-呑気家族のメキシコ移住計画-
出版:近代文芸社
石田 かり・著
                         「クエルナバカの碧い空」第57号
#6 本の続編 − NY息子救出作戦、おまけの話: レコーディングとラジオ番組
12月19日の午後の事でした。師走といっても走るほどは忙しくなく、この日の夜
中に息子がNYから冬休で帰国するけれど、空港に迎えに行かずとも一人で帰って来
るし、コーラス仲間の打ち上げパーティと、老人ホームの慰問コンサート以外は、ク
リスマスまで何にも予定もないなぁと、のんびりとしていた午後でありました。

「もう飛行機に乗った頃ね」などと話していたら、当の息子から電話があったのです。
息子イワク、「親の承諾書がないから、空港のチェックイン・カウンターで拒否され、
仕方なく学校の寮に戻って来た」。飛行機が遅れたのか、それとも機内からの電話で
かけてきたのか(アエロメヒコの機内には座席に電話が付いている)と、めまぐるし
く考えたのは全て虚しく、最悪の知らせ。血圧が上昇して頭が爆発しそう。

ぼう然としている暇はありません。19日には全ての生徒が寮を引き払い、学校全体
が冬休となり、食堂も閉鎖、先生方も休みに入るはず。周囲はシカやリスが走りまわ
る林で、レストランもなにもなく、寒いNYでは追い出されたら生き延びるのも大変!

頭が回らないので、取りあえず飛行機の切符を手配したNYの旅行会社に問い合わせ
ると、「そうですね。18才になるまでは親の許可無しでは旅行できないことになっ
ていますね」という返事。ガーン!前にもこのページで書いたように、14才までは
書類が必要なので公証人役場で書類を作ってもらったことはあります。でも15才に
なってからは、アメリカの航空会社の飛行機には一人で乗れないということなので、
割り高にも関わらず、わざわざメキシコの航空会社のアエロメヒコAEROMEXICOの
切符を買ったというのに、そして旅行会社もそのいきさつを知っていたのに・・・。

更に驚きなのは、片親が迎えに行くにしても、もう一人の親の許可が必要だというの
です。離婚が増えて、親権を取れなかった親が子供を連れ去る、つまり誘拐する事件
が増えているため、一緒でない親の書面による了解が必要だというのです。そういう
事件があるのは知っているけれど、ごく一部の家庭内のゴタゴタを基準に規則を作っ
て良いものでしょうか!現に、JFK空港のチェックイン・カウンターでは、女の子
を連れたお母さんが、書類がないからと、スッタモンダのやり取りをしていました。

アメリカの規則か、メキシコのものか、単にトラブルを恐れる航空会社のものか、調
べている暇がない。クエルナバカの旅行会社の人は、そんな話を聞いたこともないそ
うで、大使館に電話で問い合わせようとしましたが、休暇直前で早く帰ってしまった
のか返事がありません。(聞くところによると、メキシコ人のパスポートには一人で
旅行しても良い旨の記載があるそうです。)それにしても、息子はすでに15才。そ
の後、NYや日本へ一人旅をしていて問題が無かったのに、何を今更・・・。

書類はすぐには作れないし、郵送の時間もなく、息子をNYから救出するには、夫婦
二人して飛ぶより他に手段はなし。ハイ・シーズンのため割高な航空券を買い、学校
に、翌日には息子を連れ出す旨連絡すると、学校では副寮長さんが待っていてくれる
という有りがたいお返事です。

20日早朝空港へ。飛行機に乗るとこれがなかなか出発しない。乗り継ぎ便が遅れそ
の人達が乗りこむのを待って2時間遅れでやっと出発。従順なメキシコ人には珍しく
(アメリカ人だったかも知れない)、「もう降りる」と怒り出す人もいます。勿論、
到着も2時間遅れ。JF KENNEDY空港からのタクシーの若い黒人の運ちゃんは最初こそ
陽気でしたが、NYの雑踏を出て郊外の林の中に入る頃には辺りも暗くなり、道を尋
ねようにも歩いている人もおらず、だんだんと口数が少なくなります。英語で書かれ
た道順を渡したものの、暗闇の山道ではなんの役にも立たず、私達もただただおろお
ろするばかり。結果的に学校に辿り着けたのは奇跡でしたQUE MILAGRO!。

遅くまで待っていてくださった副寮長さん(寮内に住んでいらっしゃるそうです)に
お礼を述べ、息子の部屋も見学してから、予約してあった学近くのホテルの車を呼ん
でいただいて、無事チェック・インしたのは既に夜8時過ぎ。こんな時でもお腹はす
くし、せっかくのNY、ステーキでも食べようよと話はまとまります。と言うのもホ
テルの窓から見えるステーキ・ハウスは、人の出入りが激しく、外で待っている人も
いて、肉汁の匂いが迫ってくるようなのです。予約一時間待ちで、私達も深夜にステ
ーキにありつきましたが、さすがの味とボリューム、待った甲斐が有りました。

翌21日にメキシコに帰るつもりでしたが、NYに住むメキシコ人の帰省ラッシュで
満席のため航空券がとれず、22日に帰宅することになり、21日は自由日です。色
々あったけれど、ここまで来てしまったらマンハッタンだろうと意見が一致、まず郊
外にあるホテルからシャトルバスで最寄りの駅まで行き、汽車でGCTグラン・セン
トラル・ターミナルまで行って、地下鉄に乗換え、更に、タイムズ・スクエアーで別の
地下鉄ラインに乗換え、エンパイア・ステート・ビルを目指しました。

入り口では分からなかったけれど、ホリデイ・シーズンのせいで、テロの恐怖も薄れ
た人々の作る列が、エレベータ・ホールにも、エレベータを降りてからも長々と続き
トータル2時間待ち、ようやくビルの頂上からマンハッタンを見下ろし、強風に吹か
れてNY気分を味わいました。自由の女神は時間切れで島までは渡れず、対岸からご
対面。その後、中華街の、中国語しか通じないような小さいけれど、中国人でいっぱ
いの食堂でラーメンを食べてから、ホテルへ戻り、巨大ショッピング・モールを見物
して、NYの休日は無事に終わりました。
おのぼりさん気分で並ぶこと2時間  展望台からの眺め
(クリックで拡大)
すっかり忘れたと思っていた英語も(変なスペイン語訛りで、ガテマラから来たホテ
ルのウェイターに話しかけられた時は、ホッとしました)なんとか通じたし、地下鉄
の駅ではブレーク・ダンスを踊る若者達や、中国人のおじさんの不思議な楽器の演奏、
クリスマス・キャロルを歌うグループなど、雑多なNYの街を満喫。私にとっては、
およそ4半世紀ぶりのNYはマンハッタンの街でした。

翌日22日は帰国の日。午前中だけ時間があるので、近くのモールへで念願の本を買
い、午後早く空港へ向かいます。息子の航空券を19日から22日に変更したことも
あって、時間の余裕を見て到着したのですが、ここで再び試練が待ちうけていました。
息子の予約の登録がないと言うのです。カウンターのおじさんは親切で、コンピュー
タや別の係りの人などと色々調べてくれました。結果的に日程を変更した時に、紙の
チケットを貰っていないので、エレクトロニック・チケットと言って、コンピュータ
上に記入されているべきだったのに、それが消えていたのだそうです。なんとか、お
じさんの尽力で改めて登録してもらい、めでたくチェックイン。しかも、変更に必要
な手数料100ドルは、どさくさに紛れて請求されず、ちょっとお得!

まだまだ災難は終わりません。メキシコ空港に無事に到着したのが夜の8時50分、
10時のクエルナバカ行きのバスに間に合うと切符売り場に駆けつけたら、10時も
最終の11時のバスも切符は売り切れ。本日のバス便は終わりましたと!こんな事は
初めて。仕方なく、公式タクシーの窓口に行くと、クエルナバカまで1400ペソも
すると言うではありませんか!もうひとつの窓口もトライするとなぜか750ペソ、
プラス往復の高速料金。おんぼろでも大型のバン・タクシーで、やっと真夜中の生還
となりました。留守番のタマも、タマの子守りを引き受けてくれた娘も無事で、やっ
ぱり我が家はいいなぁ。

おまけの話: レコーディングとラジオ番組

友人でバイオリニストの美子さんから久々の電話があったのは去年10月のこと。友
人のお父さんルイス・デメトリオ氏が、作詞・作曲をした曲を日本語に翻訳してくれる
人を探していると言うのです。

預かったのは、作詞・作曲および歌手であるデメトリオ氏の、昭和天皇を題材にした
歌詞と、実際に歌って録音したテープでした。昭和天皇を題材にした歌を作ることな
ど、誰が思い付くでしょうか?不敬罪に当たるかもしれません。恐る恐る聴いて見る
と、これがなかなかチャーミングな曲です。11月の日本・タイ旅行から帰って早速、
翻訳にとりかかり12月の初めに日本語訳の歌詞と、自分で歌った曲を入れた録音テ
ープを持ってデメトリオ氏に会いに行きました。

デメトリオ氏の説明によると、教材用に歴史の歌シリーズを発案し、既にメキシコの
歴史は出来あがり(CD10枚セットをプレゼントされました)、全国の学校で教材
として使われているそうです。つまり九九の歌のように歌えば、年代や人物の名前な
どを楽しく覚えることができるという考えです。天皇の歌は、単に日本用の見本とし
て作ったもので、日本の大手レコード会社にアイデアを売りこみ、日本側が気に入れ
ば、独自に作成することになるのだそうで、いろんな国に売り込むため、各国語のそ
の国の歴史の歌のサンプルを作成しているのです。

「私も歌手で、コーラスで歌っている」などと大口をたたいて自己紹介したものだか
らデモCDも私が歌うことになりました。デメトリオ氏の家は広大な敷地にあって、
レコーディング施設が整っています。12月19日の午前11時から、そのレコーデ
ィング・ルームでCD録音を初体験しました。大きなガラス越しに、録音機械室の指
示を受けながらヘッドフォンをしてマイクに向かって歌うのは、のぼせるような、快
感なような・・・。
先ずは軽くリハーサルして  本番でOKが出て思わずにっこり
(クリックで拡大)
実はデメトリオ氏は、メキシコ人なら誰でも知っている歌手で作曲家です。隣のアル
フレッドお兄ちゃんは、「その人はルイス・ミゲルが歌ってヒットしたLA PUERTAを
作詞・作曲した人だよ」と歌いながら教えてくれました。この曲も知らなかったので
すが、本当にメキシコ人全員が知っている曲なんです。全然そんなことを知らなかっ
た私達は、ただの物好きなおじさんと思い込んで、あまり敬意を払わなかったのです
が・・・。こうしてレコーディング歌手ともなって、録音された歌を聴き、ギャラも
いただき、しかもデメトリオ氏からはお褒めの言葉ももらって、すっかり有頂天の年
末の出来事でした。この日の午後、息子からの電話を受け取るまでは・・・。

話は変わりますが、ラジオ番組出演が決まりました。ニッポン放送の、毎週土曜日の
朝7時〜11時の生放送「お願いDJ 小林克也のハッピーウィークエンド」という
番組中、9時30分―50分にある「NECトレンドナビゲーター」というコーナーで、
小林克也さんと直接電話でメキシコの話題について話をするそうです。その間、約2、
3分、瞬間出演ですのでお聞き逃しなく!

表紙に戻る
感想箱へ進む
バックナンバー
#1 「運転しよう」から:何でもありのメキシコ式運転
#2 「猫」から:猫の獲物はどうする?
#3 「免許証」から:ここでは買うんです
#4 「仕事をしよう」から:押し掛け助手は大活躍
#5 「仕事をしよう」から:コンサート後のご馳走
#6 「仕事をしよう」から:黒沼邸でのミニコンサート
#7 「スペイン語」から:無口な日本人
#8 「免許証から」から:車の所有税
#9 「クエルナバカ」から:蜂鳥
#10 「猫 パートII」から:捨て猫アナスタシア
#11 「猫穴」から:アメリカ・ドライブ・転々旅行
#12 「女性」から:老化現象と更年期障害
#13 猪俣猛作曲「クエルナバカの碧い空」
#14 日本へ一時帰国しました/その他
#15 運転したら事故はつきもの
#16 私たちの夏休み日記
#17 最近の感動:みんな生きている!
#18 ホームページ1周年記念
#19 仕事人「かり」
#20「葛飾諏訪太鼓」の日々
#21 クエルナバカから謹賀新年
#22 薬の話
#23 社交サロンの話
#24 夏時間、ク日比較アンケート
#25 母は強し
#26 我が家のガーデニング
#27 選挙裏話と日ク比較
#28 国際ピアノ・コンクール
#29黒沼ユリ子さん邸CASA DE VIOLIN増築祝い−ペット・ロス症候群
#30 2周年記念・シドニーオリンピック・おまけ「スキャンダル」
#31 我が家に棲みつく魑魅魍魎、おまけの話「無料電話」
#32 私達のSEXENIO、おまけの話「歌のクラス」
#33「CREA」取材のコーディネータ初仕事、おまけの話
#34「日本週間」、おまけの話「コーディネータ、プロ宣言」
#35 ニューヨークの白い空、おまけの話「夏時間」
#36 巣立ちの夏 、おまけの話「民宿 かず」
#37悲しい話、おまけ:雑誌TITLE
#38健康に自信がありますか?;おまけの話:TELECABLE INTERNET
#39  コンサート・デビュー;おまけの話:テレビ番組の取材
#40  夏休み病気特集第二弾;おまけの話:テレビ番組の放送日程
#41  我が家の独立記念日、おまけの話:アメリカ・テロ事件
#42  続編:独立記念日、おまけの話:テロ事件のメキシコの反応
#43  犬を買いませんか? おまけの話:イダルゴ州の温泉
#44  日本メキシコ学院リセオで講演;おまけの話:2001年総括
#45  謹賀新年、 おまけの話:子供達の里帰り
#46  ベラクルス珍道中: おまけの話: 月刊誌NOVARK 
#47  女性についての考察: おまけの話:日本一時帰国のお知らせ
#48  一時帰国報告: おまけの話: JAL悟空格安チケット
#49  「清流」とサッカーの話: おまけの話: かずの写真館
#50  7年半目の情緒不安定: おまけの話: 癒しのピアノ館
#51  ホーム・コンサート決行;おまけの話:帰ってきた子供達
#52  老人ホーム慰問コンサート; おまけの話:パパ訪問
#53  タマがうちにやって来た。おまけの話:慰問コンサート
#54  私の公園デビュー、おまけの話: キャデラック売ります。
#55  売れた! おまけの話:今年一番長い夜
#56  タイ旅行報告、おまけの話:クリスマス・コンサート

[PR]看護師の好条件な求人情報満載:≪高待遇な求人続出≫専任がサポート!