-呑気家族のメキシコ移住計画-
出版:近代文芸社
石田 かり・著
                         「クエルナバカの碧い空」第50号
#6 本の続編 − 7年半目の情緒不安定: おまけの話: 癒しのピアノ館
「7年目の浮気」はマリリン・モンローの映画ですが、7年とか8年というのは、な
にか心が落ちつかない中途半端なマンネリ空間のようです。私達がメキシコに来て
7年半が経ちました。6月号のホームページの準備をしながら愕然!最近、感動し
ていない! 

海外生活も7年以上もたつと、新鮮みも薄れ、驚きもドキドキも減って、極く当たり
前の日常生活が延々と…。少し前までは、この時期、突如来る激しい雷雨も嬉しくて、
夜中に雷ウオッチングをしたり、朝雲が少しづつ蒸発して広がるクエルナバカの碧い
空(今の雨後の空が一年で一番きれい)と、ひとつふたつ残る真っ白な入道雲にさえ
感動したり…。しかし、昔から転勤魔で、引越し魔の私としては、ここらで何か新し
い事、新しい場所、新しい未来(?)が欲しい時期です。

そこで、何か面白いことない?QUE HAY DE NUEVO?という気持ちで訪れたのが(もち
ろん本当の目的は取材のため)タロット占い(#3タウンガイド)でした。タロット
占いのビオレッタ女史によると、私の運勢は上り坂で、特に来年の4月、5月は仕事
の上でも大きな成果があり、しかも常に金運がついて回るそうです。もっとも仕事運
も金運も今となってはさほど重要ではなく、欲しいものは他にあるような気がしてな
りません。

では、何を欲しているのか?実は、この年で恥ずかしながら、友達なのです。メキシ
コ生活にもどっぷりと慣れて、もちろん、たまに会っておしゃべるする相手はいるし、
隣人たちも庭に集まってはおしゃべりに花が咲き、それはそれで楽しいのですが、何
と言っても、もっと親密に個人的なグダグダとした無駄話をする親友がいません。そ
して、これには色々理由があるのです。

まず、時間的な習慣の問題。クエルナバカでは、メキシコ人は主に一日に2度食事を
します(これは地方によって少しづつ異なるようです)。朝10時頃の朝食DESAYUNO
と午後3時頃の夕食COMIDAです。朝食、昼食、夕食と3度食事をする私達とは全く
時間がかみ合いません。彼女達に都合がいいのは朝9時からで、子供達が家に帰って
来たり、食事の仕度を始めなければならない午後1時には家に戻っていなければなり
ません。他に都合がいいのは、夕食もシエスタも済んだ6時以降でしょう。それは我
が家の夕食の時間です。

それでも、何度か、お隣の主婦達、ヒルダとレティと一緒にお茶しに外出したことが
あります。別に庭でおしゃべりでもいいのですが、雰囲気を変えるのも大切です。但
し、お茶と言っても、午前中に出かければ、朝食時間にあたる彼女達と一緒に、私は
2度目の朝食をとることになり、夕方でかければ、夕食後でお腹いっぱいの彼女達に
合わせて、私の夕食はケーキだけということになります。

第2に家族主義というのがあります。メキシコでも専業主婦というのは少ないのです
が、仕事の有無に関わらず、また男女に関わらず、人々にとって、夫婦や家族が一番
大事なので、行動するのは大抵家族単位で、主婦が友達同士で映画を見に行くとか、
ダベりに行くという習慣がありません。日本なら昼間の映画館や喫茶店、夜でもコン
サート・ホール(時には、飲み屋まで)は女性客でいっぱいですが、ここでは、若い
カップル以外は家族連ればかり…。

知り合いのエレナと話したら(彼女は離婚していて夫はいないし、子供はもう30代
なのに)、きっぱりと、「私は家にいて料理や家事をするのが大好き。週に一度の買
物以外は殆ど外出しないわ」と断言します。別の知人のマルガリータは、「結婚して
から、一度も友達と映画を見に行っていないわ。週末は家族全員で夫のサッカーの試
合を見に行くし…」と言います。面白いのは、今回タロット占いでも、「あなたは家
族べったりな人だから、家族の問題もなく幸せなはず」と言われてしまったこと! 

性格的なこともあります。メキシコ人はとても自信家で、自分の意見をきちんと持ち、
うろうろと迷ったり自信喪失したりしないようです。ある日、テレビ・ニュースでメ
キシコの英語教育についての話題があり、中学生くらいの生徒に、「あなたは英語を
話しますか?」とインタビューしたら、聞かれた女子生徒は、「はい、もちろん話せ
ます」と胸をはりましたが、「では、WHAT ARE YOU GOING TO BE IN THE FUTURE?」
と英語で聞かれたら、目を白黒させて、「今のは、わかりませんでした」と答えてい
ました。

憲法改正問題があったときにも、議員に、「それでは、憲法第x条には、何が書かれ
ていますか?」と質問したら、議員たちは、「それは、ウニョ、ウニョ」と誤魔化し
ながらグダグダと返事していて、結局知らないということが分かりました。わかって
も、わからなくても、まず「分かる」、「知ってる」と答える傾向があるようです。

昔、よく会っていた友人のマルタは、ある日、義理の両親と別居して引越しましたが、
その理由を尋ねたら、「姑が娘を甘やかすから」と言うのです。つまり嫁姑のいざこ
ざがあったらしいのですが、それについて彼女が愚痴を言うのを聞いた事がありませ
んでした。愚痴をこぼして、同情したりされたりすることはなく、「これはこう解決
する」という結論を既に持っているようです。

こんなだから、グジグジとした愚痴とか、心の迷いとかについて人に相談しようとし
ても、ピシャリと断定的な返事が返って来て、「ああ、そうか」と納得して終わり。
何となくグダグダとおしゃべりして気が済むということはないし、誰も一緒に悩んで
くれません。かずさんも私も病気をしたり、手術をして落ちこんだときに、庭でみん
なとおしゃべりしながら、そういう不安な気持ちを述べると、早速、レティは、「私
の親戚には良い医者が多いから、いつでも紹介してあげるわ」と言うし、ルイスは、
「僕も同じ手術をしたことがある」と言って、シャツを広げて丸いお腹の毛に埋もれ
た手術痕を見せてくれるし、80歳を疾うに過ぎたハイメじいさんは、「テキーラを
飲んでいれば大丈夫!」と太鼓判。ハイ、それで話はおしまい!全然悩む事無し。
NO TE PREOCUPES!

先日、庭でみんなとおしゃべりしていたら、最近引っ越してきたカサ11の奥さんが
「私は拒食症で、食べてもすぐに吐いてしまうの…」と言うではありませんか!主に
精神的に不安定な若い女性が外見を気にしてなるというのが私の拒食症のイメージで
すが、カサ11の奥さんはとてもがっしりした体つきをしていて、明るくてお喋りで、
そんなイメージとは正反対の人です。ところが、「お医者さんには診てもらった?」
と、心配して顔を覗きこむ私に対して、「いいえ、元気だし、生活には満足している
し、なんにも問題ないのよNO HAY PROBLEMA」と言うのです。拒食症でいながら、
問題なく、幸せに生きていける人はメキシコ人しかいません。

こんなとき日本ではどうだったかと考えるのですが、誰でも仕事帰りに飲みに行けば、
仕事のこと、上司の悪口、主婦なら嫁姑の葛藤などなど、頭にくる事や、愚痴なんか
で口を挟むのも難しいくらいだったし、それで問題が解決するわけでなくても、お互
いに、おしゃべりして気持ちがすっきりしたように覚えています。それに、特別に用
事がなくったって、流行のファッションや映画、新しいお店やレストランのこと、社
会的な現象など、ガード下の居酒屋なんかで女同士、会えば盛り上がったよなぁ。も
っとも、日本でも、暇な人は少なかったから、頻繁には会えなかったけれど、でも電
話もあったし…。

ところがメキシコでは話題になるような流行なんかないし、夫婦はみんな仲が良くて
いつも一緒だし、仲が悪かった人はすでに離婚していて、やっぱり心は晴れているら
しいし…。

そう言えば、先日、パトリシアの誕生日に招かれて行ってきました。パトリシアは今
年53歳、離婚してもう何十年も独身で、3人の子供達は既に成人しています。家で
不動産会社をしたり、自然化粧品の販売などをしているのですが、一日の大半は、水
泳、エアロビックスなどで体を鍛えるため、家の向かいにあるジムで過ごし、とても
53歳には見えないエネルギッシュで、ド派手な人です。そして、彼女の誕生日パー
ティに招かれて来ていた客の90%は女性でした。離婚したり、夫に先立たれたりし
て一人身の女性が多いのですが、彼女たちも非常に個性が強くて近寄りがたい!愚痴
なんかこぼそうものなら一喝されそうです。

パトリシアは再婚したいし、常日頃から、良い男はいないかと探しているので、私が
「日本なら、お見合いもあるし、男女を引き合わせる『お見合い会社』もある」と教
えてあげました。「私にも男を紹介してほしい」と言うかと思ったら、そうではなく
て、「かり、一緒に、お見合いの会社を作ろう!」といわれてしまいました。本当、
悩んでいる場合じゃなくて、みんな積極的、肯定的なんです。私も、無駄なおしゃべ
りをしたいとなどと言うバカなことは忘れて、もっと建設的に生きるべきかしら?そ
れとも、おとなしく家事に専念すべき?ああ、どうしよう?誰か悩みをきいてくれな
いかなぁ…。

おまけの話: 癒しのピアノ館

会社を辞めて早5年、ピアノを始めて4年になるかずさんは、暗譜した曲が全22曲、
近々、家から飛び出してコンサートを開く意向もあって練習にも熱が入ってきました。
実際にコンサートを行う前に、皆さんの評価も伺いたく、ついに音の出るホームペー
ジ「癒しのピアノ館」を完成させました。既に「心が癒される!」という声も寄せら
れています。ぜひ、聴いてこちらにも感想をお寄せください。

        http://kazumx.hoops.ne.jp/

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バックナンバー
#1 「運転しよう」から:何でもありのメキシコ式運転
#2 「猫」から:猫の獲物はどうする?
#3 「免許証」から:ここでは買うんです
#4 「仕事をしよう」から:押し掛け助手は大活躍
#5 「仕事をしよう」から:コンサート後のご馳走
#6 「仕事をしよう」から:黒沼邸でのミニコンサート
#7 「スペイン語」から:無口な日本人
#8 「免許証から」から:車の所有税
#9 「クエルナバカ」から:蜂鳥
#10 「猫 パートII」から:捨て猫アナスタシア
#11 「猫穴」から:アメリカ・ドライブ・転々旅行
#12 「女性」から:老化現象と更年期障害
#13 猪俣猛作曲「クエルナバカの碧い空」
#14 日本へ一時帰国しました/その他
#15 運転したら事故はつきもの
#16 私たちの夏休み日記
#17 最近の感動:みんな生きている!
#18 ホームページ1周年記念
#19 仕事人「かり」
#20「葛飾諏訪太鼓」の日々
#21 クエルナバカから謹賀新年
#22 薬の話
#23 社交サロンの話
#24 夏時間、ク日比較アンケート
#25 母は強し
#26 我が家のガーデニング
#27 選挙裏話と日ク比較
#28 国際ピアノ・コンクール
#29黒沼ユリ子さん邸CASA DE VIOLIN増築祝い−ペット・ロス症候群
#30 2周年記念・シドニーオリンピック・おまけ「スキャンダル」
#31 我が家に棲みつく魑魅魍魎、おまけの話「無料電話」
#32 私達のSEXENIO、おまけの話「歌のクラス」
#33「CREA」取材のコーディネータ初仕事、おまけの話
#34「日本週間」、おまけの話「コーディネータ、プロ宣言」
#35 ニューヨークの白い空、おまけの話「夏時間」
#36 巣立ちの夏 、おまけの話「民宿 かず」
#37悲しい話、おまけ:雑誌TITLE
#38健康に自信がありますか?;おまけの話:TELECABLE INTERNET
#39  コンサート・デビュー;おまけの話:テレビ番組の取材
#40  夏休み病気特集第二弾;おまけの話:テレビ番組の放送日程
#41  我が家の独立記念日、おまけの話:アメリカ・テロ事件
#42  続編:独立記念日、おまけの話:テロ事件のメキシコの反応
#43  犬を買いませんか? おまけの話:イダルゴ州の温泉
#44  日本メキシコ学院リセオで講演;おまけの話:2001年総括
#45  謹賀新年、 おまけの話:子供達の里帰り
#46  ベラクルス珍道中: おまけの話: 月刊誌NOVARK 
#47  女性についての考察: おまけの話:日本一時帰国のお知らせ
#48  一時帰国報告: おまけの話: JAL悟空格安チケット
#49  「清流」とサッカーの話: おまけの話: かずの写真館

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