「クエルナバカの碧い空」第54号
#4 トピックス − メキシコ原産の野菜たち
サツマイモと言えばその名の通り、薩摩地方(現在の鹿児島県西部−西郷隆盛の出身
地)の原産の芋と思うのが当たり前。しかしそうではなく、原産はメキシコでした。
メキシコ芋と呼ぶべきかもしれません。ナウアトル語でCAMOTEカモーテと呼び、普
通のCAMOTEとCAMOTE AMARILLO黄色サツマイモ(果肉がオレンジ色がかっている)
があって、野菜としてよりも、甘くしてお菓子として食べます。プエブラ地方のカモ
ーテ菓子が有名です。

私達はよく焼肉をしますが、そんな時、メキシコ人にカモーテを焼いて出すととても
驚きます。野菜として家庭料理に出てくることがないのでしょう。野生種に近いせい
か、日本のものよりもゴツゴツしていて、煮炊きしても皮が固く筋張っているので、
厚く剥いて調理します。ホカホカと甘い味は薩摩芋と同じです。

最近はモヤシGERMEN DE SOYAや白菜LECHUGA NAPA、生姜JENGIBREなどが普通に
出まわっており、日本人に馴染みの野菜があるということは、海外に住む私達にとっ
て嬉しいことです。但し、新しい野菜だと名前を知らないメキシコ人が多く、買うと
きにはレジで名前をきかれますから、覚えておきましょう。オクラANGUのように純
日本産と思いこんでいた野菜がスーパーにあって驚くこともあります。

例えばナスBERENJENAはアクが強過ぎるし、大根NABOは非常に小型であまり大根の
味がしないとか不満な部分もありますが、反対に、キュウリPEPINOは日本のものよ
りもずっと大型だけれど瑞々しいし、ピーマンPIMIENTO VERDEは肉厚でジューシー、
タマネギCEBOLLAも独特の臭みがなく甘い等など、野性的で味が濃いのがメキシコ野
菜です。日本でピーマンやタマネギが苦手でも、ここでなら美味しく食べられると言
う人も多いのです。

メキシコ原産の野菜の代表としては、トウモロコシELOTE(HP第31号#4トピッ
クス)、アボガドAGUACATE(HP第49号#4トピックスのフルーツ参照)、トマト
JITOMATE、カボチャCALABAZA、唐辛子CHILE、豆FRIJOLがまず挙げられます。どれ
もメキシコ人の食卓に今も欠かせない食材であるばかりか、今では世界中で食されて
いるものばかり。トウモロコシはトルティージャやタマーレスなど主食の材料として、
アボガドはワカモレGUACAMOLEにして、トマトはもちろん、チレはサルサSALSAに、
豆は付け合せやスープに、カボチャはスープやお菓子に、どれも何千年もの昔から変
わらずメキシコ人の栄養源になってきました。

野菜ではないけれど、チョコレートの原料カカオCACAO、煙草TABACO、木綿ALGODON
なども原産です。意外なのは、バニラ・エッセンスのバニラVAINILLAで、今もベラ
クルス州のタヒンTAJIN(ボラドールVOLADORで有名なところ)近くのPAPANTLAの
遺跡がある森の中には、野生種と思われるバニラの木があって、サヤに入ったバニラ
を見ることができます。

私の好物の大根や美味しいナス、ゴボウやレンコンなどが食べられないのは残念です
が、その代わり、日本では見た事もないメキシコ独特の美味しい野菜が沢山あります。
そんなメキシコ原産の野菜を紹介します。但し、チレCHILE唐辛子については話すと
長くなるので、いずれチレ特集をしますのでお待ち下さい。

まずは、豆類FRIJOLです。モレーロス州の大きな産業でもあり、スーパーやメルカ
ドには非常に多様なマメが並んでいます。甘いもの好きのメキシコ人がこれだけは、
日本とは逆で、甘くしないで、塩茹でしてペースト状にして、又はスープにして、ど
んな料理にも付け合せます。軽食として出てくるのがモジェーテMOLLETEで、トル
タ・パンやバゲッテを縦に割って、豆のペーストを塗り、削りチーズをかけて食べま
す。よく日本でメキシコ料理の代表として知られている豆料理のチリコンカンは、こ
ちらでは食べた事も見た事もないのですが、これはどういうわけでしょうか?

メキシコといえばノパールNOPAL、ウチワサボテンについては既に第26号で書きま
した。ネギやチレと一緒に炒めて料理などの付け合せとして出て来ます。我が家では、
和風に、軽くフライパンで両面を焼いて醤油をかけ、削り節をまぶして食べます。納
豆のように糸をひくのが、いかにも栄養ありげです。

トマトは日本でもお馴染みですが、ここではJITOMATEといいます。日本で見る丸
いトマトJITOMATE BOLAとは別に、小型で楕円形のトマトJITOMATE SALADETが主
流です。ちょっと熟れ過ぎかな?と思うくらいのものが、いかにも緑黄食野菜の濃い
味がして、料理中にもちょいとつまんで食べたくなります。メキシコ料理で一番多用
される野菜がトマトですから、トマト嫌いの人はメキシコでは生活できせん。生で食
べる他、赤色サルサSALSA ROJA、ワカモレGUACAMOLE、サルサ・メヒカーナSALSA
MEXICANA、またメキシコご飯ARROZ A LA MEXICANAの色づけにと、どこにでも出て
きます。

緑色トマトTOMATE VERDEまたはTOMATE DE CASCARA(殻付きトマト)も重要な食材
です。アメリカの大きなグリーン・トマトとは異なり、小粒で、ホウズキのように皮
をかぶったまま売っています。これを茹でたり、焼いたりしてから、チレと一緒にミ
キサーにかけ(伝統的には小さな石臼METATEで挽く)、好みにより塩やシラン
トロCILANTROなどの香り草をきざんで加え(アボガドを細かく切ったのをいれる
人もいる)、様々な料理にかけて食べると、ぴりっと辛くて美味しさが引き立ちます。
癖になってしまって、我が家ではいつも作りおきし、和食にまでかけて食べます。
 JITOMATE (赤)とTOMATE VERDE (緑)
(クリックで拡大)
以前、T−シャツに鉄のボタンの染みが出来たときに、お手伝いさんMUCHACHAが、
緑色トマトと塩を染みに擦り込んで、太陽に干したら、きれいに染みがとれたことが
あります。意外な利用法でした。

カボチャCALABAZAは日本ではもちろん馴染みの野菜ですが、メルカドにはあっても、
スーパーなどでは、ハローウインの季節(メキシコ的には「死者の日DIA DE MUERTE」
近く)にしか見られません。サツマイモと同じく、お菓子として甘くして食べます。
日本でも見る小さなウリのような野菜もあって、カラバッサ・ハポネッサ(ニッポン
かぼちゃ)と言う名前の野菜も売っています。しかし、ここで紹介するのはカボチャ
そのものではなく、カボチャの花FLOR DE CALABAZAです。一般にはスープにして食
べます。また屋台などで食べるQUESADILLAという料理は、小麦粉のトルティージャ
にチーズなどを挟んで食べますが、きのこHONGOSやカボチャの花を挟むのも人気です。

ヒカマJICAMAは不思議な食べ物です。イモのような果物のような、味があるような
無いような。しかも、様々な大きがあり、チレや他の野菜と一緒に酢漬けにしたり、
そのまま切って粉チレや塩、レモン汁をかけて食べます。シャキシャキと歯ざわりが
良く、味が濃くないせいで、いくらでも食べられます。黒沼ユリ子さん発案のマンゴ
ーとヒカマとチレのサラダが好評です。

チャヨーテCHAYOTEも不思議な食べ物です。トゲ付きの濃い緑色のと、トゲ無しの黄
緑色の二色があって、どちらも茹でると皮がするりとむけます。中は白っぽく、同じ
ウリ科だから当然だけれど、キュウリを茹でたような感じです。スープの具にしたり、
種を繰り抜いて中にツナのマヨネーズ和えなどを入れて、おつまみにしたりします。
また四角く切って、塩、レモン、オレガノをかけても、おつまみになります。また、
種も美味しいです。
チャヨーテCHAYOTE
(クリックで拡大)
チャヨーテは寒暖を問わずどこでも栽培する事が出来る上、病気に強く、手入れが簡
単で、しかも一度種を蒔くと7年間に亘って大量に収穫する事が出来るそうで、大昔
から人々にとって大切な農産物でありました。長い間、私達は食べずに済ませてきた
野菜ですが、食べて見るとなんとなく味があって、よくおつまみを作っています。

HUAUZONTLEを、私達は勝手に「ほうき草」と呼んでいます。ほうきのような細い茎
に細かいツブツブの葉が繁っていて、丸ごと衣揚げにします。歯で茎をしごいて葉だ
けを食べます。美味しいのですが、面倒なので家で料理して食べる事はありません。
ノパール、HUAUZONTLE、かぼちゃの花
(クリックで拡大)
GUAJEは、そこら辺の木からとってきたのではないかと思われるような、薄いサヤ
に入った種で、種をサヤからだし、石臼で挽いてペースト状にして食べるそうで、ニ
ンニクAJOのような匂いがするそうです。

その他にも、料理の仕方を知らないので使ったことはないけれど、レストランで食事
をすると独特の香りの葉っぱが入っていることがあります。8年もこの国に住んでい
ながら、まだまだ未知のメキシコ独特の野菜がありますが、どれも、栄養価が高く、
きちんと食べていればコレステロールも糖尿も心配なく、安心して長生きしそうです。

なお、上記の野菜たちは、名前がナウアトル語よみのものが多く、地方によっては別
の名前で呼ばれることもあります。

因みに、カボチャ、アスパラガス(メキシコ原産ではないけれど、生産しており、ほ
とんどが輸出用のため、メキシコでは高級野菜である)、ブロッコリー、アボガドな
どの野菜や果物、ランの花などがメキシコから日本に輸出されています。10月中に
日本から小泉首相がメキシコを訪問してフォックス大統領と会談し、日墨自由貿易協
定が結ばれる予定です。近い将来、美味しいものがもっと安く食べられるようになる
かもしれません。

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バックナンバー
#2 メキシコの住宅事情
#3 警官への賄賂
#4 音楽友の会 10周年コンサート裏話
#5 ノーチェ ブエナ物語
#5 クリスマス行事
#6 年末年始の休みとグアダラハラ家族旅行
#6 トレス レイエス
#7 ビザの種類と更新
#8 モナルカ蝶の聖域ツアー
#9 ガールスカウト奈良支部
#10 チャイコフスキーのバレー「白鳥の湖」
#11 メキシコ縦断アメリカ転々旅行
#12 メキシコの飲み物
#13 テキーラ
#14 花が咲いて実がなった(街で見る果物)
#15 アステカ・カレンダリオの謎
#16 2000年・年越し祭り
#17 9月16日 独立記念日
#18 特別ゲスト、中村さつきさん
#19 DIA DE MUERTOS 死者の日
#20 葛飾諏訪太鼓メキシコ滞在記 (リーダー水澤啓一 記)
#21クエルナバカの年末年始
#22 メキシコ病院事情
#23 今も懐かし、街頭の物売りたち
#24 養老院YALENTAY慰問コンサート
#25 メキシコの温泉も気持ちいい(*^o^*)
#26 ノパール NOPALで健康に!
#27 メキシコの選挙
#28 ロマンチック・アシエンダ(荘園)街道巡りの散策
#29メキシコ、愛国心のしるし
#30メキシコの結婚式 − 二つの体験談
#31メキシコ原産トウモロコシ MAIZ の秘密
#32 6年に一度の大統領就任式
#33 メキシコのピニャータ
#34 火山ポポカテペトルと山麓の世界遺産−修道院群
#35 MARCHA ZAPATISTA サパティスタの行進
#36 メキシコの飲み物 第二弾 − メキシコの伝統的な飲み物
#37メキシコの飲み物 第3弾 − メキシコのアルコール飲料
#38 QUINCENERA -XV歳の社交界デビュー・フィエスタ
#39 メキシコのお金
#40「民宿かず」お客さま第一号記念
#41 メキシコの祝祭日・記念日
#42メキシコ・シティから独立記念日の実況中継
#43 RUTA DE ZAPATA 革命児サパタを辿る道
#44メキシコのクリスマスと「NACIMIENTO」飾り
#45メキシコの伝統菓子
#46メキシコの宝くじLOTERIA
#47藤枝先生のメキシコ体験談
#48ラス・エスタカス物語HISTORIA DE LAS ESTACAS
#49メヒカン・フルーツの全て(第一部)
#50メキシコのルチャ・リブレ−高橋千歳さんの特別報告
#51  PAPA JUAN PABLO II メキシコ来訪メモ
#52 メキシコ・シティの地下鉄 METRO EN MEXICO
#53  TEMAZCALの謎


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