-呑気家族のメキシコ移住計画-
出版:近代文芸社
石田 かり・著
                         「クエルナバカの碧い空」第41号
#6 本の続編 − 我が家の独立記念日、おまけの話:アメリカ・テロ事件
9月16日はメキシコの独立記念日です。私たちがメキシコに来てから、早くも7回
目の独立記念日を迎えましたが、今年はちょっと異なる意味で、私たち一家にとって
記憶に残る独立記念の日々となりました。

子供たちは、約1ヶ月の夏休みを日本で過ごした後、メキシコに無事帰着しましたが、
そのすぐ後、8月23日には、二人揃って親元を離れてそれぞれ独立の旅にたったの
です。息子はニューヨークの慶応アカデミーで勉強をするために、娘はクエルナバカ
の大学で勉強を続けるために…。

一旦決心し、わき目もふらずに実行に移したは良いけれど、実際にやってみるとオタ
オタするというのが私たち夫婦の常のようです。息子は、初めての一人旅、しかも飛
行機での外国旅行ですから、落ち着いている本人に対して、親は内心困惑の気持ちで
いっぱいでした。

アメリカの飛行機会社の規定によると、例えば息子が乗ったコンチネンタル・エアー
の場合、14歳以下の子供の一人旅には、親が見送りをする以外に、ニュー・ヨーク
空港での出迎えの人の名前も登録しておかなければなりません。その他、航空会社に
よって、乗り換えは禁止とか、若年者の旅行に対して様々な規制があるようです。一
人旅の子供たちが事件に巻き込まれたことが連続したことによるもので、そのような
旅行計画がある場合は、各航空会社に問い合わせてください。

コンチネンタル・エアーの場合、さらに、前もって「親が息子の一人旅を見とめてい
る」という趣旨の文書を作り、公証人が承認した公文書を航空会社に提出しなければ
ならないのですから、大げさです。これって、即ち、14歳以下の息子を一人旅させ
る私たちは特殊な親だと言うこと!?

空港に着いてみると、特殊な親は私たちだけではなくて、何人か子供だけの旅行者が
いて、息子は彼らと一緒に係の人に連れられてゲートを通って行ったのですから、こ
こまではこの制度に感謝、安心しました。しかし、この先、ニューヨークの空港で出
迎えのハイヤー会社の人に無事に引き渡されるものか、たとえ学校まで無事に着いて
も寮生活などうまくやって行けるものか、心配の種は尽きないのであります。

同じ日、娘も大学入学に先立って独立してゆきました。同じクエルナバカ市内の、車
なら10分ほどのところに引越しとはいえ、こちらも送り出してからが心配の連続で
す。もう20歳ですから、日本にいたら普通のことでも、家族主義のメキシコではそ
うではありません。以前、友人のエデルが、アメリカとの国境にあるマタモロスにあ
る会社から誘われた時のことを覚えています。彼がマタモロスに行く事は、それこそ
親を見捨るという図になったのです。そのときエデルは既に30歳過ぎの、いい大人
だったし、ほかにも兄弟が何人もいて親元に残ったのにもかかわらず、この騒ぎです
から、経済的な理由があっても、家族が離れ離れになることは、メキシコでは大変な
でき事なのです。

それでも、娘はもう20歳だし、大学にまで親が車で送迎するというのも何だし、も
っと自分で世間を見て大人になって欲しいと独立させたものの、これまた去ってしま
ってからの親のオタオタは並大抵ではありませんでした。これら子供の心配に加えて、
先月号で話した私の手術、急に子供たちが巣立った為に家計を逼迫し始めた経済的な
困難、etc, etc. これらの直撃を受けたのが夫のかずさんでした。

ある日の早朝5時ごろ、トイレから帰ってきて横になったかずさんが、「かり、目が
回る」と言うのです。本人は、眩暈のせいか真っ直ぐ歩くこともできず、吐き気もし
て、頭もガンガン痛く、動転しています。おお慌てで近くの緊急病院に運び込んだの
がそれから30分もしないうちで、まだ夜明け前で真っ暗でした。しかし、病院が丁
寧に対応してくれたお陰で、点滴によってやがて眩暈も収まり、一時急上昇した血圧
も安定しました。午後にはCTスキャンを撮り、その結果、一応脳にも異常はないこ
とがわかり、やっと安心したのでした。(後に、良く診察したら、中耳炎の後遺症で、
風邪によって、中耳に水が溜まったのが、眩暈の直接の原因と判明しました。心臓や
脳の病気でなくて一安心でした。)

それにしても当日はお客様の予定もあり、しかも、そろそろ年齢的なこともあって、
つい先日、保険に入ったばかりで、今病気になってもまだお金が出ないだろうとか、
気に悩むべきことが様々あって、一時はどうなることか状態となりました。それでも
原因は、こんな極楽とんぼ生活をしながらも、心配事がたまってストレスになったと
したら、油断はできません。数日後、先生に会ったら、QUE SERA SERA、なるように
しかならないのだから、何事も冷静に、くよくよ悩まず心を落ち着けることが肝心で
すと、説教されてしまいました。

そう、これらの事は、多少の状況の差こそあれ、いずれも自分たちが通って来た道で
す。何かあったら心配して手を貸すのが順序であって、何もないうちから心配しても
何の役にも立ちません。何より、娘の大学も、息子の学校も新学期が始まって、子供
たちは特に泣きついて来る事もなく、ときどきメールで報告してきたり、顔を見せて
くれる様子では、明るく楽しい学校生活を送っているようです。

おまけの話: おまけと言うには重大過ぎるニュースです。ニューヨークやワシント
ンでのテロ事件は世界中を驚かせましたが、隣国のメキシコはなお更です。私達も、
ニューヨークに息子がいるし、知人もいて、事件がさらに身近に感じられます。何よ
りも、アメリカンやユナイテッドなどのアメリカの飛行機が4機も、私達も使った事
のある空港で、あっけなくハイジャックされたことは驚きです。ブッシュ大統領の強
硬な政策も考えられ、今後じわじわと恐怖が湧き起こる予感がします。

私達もアメリカのCBSニュースなどを一日中見ていましたが、映画を軽く上回る過激
な映像の連続に、大きなショックを受けました。メキシコの民放ニュースも時間を延
長して、国内ニュースを一切報じず、このテロのニュースだけを報じていました。当
日はアメリカ、カナダ行きの飛行機は全便がキャンセルとなり、メキシコ国際空港も
大混乱でした。アメリカにはメキシコからの移民が多いので、公表されているよりも
多くのメキシコ系の人々の被害が予想されています。

メキシコ国内に目を向けると、つい先日、フォックス大統領がアメリカを訪問して、
ブッシュ大統領と会談してきたばかり。アメリカへの不法移民問題など、解決の糸口
が見えてきたところだったのに、それどころではなくなってしまったし、不景気風が
吹き始めたメキシコの経済問題に深刻な影響を与えそうなこともあって、失望も大き
いです。

いずれにしても、ブッシュ大統領が連発する「戦争」という言葉にも恐怖を感じます。
テロ行為を潰すために戦闘をすれば、それこそテロリストの思う壺、絶対に相容れな
い考え方を持つ人々同士、憎しみが増すだけという気がします。

表紙に戻る
次に進む
バックナンバー
#1 「運転しよう」から:何でもありのメキシコ式運転
#2 「猫」から:猫の獲物はどうする?
#3 「免許証」から:ここでは買うんです
#4 「仕事をしよう」から:押し掛け助手は大活躍
#5 「仕事をしよう」から:コンサート後のご馳走
#6 「仕事をしよう」から:黒沼邸でのミニコンサート
#7 「スペイン語」から:無口な日本人
#8 「免許証から」から:車の所有税
#9 「クエルナバカ」から:蜂鳥
#10 「猫 パートII」から:捨て猫アナスタシア
#11 「猫穴」から:アメリカ・ドライブ・転々旅行
#12 「女性」から:老化現象と更年期障害
#13 猪俣猛作曲「クエルナバカの碧い空」
#14 日本へ一時帰国しました/その他
#15 運転したら事故はつきもの
#16 私たちの夏休み日記
#17 最近の感動:みんな生きている!
#18 ホームページ1周年記念
#19 仕事人「かり」
#20「葛飾諏訪太鼓」の日々
#21 クエルナバカから謹賀新年
#22 薬の話
#23 社交サロンの話
#24 夏時間、ク日比較アンケート
#25 母は強し
#26 我が家のガーデニング
#27 選挙裏話と日ク比較
#28 国際ピアノ・コンクール
#29黒沼ユリ子さん邸CASA DE VIOLIN増築祝い−ペット・ロス症候群
#30 2周年記念・シドニーオリンピック・おまけ「スキャンダル」
#31 我が家に棲みつく魑魅魍魎、おまけの話「無料電話」
#32 私達のSEXENIO、おまけの話「歌のクラス」
#33「CREA」取材のコーディネータ初仕事、おまけの話
#34「日本週間」、おまけの話「コーディネータ、プロ宣言」
#35 ニューヨークの白い空、おまけの話「夏時間」
#36 巣立ちの夏 、おまけの話「民宿 かず」
#37悲しい話、おまけ:雑誌TITLE
#38健康に自信がありますか?;おまけの話:TELECABLE INTERNET
#39  コンサート・デビュー;おまけの話:テレビ番組の取材
#40  夏休み病気特集第二弾;おまけの話:テレビ番組の放送日程

[PR]あなたへ届く、ラブレター:ココ!ラブレター日記。≪大人気の0円≫