「クエルナバカの碧い空」第67号
#4 トピックス − メキシコの治安
ファレス市CIUDAD JUAREZの砂漠で、1993年の1月に最初の死体が見つかってから
10年、すでに300人近い若い女性の死体が見つかっているのに、何もしてこなか
った当局に対して、国内からはもちろん国際的にも批判を浴びるようになり、やっと
本格的な調査が開始されましたが、その多くは未だに犯人があがっていません。その
ほか、麻薬組織犯罪、違法移民をアメリカへ運ぶPOLLEROSと呼ばれる人の人身売買や
密入・出国などに絡む事件や、誘拐など、国際的大事件が起こっています。

このような国際ニュースからメキシコは危険というイメージが定着しているのでしょ
うが、日本における犯罪検挙率も2001年に20%を下回って以来、日本の「安全神話」
は崩れたと言われているし、私たちは、クエルナバカに住んで丸9年、全く危険な目
に遭ったことがありませんから、今の世の中どこに住んでも、安心しきって気を緩め
放しでもダメだし、心配のあまり緊張して生きるのも過剰反応というものでしょう。

今回は、知人、友人の体験談や、テレビなどで見る身近な事件の具体例と、考えられ
防止策を、知っている範囲でお話したいと思います。

メキシコで一番犯罪が多いのは、世界一の大都市DF(DISTRITO FEDERALメキシコ
・シティ連邦特別区)で、続いて北に接するメキシコ州(州都はトルーカ)です。
DFで最も多いのが車泥棒、次いでかっぱらいや強盗・傷害、バスなどでの公共輸
送機関でのひったくり、泥棒、婦女暴行、そして殺人で、捕まえて見れば、犯人は
現職あるいは元警官が多いということ、また、家族ぐるみの犯罪も多いのがメキシ
コの特徴と思えます。

車泥棒は、路上駐車のものが一番多いのですが、それだけでなく、乗っているのに信
号待ちなどで襲ってきて車を奪わることもあり、抵抗して殺害されるという最悪のケ
ースもありました。また、レストランのバレット・パーキングできちんと預けたつも
りでも、レストランによっては、駐車場を持たず、近くに路上駐車する場合もありま
す。また、タイヤのホイール・キャップがなくなったり、部品が盗られたり、気づい
ても最初から無かったといわれればそれまでで、トラブルが頻発しているようです。

こういう事件は注意するにも限度がありますから、なるべく車に乗らないのが一番。
また車の窓から見えるところに、バッグなどを置かないこと。取り外しのきくカース
テレオなどは、車を離れるときには、取りだして持ち運ぶ人もいます。

私たちは車でDFに行くことはもうありません。特に外国人や他州からの人は交通警
官に狙われて、小さな違反を口実に車を止めて賄賂を要求することが多いからです。
最近は、要所要所に監視カメラが作動していて、賄賂を受け取る警官の映像がテレビ
のニュースでも流れますが、この際、払ったほうも逮捕されます。道が複雑で一方通
行の多い、しかも乱暴な運転が多いDFで、罰金支払いのために知らない道を運転す
るのも危険です(罰金は銀行でも払えるらしいのですが・・・)。最近はバス、地下
鉄を利用している私たちですが、このほうが遥かに安全で、心理的にも楽です。

DFでもクエルナバカでも、赤いネルの布を持って、路上駐車できるところまで誘導
してくれるおじさんがいます。そのネルの布(車を拭く布)からFRANELEROと呼ばれ
ていますが、市に雇われているわけではありません。こういう人には、一応チップを
あげると、車を見ていてくれることになっていますが、なんの資格も責任もないので、
トラブルも多いようです。

ひったくりや強盗といった犯罪は、どこでも遭遇するもので、特にメキシコの犯罪で
はありませんが、メキシコの犯罪者のほうが大胆なようです。友人はDFで美容院
ESTETICA UNISEX(男女両方の美容院)に夫婦でいたら、強盗が入ってきて、時計や
店の売上金を奪われたという体験談を話してくれました。バスや、スーパー、レスト
ランなど、人が集まる場所に強盗が入ることがあります。また、深夜バス(高速バス
でなく、一般道を行くバス)では、トッペ(歩行者が道を渡れるように路上に突起が
ある)でスピードを落としたところを襲う犯人もいるそうです。パニックにならずに、
金目のものを素直に渡すことです。

DFでもテピートTEPITO地区など犯罪の多い場所があります。このような危険地区
や人通りの無い寂しいところを避ける、高級ぽいアクセサリーを身に着けない、目的
意識を持ってしっかり歩くなどの注意で被害を避けられます。日本人は金持ちと思わ
れているので(多くのメキシコ人は現在の日本の不景気をしらない)狙われやすいの
ですが、中国人や韓国人も多いのに、日本人は服装など雰囲気でわかってしまうので、
女性は、日本から持ってきた仕立ての良いスーツなどは着て出歩かない方がよい。

DFのセントロ地区には、防犯防止のカメラやブザーなどが設置されて、防犯に躍起
となっていますが、どれだけ役に立っているかは不明です。しかし、セントロ地区な
ど、観光客や市民が大勢集まる場所は却ってあまり危険ではありません。持ち物さえ
気をつけていれば心配ありません。

誘拐事件はDF、メキシコ州の順で多く、即席誘拐SECUESTRO EXPRES(車に乗って
いる人を連れまわして、キャッシュ・カードなどでお金をおろしてから解放したり
(メキシコでは一日に下ろせる額が3,000ペソまでと決まっているので、それ以上の
被害は無いことが多い)、小額の身代金を要求して、数時間から数日で解放する誘
拐)を含めると、メキシコ全土の誘拐数は、あのコロンビアを抜いて世界一とも言わ
れています。

またDFでは、銀行強盗も多く、毎日のように、今日は3件とか、銀行の警備体制の
甘さを報じるニュースがあります。先日は、銀行の窓口の女性が外部の強盗に連絡し
て、大金を下ろした人を襲わせるという事件がたて続けにおきました。奥さんを鍵の
ついた車において、すぐ前のATMでご主人がお金を下ろして戻ってきたら、車は強盗
にのっとられ、二人とも車で引き回されて、有り金全部とられたという話もあります。
昔は、クエルナバカでも銀行の前には銃携帯の警備員が必ずいたのですが、最近は、
あまり見かけなくなりました。現在のクエルナバカは治安が安定しているようです。

有名なのが偽タクシーです。偽タクシーは、元はといえば、前の与党や検察などの偉
いさんが、知人などに不法に書類を売ったのが最初で、現在DFを走る10万6千台
のうち1万6千台が不法タクシーといわれています。なんと、10台につき、1.6台
が偽タクシーで、ここまで繁殖した原因はこれらの官僚にあるといわれています。偽
でもきちんと働いている運ちゃんもいれば、強盗や婦女暴行を目的としている運ちゃ
んや運ちゃんファミリーもいます。

政府が変わって、現在は、タクシーのナンバープレートを変えたり、タクシー自体を
変えたり、防止に躍起となっていますが、一挙には解決しません。防止策としては、
正式なタクシー乗り場でチケットを買って乗るか、ホテルの前などで客待ちしている
タクシーを使うか、可能な場合はラジオ・タクシーを呼んでもらい、流しのタクシー
を拾わないようにします。

深夜の路面バスも、事件が多発してから、犯罪防止のブザーを取り付けたり、警官の
検問があるなど、取締りが強化されていますが、特に住宅街では暗くなると人通りも
パタッと絶えるメキシコのこと、深夜は出歩かないことです。

クエルナバカは10数年前までは誘拐天国だったらしく、今でも地方に行ってクエ
ルナバカから来たと言うと、「あの誘拐のクエルナバカ?」と言われるほど有名なこ
とのようです。私たちも身近な人の誘拐事件など、何件か聞いた事がありますが、今
では、それも収まり、クエルナバカは治安の良い都市になっています。ここでは、タ
クシーも、どこで拾っても安全です。たまに値段交渉のときに、ふっかける運ちゃん
もいますから、乗る前に、だいたいいくらくらいかかるか知っている人に聞いておく
のが良いでしょう。

メキシコ人の友人たちは、私たちがちょっとぼんやりしていると、車に乗ったら、ド
アの鍵を必ずかけること、窓はあけないこと、バッグは外から見えるところに置かず
足元に置く(信号待ちをしているときに、開いた窓からネズミの死骸などを投げ込ん
で、パニックになったところを、バッグを奪うという手口があるらしい)、道を歩く
ときはショルダーバッグもきちんと抱えるなど色々注意してくれます。ネックレスを
していて、引っ張れて盗られて、首に怪我をした人や、バスに強盗が乗ってきてお金
を盗られたり経験談は続きますが、いずれも単なる金目当てですから、素直に渡して
しまうのがよいようで、人によっては、そういう時のために、別口の財布を用意して
いる人もいます。

無処罰IMPUNIDADという問題もあります。たとえばDFでは、犯罪に巻き込まれても、
80%近い人が告発しないと言っているところから、いかに警察が信用されていない
かがわかります。たとえ告発しても犯人がつかまる率が低く、あきらめもあるでしょ
う。ある友人は、夜遅くパーティから帰ってきて、駐車場に車を入れようとしたら、
タクシーで追ってきた強盗にホールドアップされ、持ち金を奪われたそうです。警察
に届けたところ、相手にしてくれなかったと憤慨していました。警官にはモレーノ
(浅黒い肌の人)が多く、白人に対して複雑な感情を持っていることから、警察に届
け出ても何もしてくれないことが多いという話でした。

犯罪は注意しても巻き込まれるときは巻き込まれるものですが、実際には、DFでも、
クエルナバカでも多くの人々が快適に暮らしています。金目当てや個人的な復讐など
の犯罪が多いのがメキシコの特徴で、犯罪に若年化も言われていますが、日本のよう
に、わけのわからない、心理学者の登場が必要な犯罪は稀で、それなりに防ぎようが
あるのがメキシコの犯罪です。

DFはこのようにあまり治安が良いとはいえないし、私たちはたまたまクエルナバカ
という現在は一応治安がいいといわれている都市に住んでいるけれど、DFの隣の州
なので、いつまでこの治安の良さが続くかわかりません。しかし、DFにもクエルナ
バカにもその他の州にも、日本人も含めて大勢の人々がごく普通に生活をしています。
犯罪を特集したので、どんな危険な場所かとお思いでしょうが、実際には、のほほん
と、まあ通常の常識的な注意をしながら、旅行をしたり住んだりしています。何より
も、お金に困ってさえいなければ、愛想の良い人々ばかりですから、住めば都、快適
に過ごせます。

閑話休題。ほかにも、海賊版PIRATERIAの問題や街で売られる麻薬の話など、いくつ
も題材はありますが、またの機会にゆずって、暗い話はこのくらいにして、メキシコ
独特のユニークな犯罪をふたつ紹介します。

身近なところで電気泥棒。これは深刻な問題です。電気泥棒による損失が年間10億
ドルに上るという調査もあるほどですが、街を歩いていても思い当たることが多いで
す。路上店舗やタコス屋の屋台は、毎日時間が来ると、枠を組み立て、台を置き、ビ
ニール天井をはって、品物を並べていきますが、多くの店番がラジオやテレビをみて
いるのです。このテレビの電源はどうなっていうのか?
テレビ好き、音楽好きのメキシコ人、テレビとラジオは仕事中も必需品
(クリックで拡大)
無論、きちんと許可を得て、電力を使っている人も多いでしょうが、空を見上げると
見えるくもの巣のように張った電線は、電力会社によって張られた正式な電線ばかり
とはいえないようです。地域によっては、電圧が下がったり、明らかな被害を受けて
いる人もいます。電力は現在国営ですが、これらの損失を考えて、民営にすべきとい
う意見もでています。

猥褻物陳列罪。大げさかもしれませんが、日本ならきっとこの罪で逮捕を免れないの
ではないかと思われるのが、地方から出てきた農民たちのデモです。少し前は、男性
の農民たちのデモがDFでよく見られました。彼らの主張が何であったか、映像が強
烈だっただけに、よく覚えていないのですが、それでも男性たちの場合は恥らいがあ
ったようで、パンツくらいは着けていたし、パンツも脱いでフリチンだったときには、
マスク(大統領などの顔をゴムでかたどって頭にすっぽりとかぶるお面で、メキシコ
人はこのマスクが大好き)をかぶっていました。

それが、10月17日の女性の投票権獲得50周年を祝うDFの下院の建物前に突如
現れた女性ヌーディスタたちは本当にスッポンポン。ピアスまではずしていたそうで
す。彼女たちはベラクルス州の農村部から来ていたのですが、DF滞在の最後の日に
思い切った抗議行動にでました。絶え間なく働いてきた農民の逞しい肉体だったせい
で、警官も市民や観光客たちも、裸姿に劣情を催すことはなく、猥褻罪にならなかっ
たのは幸いでした。結局、抗議目的もよく分からず、逮捕もされず、分かったのは、
「女は強い」ということでした。
雑誌に載った事件、素っ裸で顔も隠しません
(クリックで拡大)
メキシコはデモに対しては非常に寛大です。空港建設反対運動ではマチェテと言われ
る「なた」のような刀を振り回し、短期間だけれど拉致された自治体関係者もいて、
日本なら少なくとも銃刀法違反で全員逮捕からと思ったら、結局は逮捕者はゼロだっ
たようです。


表紙に戻る
訪問者紹介へ進む
バックナンバー
#2 メキシコの住宅事情
#3 警官への賄賂
#4 音楽友の会 10周年コンサート裏話
#5 ノーチェ ブエナ物語
#5 クリスマス行事
#6 年末年始の休みとグアダラハラ家族旅行
#6 トレス レイエス
#7 ビザの種類と更新
#8 モナルカ蝶の聖域ツアー
#9 ガールスカウト奈良支部
#10 チャイコフスキーのバレー「白鳥の湖」
#11 メキシコ縦断アメリカ転々旅行
#12 メキシコの飲み物
#13 テキーラ
#14 花が咲いて実がなった(街で見る果物)
#15 アステカ・カレンダリオの謎
#16 2000年・年越し祭り
#17 9月16日 独立記念日
#18 特別ゲスト、中村さつきさん
#19 DIA DE MUERTOS 死者の日
#20 葛飾諏訪太鼓メキシコ滞在記 (リーダー水澤啓一 記)
#21クエルナバカの年末年始
#22 メキシコ病院事情
#23 今も懐かし、街頭の物売りたち
#24 養老院YALENTAY慰問コンサート
#25 メキシコの温泉も気持ちいい(*^o^*)
#26 ノパール NOPALで健康に!
#27 メキシコの選挙
#28 ロマンチック・アシエンダ(荘園)街道巡りの散策
#29メキシコ、愛国心のしるし
#30メキシコの結婚式 − 二つの体験談
#31メキシコ原産トウモロコシ MAIZ の秘密
#32 6年に一度の大統領就任式
#33 メキシコのピニャータ
#34 火山ポポカテペトルと山麓の世界遺産−修道院群
#35 MARCHA ZAPATISTA サパティスタの行進
#36 メキシコの飲み物 第二弾 − メキシコの伝統的な飲み物
#37メキシコの飲み物 第3弾 − メキシコのアルコール飲料
#38 QUINCENERA -XV歳の社交界デビュー・フィエスタ
#39 メキシコのお金
#40「民宿かず」お客さま第一号記念
#41 メキシコの祝祭日・記念日
#42メキシコ・シティから独立記念日の実況中継
#43 RUTA DE ZAPATA 革命児サパタを辿る道
#44メキシコのクリスマスと「NACIMIENTO」飾り
#45メキシコの伝統菓子
#46メキシコの宝くじLOTERIA
#47藤枝先生のメキシコ体験談
#48ラス・エスタカス物語HISTORIA DE LAS ESTACAS
#49メヒカン・フルーツの全て(第一部)
#50メキシコのルチャ・リブレ−高橋千歳さんの特別報告
#51  PAPA JUAN PABLO II メキシコ来訪メモ
#52 メキシコ・シティの地下鉄 METRO EN MEXICO
#53  TEMAZCALの謎
#54  メキシコ原産の野菜たち
#55  唐辛子CHILE
#56  命の木 EL ARBOL DE LA VIDA
#57  伝統玩具JUGUETES TRADICIONALES 
#58  太陽の味フルーツ盛り合わせ
#59  グループ・ストウ クエルナバカ・コンサート顛末記
#60  聖週間SEMANA SANTAの研究
#61  不満だらけメキシコの雑誌
#62  メキシコで働きたいですか?
#63  ファースト・レディPRIMERA DAMA 
#64  広い範囲で薬MEDICAMENTOS 
#65  野球BEISBOLはどうなってる?
#66  名前に関する考察

[PR]あなたへ届く、ラブレター:※ココ!ラブレター日記。