
「クエルナバカの碧い空」第57号 #4 トピックス − 伝統玩具JUGUETES TRADICIONALES先日テレビを見ていたら、クリスマスNAVIDADやトレス・レイエスTRES REYESの プレゼント・シーズンにもかかわらず、メキシコの伝統的な玩具産業が危機に陥って いるというニュースが流れていました。実際、近所の子供達が受け取るプレゼントは、 プラスチック製の自動車やバービー人形、ファミコン・ゲームなどで、メキシコの伝 統産業である素朴な玩具は影が薄いです。 最近読んだ雑誌によると、安い労働力を求めてソニーやフィリップス社が一部工場を メキシコから中国に移したり、中国製品がメキシコにも入って来て、安い中国製品と の競争が熾烈になり、その結果、最も打撃をうけたのが、伝統的な産業である製靴業 および玩具産業だそうで、1989年に全国に600社あった玩具メーカーが、現在 では何と47社にまで激減してしまったのですから、打撃の大きさが伺えます。 その上、ファミコン・ソフトやCDなど、海賊版や偽製品に席捲されたメキシコの マーケットでは、手先の器用なメキシコ人がひとつひとつ手で作り、色を塗って仕 上げた製品は身の置き場もないようです。 しかし、未だにスーパー・マーケットで、木の洗濯バサミが売られているメキシコ のこと。木、陶器、布、メタル、紙だけでなく、時には砂糖でできていたり、非常 にシュールで、少々いびつ、遊び心がいっぱいで、懐かしい暖かさをもつメキシコ のおもちゃは、民芸品として私達の目を惹きつける魅力が充分にあります。 そして、民芸品の市場などでメキシコの玩具を見ると、なぜか驚き、懐かしく思うも のに出会うことがあります。それは、日本の昔ながらの玩具と共通するところが沢山 あるからです。例えばカザグルマ。おもちゃ屋の屋台先で風に吹かれてくるくると回 っているのは、確かに日本でも縁日の屋台で売られている風車と全く同じです。スペ イン後では、REHILETEと言います。 民芸玩具の屋台 あるいは、でんでん太鼓TAMBORITA。これも、今も日本の民芸品屋に売られている、 あのでんでん太鼓と同じ。お馴染みの独楽(コマ)TROMPOも、日本のとは形が異 なるけれど、同じように美しく彩色されています。古文書によると、アステカ最後の 皇帝クアウテモックが6才になった時に、母親がコマをプレゼントし、遊び方を教え たとあり、古い歴史を持っているようですから、日本とメキシコと別々に開発された おもちゃかも知れず、民族的に似ているのかしらと思ってしまいます。因みに、スペ イン語では、コマを回すというところを、コマを踊らせるBAILARと言います。 その他、Y字の木に渡したゴムで石を飛ばすパチンコRESORTERAや、文字を覚える ための積み木、ミニチュアの家具、凧PAPALOTE(ナウアトル語で「蝶々」)、竹や 土器の笛FLAUTA、馬CABALLO、くねくね曲がるヘビVIBORA、木のトラック、蓋を 開けるとヘビ飛び出すビックリ箱CAJITA SORPRESA、はしご段をひとつづつ木片が 引っかかりながら降りてくるハシゴESCALERA、板の下の糸に吊るされた重石が動 くと、板の上の鳥がエサをつつくPAJARO DE PENDULO、メキシコ版サイコロとも 言えるPIRINOLA(8面体の各面に数字や指示が描かれている)、ケンダマBALERO 等など、どこかで見たことのある懐かしいおもちゃがいっぱいあります。
驚くのは木の板TABLITAS DE MADERAです。色の布テープでつながれた6枚の板の うち、一番上の板の端を持つとパタパタと返りながら落ち、また端を持つと、またパ タパタともとの位置に戻る仕掛のおもちゃです。賢い原理でなっている割には、簡単 な仕組で、動きが面白く目の錯覚かと思うほどです。物の本によると、何千年(?) も前に日本で発明されたという説があるそうです。日本からヨーロッパやアメリカに 渡ったそうで、スペインでは、ESCALA DE JACOBと呼ばれ、いかにも頭の良いおも ちゃとして伝説的な存在のようです。本当に日本が考案したものなら自慢できること ですが、残念ながら、日本では見たことはありません。 アクロバットMAROMEROというおもちゃも単純な仕掛けて面白い。これは、2枚の 縦板の間に糸で繋がれた人形がぶる下がっていて、板の下方を握り締めると、鉄棒競 技のようにくるりくるりと前回転、後回転をするものです。また、ATRAPA NAVIO又 はPESCA NOVIOもユーモラスでなおもちゃです。カゴCANASTAを作る人々が、片手 間(?)に残りの椰子の葉で作るこのおもちゃは、一旦、指をいれると、編んだ葉が 締まって抜けないことから、恋人を釣り上げるために欠かせない冗談商品として人気 です。5ペソくらいで買えることも手ごろです。 楽しい仕掛けに思わずニッコリ 木製のおもちゃとしては、マトラカMATRACAもあります。これは玩具と言うよりも 応援の道具というべきかも知れません。私達は、ある年、ホテルのクリスマス・ディ ナーのプレゼントとして貰ったことがありますが、マトラカの棒をもってグルグルと 上の2枚の板を回すと、板の間の歯車がギリギリと鳴って大きな音を立てます。元々 は、セマーナ・サンタ聖週間の時に鳴らす鐘の音に代わる物として作られたそうです が、現在では、サッカーなどの応援などをする時に、PORRASと呼ばれる応援の掛け 声をかけながら、鳴らして、大騒ぎする道具です。 すでにトピックスで特集したことがあるピニャータPINATAは、誕生日のパーテ ィやクリスマスのポサーダPOSADAでは欠かせない遊び道具です。元々は土器の壷 に新聞紙や色紙を貼りつけて、コンペイ糖の形をしていて宗教的な意味合いがありま すが、現在ではアニメ(キティちゃんやミッキー・マウス)や映画の主人公(スパイ ダーマンなど)、動物などの形をしたものが常にピニャータ屋の店先に吊るされて風 に揺れていてます。 操り人形TITERESや手足が動く人形MUNECA、ガイコツの人形。これらは木や布、 紙や泥土(時には砂糖で)でできていて、確かに、現代っ子が抱いて遊ぶには、色と いい形といい、あまりにシュール過ぎて、可愛さよりも怖さを感じるかも知れません。 こうして独特の雰囲気を保つメキシコのおもちゃ、大人を楽しませる民芸品として、 しぶとく生き残っています。 表紙に戻る訪問者紹介へ進む バックナンバー#2 メキシコの住宅事情#3 警官への賄賂 #4 音楽友の会 10周年コンサート裏話 #5 ノーチェ ブエナ物語 #5 クリスマス行事 #6 年末年始の休みとグアダラハラ家族旅行 #6 トレス レイエス #7 ビザの種類と更新 #8 モナルカ蝶の聖域ツアー #9 ガールスカウト奈良支部 #10 チャイコフスキーのバレー「白鳥の湖」 #11 メキシコ縦断アメリカ転々旅行 #12 メキシコの飲み物 #13 テキーラ #14 花が咲いて実がなった(街で見る果物) #15 アステカ・カレンダリオの謎 #16 2000年・年越し祭り #17 9月16日 独立記念日 #18 特別ゲスト、中村さつきさん #19 DIA DE MUERTOS 死者の日 #20 葛飾諏訪太鼓メキシコ滞在記 (リーダー水澤啓一 記) #21クエルナバカの年末年始 #22 メキシコ病院事情 #23 今も懐かし、街頭の物売りたち #24 養老院YALENTAY慰問コンサート #25 メキシコの温泉も気持ちいい(*^o^*) #26 ノパール NOPALで健康に! #27 メキシコの選挙 #28 ロマンチック・アシエンダ(荘園)街道巡りの散策 #29メキシコ、愛国心のしるし #30メキシコの結婚式 − 二つの体験談 #31メキシコ原産トウモロコシ MAIZ の秘密 #32 6年に一度の大統領就任式 #33 メキシコのピニャータ #34 火山ポポカテペトルと山麓の世界遺産−修道院群 #35 MARCHA ZAPATISTA サパティスタの行進 #36 メキシコの飲み物 第二弾 − メキシコの伝統的な飲み物 #37メキシコの飲み物 第3弾 − メキシコのアルコール飲料 #38 QUINCENERA -XV歳の社交界デビュー・フィエスタ #39 メキシコのお金 #40「民宿かず」お客さま第一号記念 #41 メキシコの祝祭日・記念日 #42メキシコ・シティから独立記念日の実況中継 #43 RUTA DE ZAPATA 革命児サパタを辿る道 #44メキシコのクリスマスと「NACIMIENTO」飾り #45メキシコの伝統菓子 #46メキシコの宝くじLOTERIA #47藤枝先生のメキシコ体験談 #48ラス・エスタカス物語HISTORIA DE LAS ESTACAS #49メヒカン・フルーツの全て(第一部) #50メキシコのルチャ・リブレ−高橋千歳さんの特別報告 #51 PAPA JUAN PABLO II メキシコ来訪メモ #52 メキシコ・シティの地下鉄 METRO EN MEXICO #53 TEMAZCALの謎 #54 メキシコ原産の野菜たち #55 唐辛子CHILE #56 命の木 EL ARBOL DE LA VIDA |