「クエルナバカの碧い空」第63号
#4 トピックス − ファースト・レディPRIMERA DAMA 
7月2日、3年前のこの日に70年余り続いたPRI政権をやぶり、大統領選挙に勝
利したことを記念して、フォックス大統領とマルタ夫人はメキシコ・シティの大統領
官邸LOS PINOSでお祝いしました。大統領は、この3年間の政治的成果について、ミ
スはひとつもなく、全て順調であり、大満足だと宣言しました。もっとも、4日後の
6日に行われた地方選挙で、与党PAN(PARTIDO ACCIONNACIOL)は、PRI(PARTIDO
REVOLUCIONARIO INSTITUCIONAL)に大敗を喫し、大統領の言葉に反し、国民は全然満
足していないことが明らかとなったのですが、その話はまた別として・・・。

この7月2日、大統領夫妻には、更にふたつのお祝い事がありました。大統領本人の
61回目の誕生日であったこと、そして、2001年のこの日に二人が結婚してから2年
目の結婚記念日。この何重にも目出度い日に、大統領から金のブレスレットが夫人に
プレゼントされました。そしてマルタ夫人から大統領に贈られたのは・・・。メキシ
コ人アーチストJOCELYNさんの「抱擁」と題する彫刻で、「Siempre juntos. Te amo
(いつも一緒に。愛しているわ)」と言うマルタ夫人の言葉が刻まれていました。

これはメキシコ人には常套句かもしれません。でも「抱擁」という彫刻といい、この
言葉といい、大抵の日本人には赤面モノ。それでなくても派手な美貌と目立つ活躍ぶ
りが何かと批判の的になるマルタ夫人とは、どんな人物か。北米の元ファースト・レ
ディのヒラリーさんも活動家ですが、彼女のようないかにも政治家然とした落ちつき
ぶりと一味異なったファースト・レディPRIMERA DAMAの評判をみてみました。
最近出版の「LA JEFA」の表紙のマルタ夫人                   
   後ろ姿はフォックス大統領       雑誌の話題にもよく出てきます
(クリックで拡大)
マルタさんSRA. MARTA SAHAGUN DE FOXは1953年4月10日生まれの現在50才、
大学の教授などを経て政治家に変身し、1994年にはグアナファト州セラヤ市の市長
選に立候補しました。選挙には負けましたが、それが縁で当時のグアナファト州知事
であったフォックス氏に招かれて、PANの広報を担当するようになります。

おしゃべりなメキシコ人の中でも特に爽やかな弁舌家であるマルタ夫人は、彼女が担
当した州政府のインターネット・サイトが賞を受けるなど、その方面での活躍が目立
ち、フォックス氏が出馬した大統領選のキャンペーンの報道責任者JEFA DE PRENSA 
DE LA CAMPANAとして、またフォックス氏が大統領に就任してからは報道官(スポー
クスマン)VOCERA Y COORDINADORA GENERAL DE COMUNICACION DE LA PRESIDENSIA 
DE LA REPUBLICAとして働きました。しかし、2001年6月30日をもってスポークス
マンを辞任、直後の7月2日にフォックス氏と結婚したのでした。

当時、最も気になる独身男と言われた長身でハンサム、カーボーイVAQUERO姿が
よく似合う大統領のフォックス氏とマルタさんの結婚は大きな話題とはなったものの、
二人は個人的な話であるとして、ほとんどコメントしませんでした。実は、マルタさ
んもフォックス氏も離婚経験者。カトリックの国メキシコでは、結婚する時に、教会
に対する結婚の誓いと、市役所に登録する市民としての結婚と、両方の登録をします
が、離婚を認めていないカトリックとしては、二人の離婚は成り立っておらず、従っ
て結婚も認められていないことになります。

しかし、その年の秋にヨーロッパ外遊した際にバチカン市国を訪問、ローマ法王パブ
ロII世PAPA JUAN PABLO IIが、正式な妻とは認めていないはずのマルタ夫人にも個
人的に会見した事から、このハードルも難なくクリア。会見後には、バチカン宮殿を
背景にキスを交わす二人を、カメラマンGUSTAVO BENITEZが撮影、報道されて、大変
な話題となりました。その上、この外遊の際に、あちこちの雑誌でインタビューを受
けた二人は、様々な女性雑誌に熱々ぶりが報道され、政治家らしからぬ浮き足立った
調子が批判を受けたのは当然!

さて、フォックス大統領が大統領に就任してから1年間不在だった大統領夫人の座に
就いたマルタ夫人はさっそく「VAMOS MEXICO!」という団体の会長におさまりました。
「VAMOS MEXICO(それ行けメキシコ!)」は、例えば、2001年10月21日に、メキシ
コ・シティのチャプルテペック公園内にあるお城CASTILLO DE CHAPULTEPECで、歌手
のエルトン・ジョンを招いて、ディナー・コンサートを催し、一人10万ペソを徴収、
入場した約900人のの参加者から得た売上は約一億ペソ(当時の約15億円)と言
われました。

このように、お飾りではなく、積極的に働くマルタ夫人の力もあって、集金能力は大
きいものの、既に多く存在する慈善団体の中にあって、「VAMOS MEXICO」の存在目的
が今ひとつはっきりせず、「マルタ夫人を引き立てるために作られた団体ではないか」
とか、「早くも2006年の選挙キャンペーンだ」と言う噂も流れ、さらには、大統領の
威を借りて、まるで国務大臣のように振舞っているとか、云々、うんぬん・・・様々
な批判が出ています。

しかし、彼女はそんな批判には目も向けず、同じような慈善団体であるメキシコ赤十
字の名誉会長に任命されるなど、その活動の場は広くなるばかり。例えば、前大統領
エルネスト・セディージョ氏の奥さんは、ファースト・レディでありながら社交生活
が好きではなく、ほとんど目立った活動はせず、晩餐会など公の場に出てもあまり垢
抜けなく、少ししかめっ面で不機嫌そうだったのとは、全く異なります。それ以前も、
大統領夫人で少しは活躍した人でも、DIF(DESARROLLO INTEGRAL DE LA FAMILIA-
貧しい人々や中毒患者など助けを必要とする家族を支援する組織)という国の機関で
補助的な仕事をするのみだけだったのですから、このように華々しく活躍するファ
ースト・レディはメキシコでも前代未聞なのです。 

そんな話題のマルタ夫人に関する本が今年になって2冊出版されました。ヒラリー・
クリントンさんが最近出版した自伝「LIVING  HISTORY」や、「HILLARY'S CHOICE」
(Gail Sheehy)、「HILLARY'S TURN」(Michael Tomasky)などの本が話題になったば
かりですが、メキシコでも2000年に出版された「MARTA」- LA FUERZA DEL ESPIRITU
「マルタ-精神の力」SARI BERMUDEZ著(マルタとのインタビューをまとめたもの)を
含めて、3冊の本が、本屋で平積みになっています。

今年出版された2冊は、「MARTA」RAFAEL LORET DE MOLA著(大統領夫人の役割を解
析)と「LA JEFA」OLGA WORNAT著です。特に、「LA JEFA」(日本語に直すと、上司や
長に当たる人の事)は、アルゼンチン人のウォルナトさんが、マルタ夫人の元夫にイ
ンタービューして、3人の息子や元夫のことなど、私生活を暴露して大きな話題にな
っています。

このように、すっかり時の人であるマルタ夫人ですが、どの活動も2006年の大統領
選に出馬する用意に違いないという声まであがっています(本人は否定しています)。
現に、批判がでる度にテレビ番組のインタビューなどに答えて、理路整然と、ちょ
っと可愛らしいしぐさも交えて弁解すると、全てはマルタさんの言う通りに思える
から不思議です。

一部報道によると、フォックス大統領からも、「政策について、いつも妻に相談して
いる」とか、「そろそろメキシコに女性大統領が生まれても良い頃だ」などというコ
メントが出てくる始末。その上、全国新聞紙レフォルマREFORMAが6月第1週に行っ
たアンケートによると、メキシコで最も人気の公人と言えばマルタ夫人という結果が
出て、政治家として人気の高いメキシコ市長のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブ
ラドール氏ANDRES MANUEL LOPEZ OBRADORを2位に蹴落としての堂々の人気第一位、
当の大統領も顔色なしです。

しかも、ちょっと疲れ気味にみえるフォックス大統領に対し、50才の若さで、目元
バッチリ、アイラインの濃い化粧、メキシコらしくスーツ姿などの堅い服装ではなく、
袖なしのワンピースでシャキシャキと仕事をし、時にはフォックス氏と一緒に乗馬服
姿であざやかに馬を乗りこなし、爽やかな弁舌で人々をねじ伏せる姿は、日本人の好
みからすると少しズレているような気もしないではないけれど、「わぁ、活躍してい
る」という印象が明らかです。

マルタ夫人は常々、ファースト・レディPRIMERA DAMAと呼ばれるのを嫌っています。
それは、女性に第一も、第二もないというのが理由ですが、勘ぐれば、「私は夫人と
いう立場で活動しているのではなく、一人の政治家として政治活動している」という
意味にも取れそうです。他にも多くの女性政治家が活躍するメキシコのこと。大統領
候補にたって出ると噂の女性はマルタ夫人だけでなく、2006年の大統領選挙は面白く
なりそうです。


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バックナンバー
#2 メキシコの住宅事情
#3 警官への賄賂
#4 音楽友の会 10周年コンサート裏話
#5 ノーチェ ブエナ物語
#5 クリスマス行事
#6 年末年始の休みとグアダラハラ家族旅行
#6 トレス レイエス
#7 ビザの種類と更新
#8 モナルカ蝶の聖域ツアー
#9 ガールスカウト奈良支部
#10 チャイコフスキーのバレー「白鳥の湖」
#11 メキシコ縦断アメリカ転々旅行
#12 メキシコの飲み物
#13 テキーラ
#14 花が咲いて実がなった(街で見る果物)
#15 アステカ・カレンダリオの謎
#16 2000年・年越し祭り
#17 9月16日 独立記念日
#18 特別ゲスト、中村さつきさん
#19 DIA DE MUERTOS 死者の日
#20 葛飾諏訪太鼓メキシコ滞在記 (リーダー水澤啓一 記)
#21クエルナバカの年末年始
#22 メキシコ病院事情
#23 今も懐かし、街頭の物売りたち
#24 養老院YALENTAY慰問コンサート
#25 メキシコの温泉も気持ちいい(*^o^*)
#26 ノパール NOPALで健康に!
#27 メキシコの選挙
#28 ロマンチック・アシエンダ(荘園)街道巡りの散策
#29メキシコ、愛国心のしるし
#30メキシコの結婚式 − 二つの体験談
#31メキシコ原産トウモロコシ MAIZ の秘密
#32 6年に一度の大統領就任式
#33 メキシコのピニャータ
#34 火山ポポカテペトルと山麓の世界遺産−修道院群
#35 MARCHA ZAPATISTA サパティスタの行進
#36 メキシコの飲み物 第二弾 − メキシコの伝統的な飲み物
#37メキシコの飲み物 第3弾 − メキシコのアルコール飲料
#38 QUINCENERA -XV歳の社交界デビュー・フィエスタ
#39 メキシコのお金
#40「民宿かず」お客さま第一号記念
#41 メキシコの祝祭日・記念日
#42メキシコ・シティから独立記念日の実況中継
#43 RUTA DE ZAPATA 革命児サパタを辿る道
#44メキシコのクリスマスと「NACIMIENTO」飾り
#45メキシコの伝統菓子
#46メキシコの宝くじLOTERIA
#47藤枝先生のメキシコ体験談
#48ラス・エスタカス物語HISTORIA DE LAS ESTACAS
#49メヒカン・フルーツの全て(第一部)
#50メキシコのルチャ・リブレ−高橋千歳さんの特別報告
#51  PAPA JUAN PABLO II メキシコ来訪メモ
#52 メキシコ・シティの地下鉄 METRO EN MEXICO
#53  TEMAZCALの謎
#54  メキシコ原産の野菜たち
#55  唐辛子CHILE
#56  命の木 EL ARBOL DE LA VIDA
#57  伝統玩具JUGUETES TRADICIONALES 
#58  太陽の味フルーツ盛り合わせ
#59  グループ・ストウ クエルナバカ・コンサート顛末記
#60  聖週間SEMANA SANTAの研究
#61  不満だらけメキシコの雑誌
#62  メキシコで働きたいですか?


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