「クエルナバカの碧い空」第60号
#4 トピックス − 聖週間SEMANA SANTAの研究
聖週間は、グアダルーペの祭りに次いで、もっともメキシコ人が祝う宗教行事です。
イエス・キリストが十字架にかけられ処刑され、後に復活する事を祝ったもので、多
くの人がカトリックの国だけあって、教会のミサは連日いっぱいの人を集めて行われ
ます。クエルナバカのように外国人が多く住み、都会化してしまった場所では、あま
り伝統的な行事は見られませんが、地方には十字架を背負うキリストの宗教行列や野
外劇など地方独特の行事があります。

会社は聖木曜日から復活の日曜日まで休みとなり、学校は翌週も含めて2週間の春休
みで、メキシコでは最大の休暇シーズン、特に海岸はどこもいっぱいの人になります。
クエルナバカもメキシコ・シティの別荘族が大挙して押し寄せ、日によっては我がコ
ンドミニオの庭が幼稚園やディスコと化することもあります。今年は、休暇シーズン
直前になって、アカプルコやウアトゥルコの海水汚染情報が流れるなど、戦争やウイ
ルスだけでなく、休暇に水をさす出来事が多発しているので、私達はじっくりとクエ
ルナバカで聖週間の日々を観察しながら過ごす事にしました。

そこで、聖書の話など、なんとなく知っているようで全然知らないこの聖週間につい
て勉強してみました。キリスト教の国ならどこも、例えばアメリカのようにイースタ
ー・ホリデイを祝うのでしょうが、他の国ではどうでしょうか?国によっては、キリ
スト役の人が十字架に磔にされる時、本当に手の平に釘を打ちつける国もあると聞い
たことがありますが、本当でしょうか。噂では、メキシコのイスタパラパでも、実際
に手に孔をあけて釘で十字架に付けるそうです。宗教は怖い!

聖週間は、四旬節CUARESMAの中の、キリストが復活する前の一週間のことを言い、
「枝の主日」DOMINGO DE RAMOSから始まります。四旬節は、復活祭の前の40日
間を言い、灰の水曜日MIERCOLES DE CENIZAから始まり、休日ではありませんが、
セマーナ・サンタの教会の一連のミサはこの水曜日に始まります。

聖週間は、毎年、3月下旬から4月にかけてあるというだけで、日にちは年によって
変わります。それは、復活祭が、春分の日EQUINOCCIO DE PRIMAVERAの3月21日以
降の最初の満月のあとの日曜日と決められているからで、今年の「枝の主日」は4月
13日でした。

灰の水曜日は、日ごろの悔いを改める日とされており、心身を清めるために、これか
ら聖週間が終わるまで肉を食さない、あるいは断食する人もいるそうです。断食とい
っても、1日一回はきちんと食べるそうで、また肉は食べなくても魚は食べるとか、
それほど厳しいものではないようです。友人のルルデスは、健康のため、本当に4日
間断食するそうで、水とパイナップル・ジュース以外は飲まないそうです。

4月13日、日曜日の「枝の主日」DOMINGO DE RAMOSは聖週間の初日で、イエス・キ
リストがロバに乗ってエルサレムに入った日、ここで多くの奇跡を行います。これか
ら2週間、学校は休みになり、教会の近くで椰子の枝葉を編んで十字架やキリスト像
などを作って売る人が沢山でて、人々はこれを買って教会でのミサに参加し、その後
魔除けとして家の入り口などに掛けておくそうです。聖書に出てくる「枝」はパルマ
スの枝ではなく、オリーブの枝です。この飾りはセマーナ・サンタの間に行われる宗教
行事に参加し、人々を救うために受難の道を歩くキリストに対する信仰心を表現して
いるといわれています。
教会の前で多くの人達が椰子の枝葉を編んで十字架を売っていました
(クリックで拡大)
17日、聖木曜日JUEVES SANTO。十二使徒の一人ユダは、キリストを裏切り、銀貨
30枚でキリストを祭司長に引き渡す約束をします。キリストは12人の使徒ととも
に、最後の晩餐ULTIMA CENA(SANTA CENAとも言う)にのぞみ、ユダの裏切りを指
摘します。そして夜遅くに祭司長たちによって捕らわれます。
街で売られていた、最後の晩餐
(クリックで拡大)
18日、聖金曜日VIERNES SANTOはキリストの受難の日です。キリストの奇跡を嫉妬
した祭司長や偽善者たちが、ユダの密告によりキリストを捕らえ、鞭打ち、十字架に
磔しました。キリストは「3日後に甦る」と言い残して、午後3時に死にます。この
日は断食の日ですが、メインの食事はします。肉は食べないけれど、クリスマスにも
食べるバカラオ(タラの一種)という魚の料理を食べる習慣があるようです。

19日、聖土曜日SABADO SANTO(または栄光の土曜日SABADO DE GLORIA)はキリス
ト埋葬の日であり、沈黙の一日でもあります。キリストが神の元に戻ったことを祝う
日であり、復活を待つ日でもあります。キリスト教にとっては、一年で一番需要な日
なのです。何故かこの日、地方によっては、子供達が通りかかる人々に水をぶっかけ
るのが習慣になっているそうで、歩いていてバケツの水を浴びせられても怒ってはい
けません。夜、人々は、大きなローソクに明かりを灯して、キリストの復活を待ちま
す。復活前夜VIGILIA PASCUALといい、教会では大々的なミサがあります。

20日、復活の日曜日DOMINGO DE RESURECCIONは歓喜の日です。聖書を読むと、キ
リストは安息日の翌朝つまり月曜日の朝早くに甦ったとあります。つまり、死の3日
後です。こうして古い世界は死に、新たな世界に生まれ変わりました。

以上が聖週間の日程とその意味合いです。教会のコーラス・グループの一員である私
は、「枝の主日」DOMINGO DE RAMOSの朝10時からミサに出席してきました。また、
聖土曜日SABADO SANTOには、夜8時から長々3時間続くミサにも出席の予定です。
この土曜日には、ミサの前に、ユダの焼き討ちもあると聞きました。

聖週間には宗教行列PROCESIONを始め、各地で様々な行事が行われます。特に、ゲレ
ロ州のタスコ、ミチワカン州のパッツクアロ、チアパス州のサン・クリストバル・デ・
ラス・カサス、メキシコ市郊外のイスタパラパやオアハカ州のものが独特で有名です。
聖金曜日には、女性が花やローソク、香炉などを持って、街中のキリスト像やマリア
像に捧げます。

その他にも、例えば、チワワ州のクサラレとノロガチでは、原住民のタラウマラ族が
兵士と偽善者であるパリサイ人の闘いの踊りを踊りますが、全身に色彩を施し、古く
からの音楽に乗って踊るさまは、少し怖いほど原住民的です。また、メキシコ州のテ
クスカルヤカックで行われるキリスト磔をめぐる野外劇も有名だし、サン・ルイス・
ポトシの沈黙の行列など、この時期、各地でキリストが十字架を背負って歩く様子が、
テレビのニュース番組で見られます。

実を言えば、聖週間は、無宗教の私にとっては休暇ということしか殆ど意味を持ちま
せん。イエス・キリストはただの西洋人であって、どうしてメキシコの原住民がキリ
ストをこれほど信心するようになったのか非常に不思議な気持ちがします。庭で同じ
コンドミニオのハイメじいさんと話していたら、彼はユダヤ人なのですが、キリスト
自身がユダヤ人であり、ユダヤの王として生まれたと言われているのですから、ヨー
ロッパでユダヤ人迫害が起こったのはキリスト教徒のすることとは言えないと言うの
で、ああ、モットモダと思ったものです。

日本でもよくありましたが、呼び鈴が鳴るので出てみると、「聖書を一緒に読みませ
んか」とか、「神の言葉を聞いて将来のことを考えましょう」とか、わけのわからな
い宗教勧誘者がクエルナバカでもちょくちょく来ます。「仏教徒BUDISTAだから興味
ありません」と答えることにしているのですが、本当に宗教というのは不思議なもの
です。戦場でもミサが開かれたというニュースを見ると、ますます不可解。

でも折角の聖週間、ちょっと聖書も読み直し、隣人たちの宗教感も聞いてみようと思
います。


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バックナンバー
#2 メキシコの住宅事情
#3 警官への賄賂
#4 音楽友の会 10周年コンサート裏話
#5 ノーチェ ブエナ物語
#5 クリスマス行事
#6 年末年始の休みとグアダラハラ家族旅行
#6 トレス レイエス
#7 ビザの種類と更新
#8 モナルカ蝶の聖域ツアー
#9 ガールスカウト奈良支部
#10 チャイコフスキーのバレー「白鳥の湖」
#11 メキシコ縦断アメリカ転々旅行
#12 メキシコの飲み物
#13 テキーラ
#14 花が咲いて実がなった(街で見る果物)
#15 アステカ・カレンダリオの謎
#16 2000年・年越し祭り
#17 9月16日 独立記念日
#18 特別ゲスト、中村さつきさん
#19 DIA DE MUERTOS 死者の日
#20 葛飾諏訪太鼓メキシコ滞在記 (リーダー水澤啓一 記)
#21クエルナバカの年末年始
#22 メキシコ病院事情
#23 今も懐かし、街頭の物売りたち
#24 養老院YALENTAY慰問コンサート
#25 メキシコの温泉も気持ちいい(*^o^*)
#26 ノパール NOPALで健康に!
#27 メキシコの選挙
#28 ロマンチック・アシエンダ(荘園)街道巡りの散策
#29メキシコ、愛国心のしるし
#30メキシコの結婚式 − 二つの体験談
#31メキシコ原産トウモロコシ MAIZ の秘密
#32 6年に一度の大統領就任式
#33 メキシコのピニャータ
#34 火山ポポカテペトルと山麓の世界遺産−修道院群
#35 MARCHA ZAPATISTA サパティスタの行進
#36 メキシコの飲み物 第二弾 − メキシコの伝統的な飲み物
#37メキシコの飲み物 第3弾 − メキシコのアルコール飲料
#38 QUINCENERA -XV歳の社交界デビュー・フィエスタ
#39 メキシコのお金
#40「民宿かず」お客さま第一号記念
#41 メキシコの祝祭日・記念日
#42メキシコ・シティから独立記念日の実況中継
#43 RUTA DE ZAPATA 革命児サパタを辿る道
#44メキシコのクリスマスと「NACIMIENTO」飾り
#45メキシコの伝統菓子
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#50メキシコのルチャ・リブレ−高橋千歳さんの特別報告
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#53  TEMAZCALの謎
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#57  伝統玩具JUGUETES TRADICIONALES 
#58  太陽の味フルーツ盛り合わせ
#59  グループ・ストウ クエルナバカ・コンサート顛末記


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