「クエルナバカの碧い空」第66号
#4 トピックス − 名前に関する考察
「名は体を表わす」は真実でしょうか?クエルナバカには、オックスフォード学校
INSTITUTO OXFORDがあって、その昔、子供達が通っていましたが、イギリスのオッ
クスフォード大学とは無関係。他にもバッキンガムBUCKINGHAMやシェークスピア
SHAKESPEAREなどの大袈裟な名前がついているのは、英語との2カ国語教育を実践す
る学校を表わし、フランス語教育、ドイツ語教育の学校にはモリエールMOLIEREやス
イスSUIZOなどの名前がついて分かりやすい。通りの名前も地域によって、日本通り
CALLE JAPONなどの国名がついていたり、我が家の周りの地域には、月LUNA、金星
VENUS、天王星URANOや海王星NEPUTUNOなど、天体の名前が並んでいます。
メキシコのオックスフォードは保育園から高校まで
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同じ名前が多いといわれるメキシコですが、伝統的な名前、フランス系、ドイツ系、
さらにはアジア系の名前まで色々で、日本のように流行の名前はないようですが、若
い両親が斬新な名前を求めているのがわかります。PIZZA HUTならぬPIZZA HITがあ
ったり、名称に関しては面白いエピソードがいっぱいありますが、今回は主に人名に
関して観察した結果、その不思議を考えてみました。

フルネーム: 書類の記名欄には、父の苗字APELLIDO PATERNO、母の苗字APELLIDO 
MATERNOの欄があって、名前NOMBRE(S)と名前は単数でも複数でも書いて良いように
なっています。ほとんど忘れかけていた母方の旧姓などを思い出さねばならず、また、
どの書類にどの名前を書いたか覚えていなければなりません。通常男性や未婚女性の
名前は、例えばFRANCISCO JAVIER GARCIA LOZANOのように、名前が二つ、苗字が二
つあります。そして、女性が結婚すると、母の苗字が消えて、夫の苗字が付きます。
例えば、私の場合、KARI ISHIDA DE TATSUSHIMAとメキシコ風。自分の苗字も維持し
て、遅れ馳せながら結婚もできましたと表現しています。

苗字APELLIDO:  このように既婚女性の苗字には「DE」が付くのですが、それは書
類上のこと。「DE」は所有の「の」ですから、働く若い女性は、結婚していても「DE」
抜きの旧姓で通す人も多く、また、男性でも、「DE」付きの名前の人もいるから混乱
します。例えば、前大統領はERNESTO ZEDILLO PONCE DE LEON。PONCE DE LEONと言
う苗字は、スペインに古くから伝わる高貴な苗字だそうです。DON QUIJOTE DE LA 
MANCHAと言えば、「ラ・マンチャから来た男」という邦題が示すとおりラ・マンチャ
地方出身のキホーテさんということで、地名であることがわかります。

先日、MARTA GARCIA Y RENARTと言うピアニストに会いました。名前が「マルタ」、
苗字が「ガルシア と レナルト」です。『この「Y」は何?』と思わず質問してし
まいました。「Y」は英語の「AND」、日本語の「そして」ですから、苗字として少々
おかしいと思ったのです。ところが彼女曰く、「これは親が市役所に登録した名前だ
から、そうなんであって、意味なんかない!」と言い切るのです。DE LA CHICAとい
う苗字の友人やDE LA MADRIDと言う元大統領もいますが、助詞や接続詞、冠詞を含
んでいる苗字や名前というのは、日本人には理解が難しいところです。

名前NOMBRES:  友人の名前はMARIA DE LOURDES、やっぱり「DE」が何か不思議で
す。友人の1歳になる女の子の名前がインドの神様のKRISNA。だいたい「K」から
始まる名前や名詞はスペイン語の場合ほとんどありませんから珍しい。かと思うと、
昔からあるアステカ最後の皇帝CUAUHTEMOCや、雨の神様TLALOC、イタリアならミケ
ランジェロMIGUEL ANGELなどの名前が普通に使われていて、日本でなら、頼朝、天
照大神、歌麿などの歴史上の人物と同名の人がたくさんいます。

MOISES聖書に出てくるモーゼ、JULIO CESARジュリアス・シーザー、ISRAELイスラ
エルの国名そのもの?、 NAPOLEONナポレオン、GUADALUPEメキシコの聖母と、JESUS
イエス・キリスト。最初は、タクシーの運ちゃんがキリストと言う名前だと、いちい
ちギョッとしたけれど、どちらも、非常にありふれた名前で、もう慣れました。良く
聴くラジオ番組では、毎日の聖人の名前を発表しています。聖人SANTOと同名の人を
祝うのですが、聖人の名前は非常に多く、JERONIMO、GREGORIO、FRANCISCOなど毎日、
数名の名前が呼ばれています。

名前は通常二つですが、これがペアになったものも多く、LUIS MIGUEL、VICTOR HUGO、
JOSE LUIS、ANA MARIAなど。男女ペアなら、男がALEJANDROで女はALEJANDRA、MARIO 
にMARIA、ENRIQUEにENRIQUETA、 JULIOにJULIA、FERNANDOにFERNANDA、GUILLERMO
とGUILLERMINAと、色々。例外も多いけれど、女性はAで終わるのが普通です。 

親子:  親子が同じ名前を持つことは珍しくありません。アミーゴス・デ・ラ・ム
ジカの常連のカルテット・プリエットCUARTETO PRIETOは、JUAN LUISとCARLOSの
兄弟と、それぞれの息子であるJUAN LUISとCARLOSの従兄弟同士の4人組み。コン
サートで4人が集まるのですが、何年も演奏を聞いているのに今も誰が誰やら・・・。

愛称 DIMINUTIVO CARINOSO: 愛称は子供だけのものではなく、大人でもありま
す。知っている人だけでも、RAFAEL→RAFA、ANTONIO→TONOくらいは想像がつきま
すが、FRANCISCO→PANCHO、JOSE→PEPE、GUILLERMO→MEMO、IGNACIO→NACHO、
ALFONSO→PONCHO、ALBERTO→BETO、JESUS→CHUCHO、DOLORES→LOLAとなると戸
惑います。親しい人に対しては、ANA→ANITA、 JUANA→JUANITAで、日本でいう
「ちゃん」付けになって可愛らしくなります。また、全然太っていなくてもGORDO
とかGORDITOとか、日本語で言うなら「でぶっちょくん」と呼ぶのもよくある愛称
で、呼ばれた方も痩せていても元気に返事をしています。
友人のギジェルモは愛情を込めて、メモと呼ばれています
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通称 APODO: 誘拐犯や麻薬密売人のニュースでは、犯人の名前だけでなく通称を
重要視するのも興味深いこと。先日、シティでも犯罪の多いTEPITO地区で捕まった
犯人について、MEJOR  CONOCIDO CON EL APODO DE EL TANQUE(エル・タンクという
あだ名でよく知られている)とか、ALIAS EL TANQUE(別名エル・タンク)と発表して
いました。ニュース番組では、本名のほかに通称も重要な情報として発表されます。
エル・タンクはがっちりした体つきからきたのでしょう。以前、誘拐しては被害者の
耳を切って家族に送て脅迫する極悪誘拐犯の通称がMOCHA OLEJAS(耳切り)だった
ことを思い出しました。これなどは、愛嬌もなにもない、ぞっとする別名。

肩書きTITULO:  メキシコ人は肩書きを気にする人種と見ました。招待状などの
宛名書きで苦労するのがこの肩書き。LICENCIADO学士、ABOGADO弁護士、INGENIERO
技師、PROFESOR教師、MAESTRO先生、DOCTOR博士、ARQUITECTO建築士などの肩書き
が並び、これを間違えてはいけません。勿論、女性の場合は、最後のOをAに変える
こともお忘れなく。大統領もSENOR PRESIDENTEと丁寧に呼びます。

このSENOR(SR.) SENORA(SRA.) SENORITA(SRTA.)も難しい。日本語なら全て「さん」
や「様」で済むところを、例えば若い独身女性にSRA.と間違えて書けば、怒られる
し、反対に、独身でも中年を過ぎていると、SRTA.呼ばれるのをいやがる人もいます。
離婚した人や未亡人も、SRA.とSRTA.の使い分けを悩むところ。さらに、いまどき、
CONDESA伯爵夫人などと自称する人もいて、混乱します。

その上、あの「ひょっこりひょうたん島」のドン・ガバチョやDON QUIJOTEのごとく、
DONとDONAがいて、尊称であるらしいけれど、ドン・ガバチョを連想する私として
は、からかっているような気がしてしまう。でも、これはSR.やSRA.の代わりに使っ
うらしく、私も、DONA KARIドーニャ・カリと呼ばれたことがあります。

外国の名前: シボレーCHEVROLETは車の名前。メキシコでは、そのまま、チェブロ
レットと発音します。これは、同じローマ字表記だからで、日本人が中国や韓国の発
音を無視して、毛沢東をモウタクトウと呼んでいたのと同じ発想。最近では、本国で
の読みに近い発音をするようになりましたが、漢字で書いてあると、もう読めません。
同じローマ字だから、メキシコ人にとっても、英語の読み方は難しいらしく、英語の
先生でさえ、発音はしばしばスペイン語読みです。メキシコで英語を習う人は要注意。

欧米人の名前の中でも、RICCHARD→RICARDO、EDWARD→EDUARDO、ALBERT→ALBERTO、
ROBERT→ROBERTO、ANTHONY→ANTONIOで、まだ分かり易いけれど、ANDREW→ANDRES、
JOHN→JUAN、JAMES→JAIME、ARTHUR→ARTURO、BENEDICTO→BENITO、CHARLES→
CARLOS、WILLIAM→GUILLERMO、GEORGE→JORGEとなると、呼ばれた本人も自分のこ
ととは分からないかも知れません。

例えば、英皇室のチャールズ皇太子はCARLOSと呼ばれることが定着しているようで
すし、亡きダイアナ妃はPRINCESA DIANAディアナと発音します。ハンサムな息子の
ウィリアム王子はGUILLERMOと呼ばれます。でもアメリカ大統領のGEORGE W. BUSH
はジョージという発音のままで、ホルヘ・ブッシュとは呼びません。ウィリアム・シ
ェークスピアをギジェルモ・シェークスピアと呼ぶ人はいないが、人名辞典で見ると、
歴史上のヨーロッパの王などは、ウイリアムがギジェルモと出ていたり、どういう基
準があるのか不思議です。

メキシコ・シティでは、自分の名前を英語読みにするのがちょっと流行っていると聞
いたことがあります。昨日までハイメさんだった人が、突然ジェームスになったらお
かしいかも・・・。最近、近所にできた小さな文房具屋さんPAPELERIAの名前が、
PAPELERIA PAPEとそのまんま、安易な命名に笑いました。また、先日シティで起き
た捨て子事件では、生後間もない赤ちゃんに付いた名前がアンヘラANGELAで、天使。
養子にしたいという申込みが殺到しているそうです。いずれにしても、苗字がひとつ、
名前もひとつと混乱しようがない日本人から見ると、メキシコ人は名前だけとっても
ユニーク。これからも観察を続けるつもりです。


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バックナンバー
#2 メキシコの住宅事情
#3 警官への賄賂
#4 音楽友の会 10周年コンサート裏話
#5 ノーチェ ブエナ物語
#5 クリスマス行事
#6 年末年始の休みとグアダラハラ家族旅行
#6 トレス レイエス
#7 ビザの種類と更新
#8 モナルカ蝶の聖域ツアー
#9 ガールスカウト奈良支部
#10 チャイコフスキーのバレー「白鳥の湖」
#11 メキシコ縦断アメリカ転々旅行
#12 メキシコの飲み物
#13 テキーラ
#14 花が咲いて実がなった(街で見る果物)
#15 アステカ・カレンダリオの謎
#16 2000年・年越し祭り
#17 9月16日 独立記念日
#18 特別ゲスト、中村さつきさん
#19 DIA DE MUERTOS 死者の日
#20 葛飾諏訪太鼓メキシコ滞在記 (リーダー水澤啓一 記)
#21クエルナバカの年末年始
#22 メキシコ病院事情
#23 今も懐かし、街頭の物売りたち
#24 養老院YALENTAY慰問コンサート
#25 メキシコの温泉も気持ちいい(*^o^*)
#26 ノパール NOPALで健康に!
#27 メキシコの選挙
#28 ロマンチック・アシエンダ(荘園)街道巡りの散策
#29メキシコ、愛国心のしるし
#30メキシコの結婚式 − 二つの体験談
#31メキシコ原産トウモロコシ MAIZ の秘密
#32 6年に一度の大統領就任式
#33 メキシコのピニャータ
#34 火山ポポカテペトルと山麓の世界遺産−修道院群
#35 MARCHA ZAPATISTA サパティスタの行進
#36 メキシコの飲み物 第二弾 − メキシコの伝統的な飲み物
#37メキシコの飲み物 第3弾 − メキシコのアルコール飲料
#38 QUINCENERA -XV歳の社交界デビュー・フィエスタ
#39 メキシコのお金
#40「民宿かず」お客さま第一号記念
#41 メキシコの祝祭日・記念日
#42メキシコ・シティから独立記念日の実況中継
#43 RUTA DE ZAPATA 革命児サパタを辿る道
#44メキシコのクリスマスと「NACIMIENTO」飾り
#45メキシコの伝統菓子
#46メキシコの宝くじLOTERIA
#47藤枝先生のメキシコ体験談
#48ラス・エスタカス物語HISTORIA DE LAS ESTACAS
#49メヒカン・フルーツの全て(第一部)
#50メキシコのルチャ・リブレ−高橋千歳さんの特別報告
#51  PAPA JUAN PABLO II メキシコ来訪メモ
#52 メキシコ・シティの地下鉄 METRO EN MEXICO
#53  TEMAZCALの謎
#54  メキシコ原産の野菜たち
#55  唐辛子CHILE
#56  命の木 EL ARBOL DE LA VIDA
#57  伝統玩具JUGUETES TRADICIONALES 
#58  太陽の味フルーツ盛り合わせ
#59  グループ・ストウ クエルナバカ・コンサート顛末記
#60  聖週間SEMANA SANTAの研究
#61  不満だらけメキシコの雑誌
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#63  ファースト・レディPRIMERA DAMA 
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#65  野球BEISBOLはどうなってる?

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