「クエルナバカの碧い空」第35号
#4 トピックス ― MARCHA ZAPATISTA サパティスタの行進
3月11日、マルコス副司令官SUB COMANDANTE MARCOS率いるEZLNサパティ
スタ国民解放軍 EJERCITO ZAPATISTA DE LIBERACION NACIONALのキャラバンが
メキシコ市に到着しました。同時にビセンテ・フォックス・ケサーダ新大統領が、
就任100日目を迎え、その評価と今後への期待が様々に報道されています。これ
らのニュースがチアパス問題解決への端緒となるならば、私達はメキシコの歴史的
出来事を目撃している事になります。
目だし帽にパイプのマルコス  サパティスタ人形とインディヘナの女性

(クリックで拡大)
インディヘナ問題は、スペイン人による征服以来500年間、中南米の国々で多か
れ少なかれ未解決のまま残され、差別を受けているインディヘナの、生きるための
戦いが続いています。貧富の差が大きいメキシコでも、国民の10%を占めると言
われる最も貧しい層は1日10ペソで生きていると言われ、独自の言語を話すため、
先進国の仲間入りをしようとしているメキシコの経済や教育・文化の恩恵を受ける
ことができない民族がいる一方、お金持ちの白人の中には、インディヘナの方が西
洋文化を拒否していると言う人もいて、問題解決が困難であることを示しています。

チアパスは、海岸、山岳部、密林を含む74000平方キロの面積に、マヤ民族が
作り上げたPALENQUE やTONINAなどの遺跡が点在し、ケツァルやトゥカンなどの
色彩鮮やかな鳥やバクなどの野生動物が生息する豊かな自然と、色とりどりの美し
い刺繍や織物や、おいしい料理で有名なメキシコでも有数の観光地です。

そのような穏やかなチアパス州の山岳地帯の密林で、1994年1月1日に武力蜂
起したのがEZLNです。TZELTALES,TZOTZILES, TOJOLABALES,CHOLESなどの
原住民族の劣悪な生活、教育、政治環境を変えることを目的とした武装集団が多く
ありましたが、EZLNは、結成直後SAN CRISTOBAL DE LAS CASASという町で
派手な銃撃戦を行い、州知事を人質にとり、しかも、マルコスという副司令官をい
ただいて、その存在感を示しました。

当時のサリナス大統領や、次のセディージョ大統領によるPRI政権の間、何度か
話し合いの試みを持ち、一時はSAN ANDRES平和協定で合意に達したこともあった
にも関わらず、真の解決には至りませんでした。それどころか1997年12月に
は45人のインディヘナが殺害されるという不幸な出来事も起き、その後は、イタ
リア人やドイツ人など外国人の扇動者達が国外追放となり、マルコス副司令官も姿
を消し、セディージョ大統領も動かず、未解決のまま泥沼状態にありました。

昨年12月1日に就任したフォックス新大統領は、公約のひとつに、チアパス問題
の解決をあげ、和平委員会 COCOPA(COMISION DE CONCORDIA Y PACIFICACION)が、
「インディヘナの権利と文化」を確立するために働きかけることを約束し、同時に
紛争地帯に配置されていた政府軍の撤退を発表しました。直後に久しぶりに人々の
前に姿を現わしたマルコスは、戦犯として捕らえられているサパティスタ達の釈放
を要求すると、フォックスはそれを約束、実行。次にマルコスは、平和行進の計画
を発表し、実行に至ったのです。

マルコスがEZLNの武力闘争を宣言して武力蜂起してから7年と2ヶ月、そして、
「民衆の土地を民衆に」返すためにエミリアノ・サパタが戦った時から約90年の
年月が経っています。(因みにサパタと目的を同じにすることから、サパティスタ
と呼ばれています。)また、フォックス大統領就任から100日の出来事です。

2月24日、チアパスのLA REALIDADという村を発し、サン・クリストバル・
デ・ラス・カサスで決起集会を開き、武器を置いて出発したサパティスタの行進は、
「インディヘナの尊厳を守るキャラバンCARAVANA DE LA DIGNIDAD INDIGENA」と
名づけられ、オアハカ、プエブラ、トラスカラ、ベラクルス、イダルゴ、グアナフ
ァト、ケレタロー、ミチョアカン、メキシコ、モレーロスの各州の、インディヘナ
の運動に深い関わりを持つ町や市に立ち寄りながら、3月11日午後2時にメキシ
コ市のソカロに到着するまで、その距離、何と3000キロを走り抜けました。

途中、メキシコ革命発祥の地と言われるプエブラ州、皇帝NETZHUALCOYOTLEの生
誕地トラスカラ、エミリアノ・サパタが蜂起したモレーロスを訪れ、ミチョアカン
では、3月2日開催されたCONGRESO NACIONAL INDIGENA インディヘナ国民会議
に、各地から集まった51の部族や200のNGO団体とともに参加しました。

キャラバンは、マルコス副司令官と23人の司令官ほかを乗せた40台のバスに、
支持者、報道陣、警備の車約200台が従い、時には、車の列が2キロから3キロ
にも及んだそうです。マルコスは反逆者であり死刑に値すると言う政治家もいる中、
パトカーだけでなくヘリコプターもキャラバンを警備します。どの町でも大きな歓
迎を受け、各地でマルコスや他の司令官の、インディヘナの権利を取り戻そうとす
る声が響きました。因みに、クエルナバカには3月6日着きましたが、公共の施設
や事務所、公立の学校などが閉鎖になり、セントロの集会に人々が歓迎に集まった
他は、割と静かだったそうです(私は、ニューヨークにいました)。

しかしながら、困難はこれからです。マルコスは、今回の行進の目的は、フォック
スが提唱する平和条約にサインする事でも、フォックスに会うことでもなく、自分
たちが主張するインディヘナの伝統を国民に広く知らしめることであり、その結果、
インディヘナの権利と文化に関する法律LEY DE DERECHOS Y CULTURA INDIHENAS
を承認させることとしています。そのため日程は流動的で、メキシコ市滞在期間が
1週間になるか、1ヶ月になるかは、現時点では予想がつきません。

行進で各地に立ち寄るにしたがって支持者を増やし、要求を思い通りに通している
と言われるマルコス。就任100日目の各テレビ局の報道番組によると、高いとこ
ろでは、75%という驚異の支持率をはじき出しているフォックス。また、平和協
定にサインした後はマルコスに残されているのが裁判、処刑ということもあり、フ
ォックスとの話し合いに応じないのではないかというマルコス。マルコスの要求を
聞きすぎるという意見もあるフォックス。この二人のカリスマ的人気者同士の戦い
は、これからいかなる展開を見せるのか? 

さて、ここで素朴な質問: 何故、マルコスは副司令官なのか?今回のキャラバン
には男18人、女5人、計23人の司令官が同行しており、チアパスの色鮮やかな
民族衣装をきている司令官もいます。また、外国人の扇動家が多く入っていること
から、マルコスも外国人であるという人もいましたが、現在では、タマウリパス州
出身の本名SEBASTIAN GUILLEN VICENTEという人物である事が知られています。
チアパス原住民でない等の理由で、副司令官を名乗っているものと思われます。

マルコスは何故目出し帽をかぶっているか? マルコスのトレード・マークは目出
し帽とパイプです。冬は厳しい寒さになるチアパスの山岳地帯では、目出し帽は防
寒になるでしょうが、この2、3日急に気温が上がったメキシコ市周辺で、この帽
子を被り続ける事は、彼にとって計算外の困難ではないでしょうか? いずれにし
ても、目出し帽から覗く目はきりりと澄んでいて、金持ちの有名人の中にも、金銭
的に支援する女性が多いと噂されていることから、マスクの下に意外な人物が隠れ
ているのかもしれません。

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バックナンバー
#2 メキシコの住宅事情
#3 警官への賄賂
#4 音楽友の会 10周年コンサート裏話
#5 ノーチェ ブエナ物語
#5 クリスマス行事
#6 年末年始の休みとグアダラハラ家族旅行
#6 トレス レイエス
#7 ビザの種類と更新
#8 モナルカ蝶の聖域ツアー
#9 ガールスカウト奈良支部
#10 チャイコフスキーのバレー「白鳥の湖」
#11 メキシコ縦断アメリカ転々旅行
#12 メキシコの飲み物
#13 テキーラ
#14 花が咲いて実がなった(街で見る果物)
#15 アステカ・カレンダリオの謎
#16 2000年・年越し祭り
#17 9月16日 独立記念日
#18 特別ゲスト、中村さつきさん
#19 DIA DE MUERTOS 死者の日
#20 葛飾諏訪太鼓メキシコ滞在記 (リーダー水澤啓一 記)
#21クエルナバカの年末年始
#22 メキシコ病院事情
#23 今も懐かし、街頭の物売りたち
#24 養老院YALENTAY慰問コンサート
#25 メキシコの温泉も気持ちいい(*^o^*)
#26 ノパール NOPALで健康に!
#27 メキシコの選挙
#28 ロマンチック・アシエンダ(荘園)街道巡りの散策
#29メキシコ、愛国心のしるし
#30メキシコの結婚式 − 二つの体験談
#31メキシコ原産トウモロコシ MAIZ の秘密
#32 6年に一度の大統領就任式
#33 メキシコのピニャータ
#34 火山ポポカテペトルと山麓の世界遺産−修道院群


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