領の座に居座ること、なんと31年間の長きに渡りました。彼を引きず
りおろすべく、フランシスコ・マデロが革命を起こすことになるのですが、この時
約束したのが大統領の再選を禁止するということです。この約束は、のちに大統領
となったアルバロ・オブレゴンが再び立候補し当選した直後暗殺されてから、二度
と誰も犯していない法律となっています。この法律は、大統領だけでなく、州知事、
市長にも適用され、誰も二度と同じ地位には就けないのです。

第2は、任期が6年あることです(市長は3年)。メキシコ人は、冗談か真剣か、
よくこんな話をします。大統領は、任期が6年で、最初の2年は大統領職を勉強し、
中の2年は任務を遂行し、最後の2年で辞めた後のための資金作りをする・・・。
さて、前の大統領のサリナスは、任期終了後、その資産の作り方に様々な噂があり、
結局、メキシコにはいられず、滅多に帰ってもきません。現大統領のセディージョ
はどういうことになるでしょうか?

そして第3で、私達に一番影響が大きいのが、お酒が買えないことです。酒類販売
禁止令 LEY SECA(のどが「乾いた法律」)が施行され、お店もレストラン、バーも
選挙日と前日は一切酒類の販売を禁止されているのです。これは、暴動を恐れての
ことでしょうが、毎年、議論が起きても、やはり廃止するわけにはいかない法律の
ようです。選挙のあった夜、でかける用事があったのですが、すでにPANの勝利
を確信した人々が、車のクラクションを鳴らしながら走っていて、一つ間違えば暴
動もありえると納得したのでした。

さて、これから就任式まで、組閣や、各政府機関の人事の異動があります。友人の
中にも、市役所や州庁舎に勤めている人がいて、これから暫くは落着かない毎日に
なるそうです。彼等が落ち着くまで、私達もやっぱり落着かないことでしょう。私
達は、あと数年すると永住ビザを取得する事ができる見込みですが、取得しても選
挙権は得られません。それでも、メキシコの選挙は、より身近で、より興味深いよ
うに思えます。

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バックナンバー
#2 メキシコの住宅事情
#3 警官への賄賂
#4 音楽友の会 10周年コンサート裏話
#5 ノーチェ ブエナ物語
#5 クリスマス行事
#6 年末年始の休みとグアダラハラ家族旅行
#6 トレス レイエス
#7 ビザの種類と更新
#8 モナルカ蝶の聖域ツアー
#9 ガールスカウト奈良支部
#10 チャイコフスキーのバレー「白鳥の湖」
#11 メキシコ縦断アメリカ転々旅行
#12 メキシコの飲み物
#13 テキーラ
#14 花が咲いて実がなった(街で見る果物)
#15 アステカ・カレンダリオの謎
#16 2000年・年越し祭り
#17 9月16日 独立記念日
#18 特別ゲスト、中村さつきさん
#19 DIA DE MUERTOS 死者の日
#20 葛飾諏訪太鼓メキシコ滞在記 (リーダー水澤啓一 記)
#21クエルナバカの年末年始
#22 メキシコ病院事情
#23 今も懐かし、街頭の物売りたち
#24 養老院YALENTAY慰問コンサート
#25 メキシコの温泉も気持ちいい(*^o^*)
#26 ノパール NOPALで健康に!


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