-呑気家族のメキシコ移住計画-
出版:近代文芸社
石田 かり・著
                         「クエルナバカの碧い空」第54号
#6 本の続編 − 私の公園デビュー、おまけの話: キャデラック売ります。
ホームページの第50号に「7年半目の情緒不安定」という最近の心境を綴ったら、
いろいろと反響がありました。贅沢な悩みだとは知っているのですが、生活が静かに
なり過ぎると、「何か珍らかなる事はないものか?」と思うものです。と言って「こ
の安穏な生活を捨てるには惜しい」とも思っているのですから、やっぱり贅沢です。

こんな時は手当たり次第何かを始めるべきであると考え、絵を描き始めました。絵を
描くのは大好きで、小学生の頃に始めてから、いつも何かを描いていたように思いま
す。だからメキシコに来るときにも、油絵の画材は持ってきたのですが、場所的にも
時間的にも油絵は大げさで、画材も引き出しの奥深くに眠ったままです。

でも、丁度かずさんが子供が弾かなくなったピアノを弾き始めたように、私も、日本
から持ってきた子供達のクレヨンや水彩絵の具、筆やパレットが、引き出しの中で固
まっているのに目を付けました。学校で使うからと買ったカード用紙が大量に残って
いて、これが大きさも手ごろで画用紙にぴったり。あとは新聞紙やボロキレを用意し
て準備が整います。

ある日の午後、部屋に一人こもって、じっくりと絵筆を動かしていると、気持ちが集
中して落ちつくのを発見。子供が残したカードは20センチX13センチくらいの小
さなものだから、長くても2時間もあれば一枚が描き終わり、出来あがると完成感も
得られます。しかも、かずさんは、自分が絵を描かないせいか、出来上がった絵を褒
めてくれるから、どんどん描いちゃう。と言う訳で、時間に任せて描いているうちに
10枚以上の絵がたまってしまいました。

そこで考えました。たまる一方の絵をどうするか?じゃあ、小遣い稼ぎに売ろうじゃ
ないか!メキシコに居ればこそ、滅茶苦茶短絡的大胆至極非常識なアイデアが、翌日
にでも実行できるのがメキシコです。メキシコには画家が非常に多く、素人画家もそ
こら中にいるのです。彼等が作品を発表する場も多くあります。今月の文化情報でも
お知らせした絵の展覧会がよく開かれるシケーロス工房の前にあるシケーロス公園は、
毎週土曜日の昼間、青空展示即売会場になっていて、素人画家が絵を持ち寄って来る
のです。つまり、私もそこで絵を売ろうと思い付いたのです。

まず、近くの額縁屋さんに行って額縁MARCOを安く作ってもらいました。クエルナ
バカの街にはあちらこちらに「MARCOS」という看板が見られますが、気軽に写真や
絵、卒業証書などを額にいれて飾る習慣があるので、どの額縁屋も繁盛しています。

公園デビューは10月5日でした。展示即売会は朝10時から午後3時までなのです
が、メキシコ人は週末は遅起きですから、ゆっくりとオニギリを作って、11時過ぎ、
絵と、折畳式のキャンプ用テーブルを持って公園に行きました。「誰でも参加できる
か」と聞いたら、EL JARDIN DE ARTE Y CULTURA DE CUERNAVACA,A.C.という会が取
りしきっていて、入会金および毎月の会費が必要だそうです。売れれば良いのですが、
そうでなければ持ち出しになりますから、一応、今回は試しということで、一回分と
して50ペソを渡して、絵を並べました。
いよいよ画家かりの公園デビュー
(クリックで拡大)
その時までは知らなかったのですが、参加している人達は、趣味で絵を描き始めた人
ばかり、それぞれ画架CABALLETEを持ってきて絵を飾り、椅子に腰掛けて、おしゃ
べりしながら、人が見に来てくれるのを待っています。絵画教室も開かれるので、子
供達も集まって来ました。退職後に絵を始めたと言う優雅なアルマンドおじさんと話
していたらなんと第49号の訪問者紹介に登場の小林宣子さんがホームステイしてい
た先のおじさんだったことが判明!世界は狭い。おしゃべりがはずみます。

おしゃべりは楽しかったのですが、土曜日の住宅街にある公園には、ボール遊びをす
る子供達は来るのですが、芸術を鑑賞しようという人は全く通りません。2時半まで
粘ったけれど諦めて退散しました。無論、売上はゼロ。公園デビューは徒労に終わり
ました。文化情報でも書いたように、10月19日はPRIMERA FERIA EXPO ARTEがあ
りますから、次回は、それに出展するつもりです。

公園デビューが失敗ならば、庭園デビューがあります。#1モレーロス紹介で紹介の
ボルダ庭園内で、毎週日曜日に開かれるJARDIN DE ARTE芸術の庭です。実は、教会
のコーラス・グループのメンバーでいつも一緒に歌っているオクタビオも画家で、こ
こに出展しているというのは前から知っていました。そこで、早速、6日の日曜日の
ミサの後にオクタビオと一緒にボルダ庭園に行きました。勿論、絵を持って・・・。

日曜日のボルダ庭園にはクエルナバカ市民CUERNAVAQUENSE(CUERNAVACENSEとも言
う)も観光客も大勢訪れます。すでに画家達が三々五々美しい噴水の周りに絵を飾っ
ています。オクタビオに紹介してもらって、この場の責任者であるセニョーラ・ロサ
に挨拶をすると、参加費用は無料で、私のような俄か画家(内緒ですが)も歓迎して
くれました。早速、オクタビオに借りた画架CABELLETEに私も絵を飾ります。あと
は暇なので、おしゃべりし、時には民芸品の庭のお店を見て回ったり、2時半頃から
5時前にかずさんが迎えに来てくれるまで、販売に努めましたが収穫はゼロ。絵を売
った人は一人もいなかったようです。

ここで簡単に諦めてはいけません。翌週13日の日曜日にも絵を持ってミサに出席、
ミサが終わるとそのままボルダ庭園に直行です。午前中から展示している画家達に挨
拶して絵を飾ると、なんと間もなく親子連れのセニョールが来て、「なかなかいいじゃ
ないか」などと、私の絵を見ながら家族で話しているではないですか!そこで、私も
「初売りだから安くしときまっせ!」と声をかけました。、冷蔵庫にあった唐辛子を
描いた「チレ・セラーノ」の絵を気に入ってくれたのでした。本当は、一枚90ペソ
と値を付けていたのですが、贅沢は言えません。「いくらでも」と言うのに、セニョ
ールは何と100ペソ出して、「つりは入らない」と言います。

万歳!売れたのです。私がすごく喜ぶものだから、「おめでとうFELICIDADES」と他
の画家たちも声をかけてくれて、嬉しい、嬉しい、超ウレシイ!しかも、コーラスの
仲間も何人か見に来てくれて、同じメゾソプラノのルピータが「夕焼け」の絵を買っ
てくれました。つまり本日の売上げ2作、素晴らしい成果。
デビュー3回目で、ついに売れました。本当のプロの画家になったのです。
(クリックで拡大)
こうして画家としてデビューし、芸術家の振りをして通りがかる人々や画家達とおし
ゃべりし、自分の絵が売れる日を夢見、実際に売れるのは楽しいものです。ボルダ庭
園の「芸術の庭」には暫く参加し続けようと考えています。こうして情緒不安定は解
決、飽きるまでは静かだけれど面白い日々が続くでしょう。ということで、おこがま
しくも、私はエッセイストで歌手、さらに画家となったのでした。芸術の秋(赤面)。

おまけの話: キャデラック売ります

「CADILLAC 1991年型、白、美品、値段交渉可能」。地元の新聞DIARIO DE MORELOS
に出した売り広告です。値段は一応85,000ペソと考えています。上記の通り、値
引き交渉に応じます。友人のエデルが結婚したときには、花嫁さんのために、このキ
ャデラックが活躍しました。白い車体に白バラが飾られて、とても上品で優雅でした。
あとでエデルに聞いたら、車のせいで、芸能人か有名人の結婚式だと勘違いした人が
多かったそうです。興味のある方は、メールでご連絡ください。
かずの愛車キャデラック、まだまだ美しく華麗な容姿です
(クリックで拡大)
何故、家でおとなしく絵を描いていないで、恥を忍んで絵を売ることにしたかと言う
と、これが経済的理由なのです。8年前にメキシコに来て、5年前にかずさんが会社
を辞めた頃には、貯金の利子が35%くらいもあったのですが、最近は利子が7%く
らいまで低下してしまい、物価上昇の折り生活費が不足しがちになったのです。これ
はメキシコ金融史上最低の金利で、経済が安定し、先進国の仲間入りをしてきたこと
を意味するので、メキシコ全体を考えると良い傾向なのですが、おかげで我が家はキ
ャデラックどころか火の車、私も小遣い稼ぎが必要となってきたのです。

無論、絵で家計が潤う訳は無く、我が家では贅沢は敵となり、ついには贅沢品の極致
であるキャデラックを売ることになりました。駐車場は一台分しかないので、普段は
VWのゴルフに乗っていると、キャデラックは他所に駐車場を借りて置いてあり、無
駄な出費です。キャデラックを愛しているかずさんは未練たらたらですが、し方があ
りません。どなたか可愛がってくれる人を探しています。いかがですか?お安くして
おきますよ。

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バックナンバー
#1 「運転しよう」から:何でもありのメキシコ式運転
#2 「猫」から:猫の獲物はどうする?
#3 「免許証」から:ここでは買うんです
#4 「仕事をしよう」から:押し掛け助手は大活躍
#5 「仕事をしよう」から:コンサート後のご馳走
#6 「仕事をしよう」から:黒沼邸でのミニコンサート
#7 「スペイン語」から:無口な日本人
#8 「免許証から」から:車の所有税
#9 「クエルナバカ」から:蜂鳥
#10 「猫 パートII」から:捨て猫アナスタシア
#11 「猫穴」から:アメリカ・ドライブ・転々旅行
#12 「女性」から:老化現象と更年期障害
#13 猪俣猛作曲「クエルナバカの碧い空」
#14 日本へ一時帰国しました/その他
#15 運転したら事故はつきもの
#16 私たちの夏休み日記
#17 最近の感動:みんな生きている!
#18 ホームページ1周年記念
#19 仕事人「かり」
#20「葛飾諏訪太鼓」の日々
#21 クエルナバカから謹賀新年
#22 薬の話
#23 社交サロンの話
#24 夏時間、ク日比較アンケート
#25 母は強し
#26 我が家のガーデニング
#27 選挙裏話と日ク比較
#28 国際ピアノ・コンクール
#29黒沼ユリ子さん邸CASA DE VIOLIN増築祝い−ペット・ロス症候群
#30 2周年記念・シドニーオリンピック・おまけ「スキャンダル」
#31 我が家に棲みつく魑魅魍魎、おまけの話「無料電話」
#32 私達のSEXENIO、おまけの話「歌のクラス」
#33「CREA」取材のコーディネータ初仕事、おまけの話
#34「日本週間」、おまけの話「コーディネータ、プロ宣言」
#35 ニューヨークの白い空、おまけの話「夏時間」
#36 巣立ちの夏 、おまけの話「民宿 かず」
#37悲しい話、おまけ:雑誌TITLE
#38健康に自信がありますか?;おまけの話:TELECABLE INTERNET
#39  コンサート・デビュー;おまけの話:テレビ番組の取材
#40  夏休み病気特集第二弾;おまけの話:テレビ番組の放送日程
#41  我が家の独立記念日、おまけの話:アメリカ・テロ事件
#42  続編:独立記念日、おまけの話:テロ事件のメキシコの反応
#43  犬を買いませんか? おまけの話:イダルゴ州の温泉
#44  日本メキシコ学院リセオで講演;おまけの話:2001年総括
#45  謹賀新年、 おまけの話:子供達の里帰り
#46  ベラクルス珍道中: おまけの話: 月刊誌NOVARK 
#47  女性についての考察: おまけの話:日本一時帰国のお知らせ
#48  一時帰国報告: おまけの話: JAL悟空格安チケット
#49  「清流」とサッカーの話: おまけの話: かずの写真館
#50  7年半目の情緒不安定: おまけの話: 癒しのピアノ館
#51  ホーム・コンサート決行;おまけの話:帰ってきた子供達
#52  老人ホーム慰問コンサート; おまけの話:パパ訪問
#53  タマがうちにやって来た。おまけの話:慰問コンサート

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