-呑気家族のメキシコ移住計画-
出版:近代文芸社
石田 かり・著
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                         「クエルナバカの碧い空」第37号
#6 本の続編 − 悲しい話、おまけ:雑誌TITLE
今年はまだ三分の一が終ったばかりだというのに、悲しい出来事がたくさん起きてい
ます。そのせいで、涙もろくなってしまった今日このごろです。

4月5日ニエベが亡くなりました。その数日前からメキシコ人風に言うと、「悲しい病
気」、つまり食欲がなくなって元気がなかったのが、やっと回復して、5日の朝には普
段のように、うさぎみたいに庭を駆け回っていたのに、午後には体調が急変し、医者
に連れて行って入院したまま、二度とあの目で私を見つめることはありませんでした。

あんまりに悲しくて、この一ヶ月、何を見てもニエベのことが頭から離れられなかっ
たけれど、でもニエベを知っている人も多く、また、ニエベに会うのを楽しみにして
いる人にも、もうニエベはいないのだということを、ちょっと遅くなりましたが、お
知らせしなければなりません。

ニエベは私達がメキシコで生活を始めて半年くらいの時に我が家にきて、それ以来ず
うっとメキシコ生活のシンボルみたいに私達と一緒でした。丁度、友人がメキシコを
去るときで、飼っていた猫を引き取って欲しいと言われるのを断ったばかり。私達は
まだ単なる海外赴任の家族でしたから、動物を飼う事は不可能と思っていました。子
供達は自分で世話をするといいましたが、家にいる事の多い私が世話をしなければな
らなくなるのは分かり切っていたから、飼う事には絶対反対でした。

そんな私を説得したのは、子供ではなく、当のニエベでした。人懐こい猫が少ないメ
キシコで、ニエベだけは、「遊ぼうよ、遊ぼうよ」とばかりにくっ付いて来て、人の
足をかじったりしてじゃれてきます。なでてやると、「ふうっ、気持ち言い!」と言
いながら、青い目で私を見つめるのです。あの頃は、まだちっちゃなニエベでした。
もう見られない かわいい寝顔、寝姿 安らかにおやすみなさい (合掌)
(クリックで拡大)
お刺し身を持ち帰ると、きちんとラップしてあるのにすぐに気が付いて、テーブルの
椅子に行儀良く腰掛けて待っているし、猫穴があるのに、「戸を開けてよ」と甘えま
す。呼ぶと庭の向こうからすっ飛んで来るし、夜遅くに家にかえると塀の外で私達を
待っていました。追っかけっこや隠れんぼをするのが好きで、待ち伏せしたり、逃げ
ようとして階段でずっこけたり、本当におしゃべりしながら遊ぶ友達だったのです。
そうして、大きくなっても、アボガドの大木に駆け上って、てっぺんで風見鶏のよう
にすっくと立ち上がったり、1人で庭を疾走したり、どんな猫よりも活発に生きる事
を楽しんで、臆病なくせに好奇心も人の3倍もあったのです。

犬なら飼った事があって当然犬派と思っていた私は、すぐに猫派に宗旨替かえしてし
まいました。でも、猫のことは何にも知らないから、夜にはどこかへふらりと出かけ
てしまうニエベが心配でなりませんでした。すばしっこい筈なのに、屋根や高い塀に
登ると下りてこれなくなったり、食べ物の好き嫌いが激しくて、お腹が空いていても
美味しくないものには見向きもしないと、具合が悪いのかと思ったり・・・。図体が
大きいのに、あまりに無防備で純真なニエベをとっても心配していたのです。だって
ニエベは臆病なのに好奇心が強くて、どこにでも首を突っ込むし、連れて来たネズミ
は逃がしちゃうし、野良猫が家で仔猫を産んでも許してしまう根性良し猫なのです。

九尾の猫というように猫には強い生命力があると言われています。でも、とっても心
配でしかたがありませんでした。ニエベは真っ白で色素が薄いから身体が弱いと言っ
た先生もいるし、交通事故もあるし、よく猫同士の喧嘩で大怪我もしてきたし・・・。
でも、そんな心配とは全然別の理由で、しかもこんなに若く死んでしまいました。ど
んどん大きくなって、やっと少し安心かしらと思いはじめた矢先だったのに。あんな
に生き生きとしていて、しかも私達を信頼し、安心しきっていたニエベを死なせてし
まったことが悲しくて仕方がありません。

今でも、外出から帰ると、「ニエベはどこ?」と探さずにはいられません。朝、起き
ると「おはよう」と言いながら一緒に起きてきて、最初にすることが餌をあげること
でした。朝寝をする前に、遊んであげないといけなかったし、寝てからも、仕事をし
ながら時々ベッドであられのない寝相で寝ているニエベを確認しにいったものです。
一日中、ニエベを探し、心配し、可愛がって、旅行にもあまり出なくなり、何かある
と、「じゃあ、ニエベはどうする?」から話が始まる、そんな生活をしていたのです。

だから、こんなに短い命で、こんなにあっけなく死なせてしまったことが可哀想でな
らなりません。もっともっと庭をはしゃいで駆け回らせたかった、もっともっとトカ
ゲやネズミと遊ばせたかった、もっともっと庭の隅の暗い穴に首をつっこんだりして
好奇心を満足させてあげたかった、おじいちゃんになって家でずっと丸くなっている
なんて生活もさせたかった。

でも、死んでしまいました。今も猫穴はそのまんま。廊下に飾ってあるニエベの写真
もそのまんまです。家から庭を見ると、石段でひなたぼっこをしていたニエベが目に
見えるし、ソファには縦長になって寝ていたニエベが見えます。どこを見ても、そこ
にピンとしっぽを立てて歩くニエベが見えます。青い目で私を見上げて、私に話しか
けるニエベがいます。

コンドミニオのみんなももニエベが大好きだったから、話かけてきます。ニエベの名
前が出るたんびに、涙目になる私を思い切り抱きしめて慰めてくれます。ニエベの遊
び仲間だった隣の家の猫のガルバも、友達の死を知ってか知らずか、よく餌をねだり
に来ます。これも辛いものです。悲しみは忘れたいけれど、ニエベは忘れたくない。

ニエベに会うのを楽しみにしていた皆さん、すみません。ニエベはもういません。

おまけの話: 雑誌TITLEタイトル5月26日発売

半年に一度と言っていたコーディネータ業の予定よりも早い第2弾です。文芸春秋社
の数ある雑誌のうち、男性向けだった「タイトル」という月刊誌をリニューアル、女
性読者も確保すべく内容を更に魅力アップしました。

メキシコ各地をいくつかの取材陣がそれぞれ、超魅惑のホテルと、名シェフによるメ
キシコ料理、各地の美女や、面白いネタをさがして旅しました。私たちは中央高原チ
ームに同行して、ケレタロー、サン・ミゲール・デ・アジェンデ、グアナフアト、モ
レリア、グアダラハラと、4州5市を巡りました。得意のモレーロス州が入ってなか
ったのは残念でしたが、おかげで、知らなかったメキシコの一面に接し、不思議なメ
キシコをさらに追求する機会を持ちました。

実は、私もメキシコの謎に迫る「なぜなに大事典」など、いくつか記事を書きました。
#4トピックスのメキシコの飲み物に関する記事もあります。5月26日の発売日に
は、ぜひ、皆さん、お近くの本屋さんに駆けつけてください。

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バックナンバー
#1 「運転しよう」から:何でもありのメキシコ式運転
#2 「猫」から:猫の獲物はどうする?
#3 「免許証」から:ここでは買うんです
#4 「仕事をしよう」から:押し掛け助手は大活躍
#5 「仕事をしよう」から:コンサート後のご馳走
#6 「仕事をしよう」から:黒沼邸でのミニコンサート
#7 「スペイン語」から:無口な日本人
#8 「免許証から」から:車の所有税
#9 「クエルナバカ」から:蜂鳥
#10 「猫 パートII」から:捨て猫アナスタシア
#11 「猫穴」から:アメリカ・ドライブ・転々旅行
#12 「女性」から:老化現象と更年期障害
#13 猪俣猛作曲「クエルナバカの碧い空」
#14 日本へ一時帰国しました/その他
#15 運転したら事故はつきもの
#16 私たちの夏休み日記
#17 最近の感動:みんな生きている!
#18 ホームページ1周年記念
#19 仕事人「かり」
#20「葛飾諏訪太鼓」の日々
#21 クエルナバカから謹賀新年
#22 薬の話
#23 社交サロンの話
#24 夏時間、ク日比較アンケート
#25 母は強し
#26 我が家のガーデニング
#27 選挙裏話と日ク比較
#28 国際ピアノ・コンクール
#29黒沼ユリ子さん邸CASA DE VIOLIN増築祝い−ペット・ロス症候群
#30 2周年記念・シドニーオリンピック・おまけ「スキャンダル」
#31 我が家に棲みつく魑魅魍魎、おまけの話「無料電話」
#32 私達のSEXENIO、おまけの話「歌のクラス」
#33「CREA」取材のコーディネータ初仕事、おまけの話
#34「日本週間」、おまけの話「コーディネータ、プロ宣言」
#35 ニューヨークの白い空、おまけの話「夏時間」
#36 巣立ちの夏 、おまけの話「民宿 かず」

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