「クエルナバカの碧い空」第59号
#4 トピックス − グループ・ストウ クエルナバカ・コンサート顛末記
先月号の#2文化情報でお知らせしたグループ・ストウのコンサートは、想像以上に
楽しく、大成功に終わりました。初めて自分たちだけがプロモータとしてアレンジし
たコンサートであり、ズブの素人ですから、グループ・ストウも戸惑う事が多かった
とは思います。反省点も多かったですが、ここでは、コンサート開催までどのような
手順を踏んだか、どのような問題があったかを記録しました。

コンサート会場: クエルナバカはメキシコ・シティにも近く、今では充分に大規模
な都会になりました。ところが、隣人たちが常日頃、「クエルナバカは田舎だから…」
と自嘲するように、見栄えの良い音楽ホールがありません。例えば、メキシコ第2の
都市グアダラハラはもちろんのこと、クエルナバカと同じような地方都市プエブラや
サン・ミゲル・デ・アジェンデ、グアナファトなどには、小規模でも桟敷席付きの美
しい劇場があって、羨ましく思わずにはいられません。

クエルナバカでコンサートを開けるところと言えば、アミーゴス・デ・ラ・ムジカが
使っているコルテス荘園内のオーディトリオ(元は、サトウキビの倉庫であった)や、
セントロのオカンポ劇場とボルダ庭園、我が家から近い所にあるテオパンソルコのオ
ーディトリオ、また、大学の施設の劇場もセントロにひとつ、遠い大学構内にひとつ
あります。今回のコンサート会場としての条件は、セントロにあって誰でもよく知っ
ている場所で雰囲気が良いこと、入場料が安い事、会場にピアノがあること、150
人程度の収容でこじんまりしていること、会場を無料で提供してくれること、音響や
照明などが整っている事、宣伝などを一括して引き受けてくれる事…などでした。

唯一条件を満たしているのが、ボルダ庭園のマヌエル・ポンセの間SALA MANUEL
PONCEです。早速、責任者に会いに行く事にしました。

準備活動: 昨年11月19日、ボルダ庭園内の文化活動担当のモレーロス州文化庁
を訪ねました。文化庁の芸術促進・宣伝部門の副部長であるへスス・ペレド氏は自身
もギタリストで、数年前のクエルナバカ国際ギター・フェスティバルに出演した日本
人ギタリスト山下氏の演奏に今も感激していて、(彼の演奏は難解な現代音楽で、一
般にはあまり評判が良くなかったのですが…)、日本人のグループの出演をお願いし
たら、喜んで日程を空けてくれました。

この時、グループ・ストウが興行ビザを持たず、観光ビザで入国するので、ギャラの
支払などの問題がありました。当方はギャラを要求するつもりはなかったのですが、
文化庁側は支払いとそれに対する領収証の発行など、書類を整えないといけなかった
らしいのです。「らしい」と言うのは、各方面に相談したのですが解決できず、文化
庁にゲタを預けたら、「何とかなるでしょう」と言われ、問題自体が消失してしまっ
たのです。何とかなるのがメキシコのいいところです。

12月10日に、送られてきた音楽家たちのプロフィールの翻訳文、写真、仮のプロ
グラム、ピアニストの森本浩章氏が2001年に録音したショパン・アルバム“PROLOGUE”
のCDなど資料を届けました。これらを元に記者発表がなされ、ポスターも作成され、
コンサート直前まで、何度もラジオでもコンサートが宣伝されました。

年が明けて1月18日、文化庁が毎月作成する月間文化スケジュールが完成し、受け
取りに行きました。この月間スケジュールは非常に大判のもので、州内の様々な施設
に貼り出されますが、私達は一部をセントロの有名な写真屋サンFOTO MAYUMIの店頭
に貼らせてもらいました。一番、目立つところにグループ・ストウの写真がドンと載
っています。大判のものではなく、人々に配る用のプログラムもあるのですが、こち
らにも表紙に写真が…。

2月12日、二転三転したプログラムの最終版ができ、おお慌てで届けに行きました。
前の週に「まだ変更があるので、プログラムを印刷しないで待ってください」と断っ
ておいたにもかかわらず、既に出来ており、これは破棄して新しいプログラムを再び
印刷してもらいました。メキシコ人は直前にならないと動かないというのは、全ての
ケースで当てはまるわけではなく、文化庁の宣伝部は仕事が速いようです。

音楽家達の到着と紹介: さて、グループ・ストウ一行は、2月20日5時半着の
JALの直行便で到着、バスでクエルナバカに直行、ホテル泊と民宿泊の二手に分か
れて、メキシコ最初の夜を過ごしました。

最終メンバーは、須藤あつ子さん(アツコ・ミュージック・アカデミーの校長先生で、
ピアノだけでなく様々なキーボード奏者)、須藤清一氏(サキソフォン奏者、本業は
美容師)、森本浩章氏(ピアニスト、アツコ・ミュージック・アカデミーの先生)、
須藤澄恵さん(フルート奏者で、この3月に高校卒業)、黒澤祐子さん(ピアニスト、
ストウ・ミュージック・アカデミーの生徒でしたが、この春高校卒業して先生に!)、
須藤美友ちゃん(小学校2年生、祭り囃子の太鼓奏者、ピアニスト、歌手と今回は大
活躍)の総勢6名。翌日はもうコンサート本番ですから、この夜だけで時差ぼけや日
本から引きずって来た(?)疲れを取り、クエルナバカの高度にも体を調節してもら
わなければなりません。 

2月21日、午後1時からボルダ庭園内のレストランで昼食。コンサート前にしては、
皆、時差ぼけの様子も無く、食欲たっぷり。そこへ文化庁の秘書のエリザベス嬢が来
て、コンサートの最終打ち合わせをしました。3時から練習ができるよう手配してあ
ったので、昼食後、マヌエル・ポンセの間に移動。早速、森本氏のピアノから練習が
始まります。

マヌエル・ポンセの間には2台のピアノがあります。2台とも年代ものですが、それ
でもSTEINWAY、メキシコのピアニストの間では絶大な人気のメーカーです。ただし、
移動しやすい様に、ピアノの脚先がはずされて、よく転がる車輪が付けられていたの
は、ちょっと無残な姿でした。第一、弾いていると、ピアノが押されて動いてしまう!

コンサート開演: 夜7時開演。6時には、もぎりのミカエラさんが来て最終の打合
せをします。森本氏がショパンのCDを沢山持って来てくれたし、ラジオ番組でCD
プレゼントを発表してあるので、私もミカエラさんと一緒に、CDの袋をもって人々
の到来を待ちます。人々の到着が遅いのでイライラしましたが、それでも7時15分
には、だいたい席が埋まってきてコンサートを開始しました。終了時にはほぼ満席と
なっていました。
 150ほどの人達が開演を待っています 
(クリックで拡大)
プログラム: まず、1部として、ピアニストの森本浩章氏が「幻想曲さくらさくら」
を演奏して開幕、須藤清一氏のスペイン語による皆さんへの挨拶に続いて、引き続き、
森本氏が、得意のショパンの曲を4曲続けて演奏、次に2部として、須藤あつ子さん
のピアノ伴奏で、須藤清一氏が、さくら(NHKテレビ小説主題曲)、「椰子の実」、
ピアソラの「ナイトクラブ1960」のジャズ曲をサックスで演奏。その後、フルー
トの須藤澄恵さんが、きりっと凛々しい着物姿で、「千と千尋の神隠し」のテーマ曲や、
「さくら、さくら」などの日本の曲を澄んだ音色を響かせ(あつ子さんのピアノ伴奏)、
最後に、清一氏と須藤美友さんが祭り姿で、笛と太鼓の祭り囃子を元気よい掛け声と
ともに披露しました。 
ショパンを弾く森本氏 サックスの清一氏とピアノのあつ子さん フルートの澄恵さん 笛と太鼓の祭り囃子
(クリックで拡大)
少々、統一を欠いたプログラム構成でしたが、観客は、迫力と凄みがあって且つ繊細
な森本氏のピアノ演奏と、日本の文化の楽しさとの両方に触れて、大変満足そう。拍
手が鳴り止まず、アンコールには、再び森本氏が登場して、ショパンの「英雄ポロネ
ーズ」を弾いたあと、全員の合唱で「シェリトリンド」で締めくくりました。

知らなかったのですが、あつ子さんによると、「シエリトリンド」は日本の小学校の
音楽の教科書に載っていて、小学生はみなこの歌を日本語で習うそうです。原曲は、
情熱的で奔放なメキシコ女性を歌った歌ですから、小学校の教科書に載っているのは
ミス・マッチで面白い発想なので、歌の前にみなさんに説明しました。自国の歌が遠
い日本で愛されていることを喜んでくれ、ミユちゃんが日本語で一番を歌うと、二番
からは皆がスペイン語で唱和して、思ったとおりの盛り上がりでした。

このようにして、コンサートは無事に終了し、観客も満足の笑顔で挨拶して、音楽家
たちにサインを頼んだり、ちょっとした交流もありました。遅れてきたくせに、後か
らCDを貰いに来た人もいましたが、笑顔でプレゼントすることができました。
盛大なコンサートが終って、記念撮影
(クリックで拡大)
コンサートの翌週、木曜日には、地元紙EL REGIONAL DEL SUR紙にコンサートの記
事が大きく掲載されました。「快い驚き、日本の音楽」と題する記事で、「先週金曜日
のグループ・ストウのコンサートは、日本とメキシコの文化の相違による溝は非常に
深いのにも関わらず、観客と演奏者がひとつの感情で結ばれた」と手放しで賞賛して
いました。

老人ホームコンサート: ついでながら、グループ・ストウの一行はコンサートの翌
日の土曜日、老人ホームでも慰問コンサートを行いました。こちらはリラックスして、
本物のコンサートには出演を見合わせたピアニストの黒澤祐子さんも、老人ホームで
何百年(?)飾りものになっていた年代物のガタピシのピアノを華麗に弾きこなし、
メキシコ・デビューを果たしました。
落ち着いた演奏でお年寄達もじっくり聴いていました、ブラボ〜〜
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音楽もそうですが、特に老人たちに喜ばれたのが、ミユちゃんが1人1人に作ってく
れた折りヅルです。尾をつまんで動かすとひらひらと羽ばたくツルに老人たちの目が
ギンギラギンになり、みなの笑顔が子供に返ったようでした。

後日、文化庁にお礼の挨拶に行き、全てのイベントが終了しました。あとは、遊んで、
飲んで、楽しむだけ…。仕事をさっさと済ませてしまったので、観光、買物、食事、
テキーラと、存分にメキシコを堪能してグループ・ストウは日本に帰って行きました。
お疲れ様でした、お元気で〜(^o^)\(^^ ) アディオ〜ス(^-^)/~~
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バックナンバー
#2 メキシコの住宅事情
#3 警官への賄賂
#4 音楽友の会 10周年コンサート裏話
#5 ノーチェ ブエナ物語
#5 クリスマス行事
#6 年末年始の休みとグアダラハラ家族旅行
#6 トレス レイエス
#7 ビザの種類と更新
#8 モナルカ蝶の聖域ツアー
#9 ガールスカウト奈良支部
#10 チャイコフスキーのバレー「白鳥の湖」
#11 メキシコ縦断アメリカ転々旅行
#12 メキシコの飲み物
#13 テキーラ
#14 花が咲いて実がなった(街で見る果物)
#15 アステカ・カレンダリオの謎
#16 2000年・年越し祭り
#17 9月16日 独立記念日
#18 特別ゲスト、中村さつきさん
#19 DIA DE MUERTOS 死者の日
#20 葛飾諏訪太鼓メキシコ滞在記 (リーダー水澤啓一 記)
#21クエルナバカの年末年始
#22 メキシコ病院事情
#23 今も懐かし、街頭の物売りたち
#24 養老院YALENTAY慰問コンサート
#25 メキシコの温泉も気持ちいい(*^o^*)
#26 ノパール NOPALで健康に!
#27 メキシコの選挙
#28 ロマンチック・アシエンダ(荘園)街道巡りの散策
#29メキシコ、愛国心のしるし
#30メキシコの結婚式 − 二つの体験談
#31メキシコ原産トウモロコシ MAIZ の秘密
#32 6年に一度の大統領就任式
#33 メキシコのピニャータ
#34 火山ポポカテペトルと山麓の世界遺産−修道院群
#35 MARCHA ZAPATISTA サパティスタの行進
#36 メキシコの飲み物 第二弾 − メキシコの伝統的な飲み物
#37メキシコの飲み物 第3弾 − メキシコのアルコール飲料
#38 QUINCENERA -XV歳の社交界デビュー・フィエスタ
#39 メキシコのお金
#40「民宿かず」お客さま第一号記念
#41 メキシコの祝祭日・記念日
#42メキシコ・シティから独立記念日の実況中継
#43 RUTA DE ZAPATA 革命児サパタを辿る道
#44メキシコのクリスマスと「NACIMIENTO」飾り
#45メキシコの伝統菓子
#46メキシコの宝くじLOTERIA
#47藤枝先生のメキシコ体験談
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#49メヒカン・フルーツの全て(第一部)
#50メキシコのルチャ・リブレ−高橋千歳さんの特別報告
#51  PAPA JUAN PABLO II メキシコ来訪メモ
#52 メキシコ・シティの地下鉄 METRO EN MEXICO
#53  TEMAZCALの謎
#54  メキシコ原産の野菜たち
#55  唐辛子CHILE
#56  命の木 EL ARBOL DE LA VIDA
#57  伝統玩具JUGUETES TRADICIONALES 
#58  太陽の味フルーツ盛り合わせ


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