
![]() -呑気家族のメキシコ移住計画- |
出版:近代文芸社 石田 かり・著 |
「クエルナバカの碧い空」第60号 #6 本の続編 − 最近読んだ2冊の本と戦争、おまけの話:リコーダーイラク戦争が始まってしまいました。先月号のこのページのおまけの話で「メキシコ の苦悩」を書いたら、戦争に対する賛否両論、反対署名運動のメールなど、いろいろ 寄せられ、どれも興味深く読みました。メキシコが戦争反対しているので、スペイン 語学校でもキャンセルが続き、アメリカ人観光客が減って、アメリカとの仲も悪くな って経済報復も始まっています。戦争について深く考えざるを得ません。 ボルダ庭園に出現した巨大はりぼて人形(左フセイン、右ブッシュ) 3月中旬のお客様を最後に、我が民宿を訪ねる人がばったりと無くなり、閑古鳥の鳴 く観光都市クエルナバカで、できることと言えばやっぱり読書です。時間だけは豊富 にありますから、じっくり読みました。 INGRID BETANCOURTはコロンビアの政治腐敗と闘う女性で、ついには大統領に立候補 する決意します。タイトルは「LA RABIA EN EL CORAZON(心に怒りを」)。もともと フランス語で書かれてフランスで出版された自伝で、ようやく2001年の終わりにスペ イン語になりました。大統領選挙運動中にゲリラ組織に誘拐され、現在も生死不明で す。日本語タイトル「それでもわたしは腐敗と闘う」イングリッド・ベタンクール著。 メキシコにいると、中南米の国々での出来事が多く報道され、興味も深まります。こ の本を読んで考えさせられるのは、コロンビアという国に限らず、一国のリーダーの 立場にいる人がどういう人物であるかによって、国の運命が大きく左右され、それを 改革するのがいかに難しいかということ。去年の選挙で新大統領となったウリベ氏が、 現在、真剣にゲリラ組織と戦っていますが、長年、政治家達と深くかかわって力をつ けてきたゲリラ組織は、頻繁に誘拐やテロ行為を繰り返し、人々は恐怖に陥り、やや もするとゲリラと闘う気持ちが萎えてしまいそうです。 アメリカがフセイン大統領をやっつけるために一般市民に犠牲を強いているのと同じ ことを、コロンビアのテロ組織がやっていて、ウリベ大統領を失脚させるために、一 般市民を巻き添えにしたテロ行為をしています。イングリッド・ベタンクールは本の 中で、コロンビアの3大テロ組織のボス達にインタビューしているのですが、誘拐し たり、テロ事件を起こすには、彼らなりの理屈があるようで、ブッシュ大統領のイラ クを解放するためという理屈とダブって聞えてしまいます。 さて、1冊目の本を読み終えて、偶然スーパーマーケットの書籍売り場で見つけたの は、ピューリッツァー賞作家JOHN HERSEYの「HIROSHIMA」です。これは、1946年 (原爆投下の翌年)にNEW YORKERに発表され、さらに、1985年に最終章が付け加 えられて出版されました。私が読んだのは、2002年8月に出たスペイン語版です。 日本語版が出ているかどうかはわかりませんが、英語版は日本でも買えます。 この作家の特徴らしいのですが、細々とした日常生活を緻密に描写したもので、戦争 を主題にしていはいません。世界で初めて原子爆弾が広島に投下された時に、中心地 から1.5キロ付近にいた一般市民の何人か(主婦、医者、聖職者、ドイツ人神父など) の行動を、被爆時から出版時までのその後を非常に事細かに記録したものです。 毎日、戦争のニュースを見ていると、多くの負傷者の映像が映し出され、この本を読 んだ直後だったので、被爆者と重なって見えました。多くの誤爆により、市場や病院、 一般住宅地や、イラクだけでなく隣国までも巻き添えになり、その都度、全身やけど の人、手や足を切断した人、死者の周りで泣き叫ぶ人が映し出され、その上、薬品や 麻酔も殆ど無い状態だと言うのですから、私達は戦争の悲惨さをイヤでも思い知らさ れるのです。 もっとも、メキシコでもABC、NBC、CBSなどのアメリカ3大ネットが見れますが、 78%が戦争に賛成している国民の感情を害するような映像は、アメリカでは流され ないそうです。CNNの報道でも、英語版とスペイン語版(中南米向きのCNN放送)で は、画像がかなり異なります。「アメリカの作戦が失敗した」と発言したピーター・ アーネット記者が解雇されたのも、アメリカにとって不愉快な画像や不都合な発言は 許さないという政府の方針のようです。 またテレビニュースには、KAMIKAZEという言葉がでてきます。メキシコ人は、この KAMIKAZEと言う言葉を自爆テロと同義に使っています。アメリカが現在イラクやイス ラム過激派のテロを恐れて戦争を始め、イラクを爆撃している状況は、丁度、日本の 軍隊が真珠湾を奇襲した時に、アメリカが原子爆弾の投下を決めたのとダブって見え ます。テロに対する国民の恐怖心を利用した作戦です。「イラクを解放するために戦 争を始める」は、イコール「戦争を終わらせる為に原爆を落とす」。たった58年前 のことです。イラク戦争に賛成の人は、原爆投下も正しかったと思うのでしょうか。 不思議なことに、日本では当時も今もそれほど強烈なアメリカ嫌いはない様に見えま す。この本でも、被爆した人々の「しかたがない」と言う言葉が頻繁に出てきます。 でも世界各地のイスラム教徒が、今後、「しかたがない」とおとなしく黙っていると は思えません。 アメリカは自国を大国と思い、世界の警察を自称していますが、誰がそれを望んでい るでしょうか?日本では原爆を、ベトナム戦争では枯葉剤を使い大きな被害と後遺症 をもたらしました。国連NACIONES UNIDASがあり、一国の判断ではなく、世界の知恵 を集めて判断し、それによって行動して平和的に解決しようとしている時に、イラク 市民を攻撃する事は、犯罪者を裁判の途中に裁判所から引きずり出してリンチにかけ るようなもの。決して大国のすることではありません。 しかも、アメリカ軍の兵士の70%は黒人とヒスパニック系の人々で、ヒスパニック 系の40%はメキシコ人だそうです。メキシコ人兵士の死者や捕虜も出ています。ヒ スパニック系の人々が兵士になるのは、軍に登録するとアメリカ国籍がもらえるから、 しかも給料付き。先日も、ニュースでスペイン語による、ヒスパニック系の人に対す る軍隊の加入勧誘コマーシャルが流れましたが、戦争がしたくて兵隊になった人ばか りが軍人というわけではありません。実際に戦争をしているのは大統領でも、戦争に 賛成しながら快適な家に住むリッチな白人でもなく、職にあぶれた黒人やアメリカ国 籍が欲しい不法移民のヒスパニック系の人々が多いのです。 先日、姉に教えてもらって、池澤夏樹氏の「イラクの小さな橋を渡って」(写真・本 橋成一)というサイトを見ました(日本語、英語、フランス語、ドイツ語で読めます)。 戦争の直前にイラクに入った作家の池澤氏の現地リポートで、そこにいるのは、私達 が知る好戦的な男達ではなく、外国人である中澤氏に対して好奇心丸出しで近づいて くる、陽気で親切、親しみの持てるごく普通の良き人々です。 技術の進んだ世の中で、一般市民を巻き添えにしない戦争はないものでしょうか?膨 大な金の力と武力を持っているからといって、爆弾を大量に落とすだけというのはい かにも知恵も能のない話です。しかも莫大な開発費をかけた武器は誤爆が多く、フセ インに当たる前にどれだけの市民に当たったことか。まして、チグリス、ユーフラテ スという3大文明発祥地のひとつであるイラクには、重要な遺跡や建築物が数多く存 在し、それらがどうなっているかも心配されます。 特に、アメリカは、何千億ドルという戦費をかけられる国です。アメリカのCIA、 イギリスのM5など、情報組織も整っています。私も愛読したフレデリック・フォー サイスやジョン・ル・カレなどのスパイ小説も盛んだし、「スパイ大作戦」も昔は欠 かさず見ていたのに・・・。もっと効果的にフセインだけを世界の法廷に引き出すこ とはできなかったものか。戦争が終わっても、テロが心配で旅行もできない世の中に はなってほしくないものです。 おまけの話: リコーダー コーラス・グループが結婚式のミサに参加しました。3月29日土曜日、カテドラル のテルセラ・オルデン教会での結婚式を挙げるカップルとの契約です。依頼されて、 歌うのですから、立派な仕事で、もちろんギャラも手に入れました。 それはさておき、最近は絵も売れないし(外国人の旅行者が減ったので、ボルダ庭園 も森閑としている)、歌も覚えてしまって、本を読む以外にあまりすることがないの で、子供が残していったリコーダー(たて笛)を覚えようと思いつきました。子供の 教科書を広げてドレミから練習し(意外と指使いが難しい)、やっとエーデルワイス がなんとか吹けるようになったのだけれど、困ったのは、練習を始めると、タマが 「ウルサイから止めて!」とミャァミャア言いながら大急ぎで駆け付けてくること。 タマは裏庭にいるし、トイレに入って戸を閉めて、部屋の戸も二重に閉めて吹いても、 どうして聞えるのか、始めて数秒後には戸の外でミャァミャアと中止を要求する声が 聞こえるのです。ストウ・ファミリーの澄恵さんが吹いたフルートに憧れて、リコー ダーを吹き始めたのだけれど、タマからすると、澄恵さんのフルートとは似ても似つ かぬ雑音なのかも知れません。 表紙に戻る 感想箱へ進む バックナンバー#1 「運転しよう」から:何でもありのメキシコ式運転 #2 「猫」から:猫の獲物はどうする? #3 「免許証」から:ここでは買うんです #4 「仕事をしよう」から:押し掛け助手は大活躍 #5 「仕事をしよう」から:コンサート後のご馳走 #6 「仕事をしよう」から:黒沼邸でのミニコンサート #7 「スペイン語」から:無口な日本人 #8 「免許証から」から:車の所有税 #9 「クエルナバカ」から:蜂鳥 #10 「猫 パートII」から:捨て猫アナスタシア #11 「猫穴」から:アメリカ・ドライブ・転々旅行 #12 「女性」から:老化現象と更年期障害 #13 猪俣猛作曲「クエルナバカの碧い空」 #14 日本へ一時帰国しました/その他 #15 運転したら事故はつきもの #16 私たちの夏休み日記 #17 最近の感動:みんな生きている! #18 ホームページ1周年記念 #19 仕事人「かり」 #20「葛飾諏訪太鼓」の日々 #21 クエルナバカから謹賀新年 #22 薬の話 #23 社交サロンの話 #24 夏時間、ク日比較アンケート #25 母は強し #26 我が家のガーデニング #27 選挙裏話と日ク比較 #28 国際ピアノ・コンクール #29黒沼ユリ子さん邸CASA DE VIOLIN増築祝い−ペット・ロス症候群 #30 2周年記念・シドニーオリンピック・おまけ「スキャンダル」 #31 我が家に棲みつく魑魅魍魎、おまけの話「無料電話」 #32 私達のSEXENIO、おまけの話「歌のクラス」 #33「CREA」取材のコーディネータ初仕事、おまけの話 #34「日本週間」、おまけの話「コーディネータ、プロ宣言」 #35 ニューヨークの白い空、おまけの話「夏時間」 #36 巣立ちの夏 、おまけの話「民宿 かず」 #37悲しい話、おまけ:雑誌TITLE #38健康に自信がありますか?;おまけの話:TELECABLE INTERNET #39 コンサート・デビュー;おまけの話:テレビ番組の取材 #40 夏休み病気特集第二弾;おまけの話:テレビ番組の放送日程 #41 我が家の独立記念日、おまけの話:アメリカ・テロ事件 #42 続編:独立記念日、おまけの話:テロ事件のメキシコの反応 #43 犬を買いませんか? おまけの話:イダルゴ州の温泉 #44 日本メキシコ学院リセオで講演;おまけの話:2001年総括 #45 謹賀新年、 おまけの話:子供達の里帰り #46 ベラクルス珍道中: おまけの話: 月刊誌NOVARK #47 女性についての考察: おまけの話:日本一時帰国のお知らせ #48 一時帰国報告: おまけの話: JAL悟空格安チケット #49 「清流」とサッカーの話: おまけの話: かずの写真館 #50 7年半目の情緒不安定: おまけの話: 癒しのピアノ館 #51 ホーム・コンサート決行;おまけの話:帰ってきた子供達 #52 老人ホーム慰問コンサート; おまけの話:パパ訪問 #53 タマがうちにやって来た。おまけの話:慰問コンサート #54 私の公園デビュー、おまけの話: キャデラック売ります。 #55 売れた! おまけの話:今年一番長い夜 #56 タイ旅行報告、おまけの話:クリスマス・コンサート #57 NY息子救出作戦、おまけの話: レコーディングとラジオ番組 #58 タマ、おまけの話:ラジオ番組 #59 薬害?それともアレルギー、おまけの話:メキシコの苦悩 |