
「クエルナバカの碧い空」第69号 #4 トピックス − 2003年メキシコ十大ニュース日本では、年末になると十大ニュースが発表されて、一年を振り返るのが慣わしです が、メキシコではそういう習慣はないようです。で、今回は私が勝手にメキシコらし い2003年のメキシコ十大ニュースを選んでみました。メキシコ芸能界については 全く無知なので、そのニュースが含まれていないのが残念ですが、あとは、思いつく ままに列記してみました。重大性に関しては順不同です。 1) チワワ州CIUDAD DE JUAREZの女性殺人事件に光 1993年からシウダ・デ・フアレスで殺された女性は300人以上、4000人にもの行方 不明女性がいるとも言われています。シウダ・デ・フアレスはアメリカとの国境にあ って麻薬取引の本拠地であり、砂漠地帯を含む広大な土地は数人の権力者の所有地で あり、事件は闇のなか。次々に砂漠から発見される死体を前にしても、チワワ州政府 は事件自体の存在を否定してきました。 そこに現れたのが様々な国際団体です。国連ORGANIZACION DE NACIONES UNIDAS(ONU) を初め、アムネスティ・インターナショナルAMNISTIA INTERNACIONAL (AI)、人権委 員会などが、メキシコ政府の生ぬるい態度に業を煮やしてメキシコに乗り込んできま した。この国際的な動きに押されて、政府も働きださざるを得なくなり捜査が開始さ れ逮捕者も出始めました。こうして事件発覚から10年たった2003年、やっと中世 の暗黒時代のようなメキシコの恥とも言うべき事件に光が当てられることになりまし た。事件の動機が、麻薬犯罪がらみなのか、人身売買、あるいは臓器売買によるもの か、まだまだ不明なことばかりで、これからの解明が待たれます。 2) イラク攻撃にメキシコ政府が参加を拒否 3月19日にアメリカがイラクに対する攻撃を開始し、それにともなって、各国に参 戦を呼びかけましたが、メキシコはこれを拒否、対米関係が悪化しました。親米派の 外務大臣が辞任したり、後に、「メキシコはアメリカの裏庭」などと僻みっぽい発言 をしたメキシコ国連大使が解任されたり、外交政策に関しては、フォックス内閣に不 調和音が流れました。いずれにしてもアメリカの言うことには何でもOKではなく、 独立国として行動する事が重要だとする外交政策を、大部分のメキシコ人が支持して いるようで、その態度は、日本人の目からみると新鮮です。 3) アジアの攻勢 11月第2週にカンクンで開催された商業会議QUINTA REUNION MINISTERIAL DE LA ORGANIZACION MUNDIAL DE COMERCIO (OMC) の会場で、グロバリゼーションを嫌う人 たちGLOBALIFOBICOSの抗議デモの最中に韓国人が腹切り自殺をしたのは全世界を驚 かせましたが、2003年はメキシコにとって、アジアの国々の攻勢にたじたじの年で した。アジアからの安価な商品がメキシコを席巻し、対米輸出も一位の座を中国に奪 われ、国内では中国、韓国の安い商品に押されて、衣料、玩具、製靴業界などが大打 撃を受けました。テレビでも、アジア勢力に対抗するための策を話し合う特別番組な どが度々放送されました。 4) 大デモ行進MEGA MARCHA 抗議デモの大行進がメキシコ・シティで頻繁に行われ、その都度、市内の交通が麻痺 しました。時には裸の男女が、時にはマチェテと呼ばれるナタを振り回した農民が、 時には授業をボイコットした先生たちが、メキシコ各地から大挙して押し寄せ、シテ ィの幹線道路を占拠・封鎖しましたが、ほとんど逮捕者がなかったのがメキシコらし い? もっともトラルテナンゴの悲劇の記念日である10月2日の学生によるデモでは、 投石や略奪なのど狼藉があり、こちらは逮捕者も出ました。 5) アナ・ゲバラの活躍ANA GABRIELA GUEVARA 短距離走者アナ・ゲバラは2001年から負け知らずの28連勝。特に2003年は彼女の 年で、ラテン・アメリカのベスト競技者に選ばれました。最も得意とするのは400メ ートル走ですが、5月3日にはメキシコ・シティで開かれた300メートル走で35・5 秒の世界新記録を出し、300メートル、400メートル走では無敵の状態。人気者にな って、非常に忙しくなった彼女、コマーシャルや様々なイベントに引っ張りだこです が、時々、ドタキャンして周囲を慌てさせ話題になるのもご愛嬌。現在26歳、アテ ネ・オリンピックではメキシコの一押し選手ですので、大きな期待がかかります。 メキシコの輝く星、アナ・ゲバラ 6) 密入国者18人死亡 5月14日、テキサス州のビクトリアで、大型トレーラーに密入国メキシコ人が放置 され、そのうち18人が窒息死して発見されるという事件がありました。不法移民の 密入国を助ける人々を"POLLERO"と呼ぶのですが、この言葉は、もともと鶏の売買を する人を意味します。悲しいかな、ここでは鶏と同じように狭い場所で一日中働きづ めの労働者を売買する人のことを呼びます。同様の事件が後を絶ちませんが、この事 件によって、フォックス大統領は、更に強くアメリカに移民法の改正を働きかけるき っかけとなりました。密入国した後、アメリカで奴隷のような環境で働くメキシコ人 の実態も報道されています。今年になってブッシュ大統領の移民法改正の発言もあっ て、改善が期待されています。 7) メキシコ・シティに高架車道の建設DISTRIBUIDOR VIAL SAN ANTONIO 世界最大の駐車場と揶揄されているメキシコ・シティの交通渋滞を解消すべく、建設 が進んでいたメキシコ・シティ初めての2階建て片道3車線の高架道路が、予定より 少し遅れて6月11日に完成し、人気のメキシコ市長アンドレス・マヌエル・ロペス・ オブラドール氏ANDRES MANUEL LOPEZ OBRADOR (AMLO)の指揮により開通式が行われ ました。 最終工事を急いだせいもあって、重量のコンクリートの塊が倒れて死者が出るなど、 完成近くになると毎日のようにニュースになりました。私たちはまだ利用していない のですが、シティ在住の方は便利さを実感しているでしょうか? 8) フォルクスワーゲン・ビートルが製造終了 フォルクスワーゲンVWセダン、ビートルESCARABAJOが約68年の歴史を閉じました。 メキシコでは、ボッチョVOCHOの愛称で親しまれ、現在では、世界でただ一箇所、プ エブラ工場にて製造されていました。7月30日午前9時5分、水色ACUARIO AZULの 世界合計21,529,464台目のボッチョが出来上がり、これが最後のボッチョとなりまし た。この最後のボッチョは、マリアッチの音楽と花束で祝ってもらった後、ドイツの WALFSBURGにある車博物館に収められたそうです。最終モデル"ULTIMA EDICION"は 限定300台のみで、早々と完売しました。 まだまだメキシコでは健在のボッチョたち このボッチョ、1936年にドイツで製造開始、とうにドイツでは製造中止となってい ましたが、メキシコでは約39年間に百七十万台が製造され、経済的で小回りのきく 車として、特にシティではタクシーに使われるなど、メキシコ人の足となりました。 体の大きなメキシコ人が太い腕を窓の外にはみ出させながら運転する様はちょっと可 愛い光景です。古い車も大事に使うメキシコ人のこと、新車はもうないけれど、これ からもまだまだボッチョの活躍は続きます。 9) シティのTEPITO地区で犯罪続発 メキシコ・シティの治安が悪化していますが、その中でも2003年の春、連日のよう にニュースとなったのがコロニア・モレーロスとそのテピート地区です。麻薬組織や 密輸組織から送り込まれた刺客SICARIOが暗躍し、処刑と称した殺人が多発、26人 が殺されたとされています。テピート地区は麻薬や密輸品、海賊版商品PIRATERIAな どで有名で、それらの安い商品を販売する屋台が軒を連ねて迷路のごとくに入りこん でいて、内部抗争が絶えません。しかし、その後、警察の大掛かりな手入れがあり、 多くの逮捕者(中に多くの元警察官が含まれている)と、麻薬や海賊版商品などの没 収があり、犯罪件数は減っていますが、それでも、絶対に旅行者が足を踏み入れては いけない危険な場所です。 メキシコは、世界3位の海賊版商品がはびこる国、CDなど多くが海賊版と言われ、 他にも密輸入品などが幅をきかせています。人気アーチストのCDが10ペソ(約 100円)で売られて、時には本物が発売される以前に出回るのですから、これでは 音楽産業が発達する訳がありません。そのほか、ブランド品、出版物、医薬品、ウイ スキー、タバコなど、こんな物までと驚くものも偽ものが横行していて、ものによっ ては生命にかかわります。私たちも冗談や興味本位で偽物を買うことがありますが、 メキシコのように数字が大きいと、国家経済の発展の大きな妨げとなり、冗談では済 みません。メキシコ人によると、偽ものや密輸品が出回るのは、当局の監視がしっか りしていないから、あるいは、税関で賄賂をとって見逃している役人のせいであると 断言する人もいます。資源が豊かでありながら、なかなか経済一流国の仲間入りが出 来ないメキシコの敗因はこんなところにありそうです。 10)フォックス大統領の経済改革案REFORMA FISCALが否決される 12月11日、国会にて、フォックス大統領の経済改革案が最終的に否決され、大統領 の国家経済の建て直しが遠のきました。案による、今の付加価値税(IVA-IMPUESTO AL VALOR AGREGADO−日本の消費税)を、現在15%から10%に下げて、今は無税 の医薬品や食品にも課税し、広く一般から税金を徴収しようとするものです。しかし、 貧しい人が多いメキシコのこと、現在は無税の薬や基礎的な食品にも課税するという のには大きな反対がありました。いずれにしても、党同士の対立や、党内の対立など、 国会のニュースというのは、日本もそうですが、分かりにくい部分が多いものです。 表紙に戻る訪問者紹介へ進む バックナンバー#2 メキシコの住宅事情#3 警官への賄賂 #4 音楽友の会 10周年コンサート裏話 #5 ノーチェ ブエナ物語 #5 クリスマス行事 #6 年末年始の休みとグアダラハラ家族旅行 #6 トレス レイエス #7 ビザの種類と更新 #8 モナルカ蝶の聖域ツアー #9 ガールスカウト奈良支部 #10 チャイコフスキーのバレー「白鳥の湖」 #11 メキシコ縦断アメリカ転々旅行 #12 メキシコの飲み物 #13 テキーラ #14 花が咲いて実がなった(街で見る果物) #15 アステカ・カレンダリオの謎 #16 2000年・年越し祭り #17 9月16日 独立記念日 #18 特別ゲスト、中村さつきさん #19 DIA DE MUERTOS 死者の日 #20 葛飾諏訪太鼓メキシコ滞在記 (リーダー水澤啓一 記) #21クエルナバカの年末年始 #22 メキシコ病院事情 #23 今も懐かし、街頭の物売りたち #24 養老院YALENTAY慰問コンサート #25 メキシコの温泉も気持ちいい(*^o^*) #26 ノパール NOPALで健康に! #27 メキシコの選挙 #28 ロマンチック・アシエンダ(荘園)街道巡りの散策 #29メキシコ、愛国心のしるし #30メキシコの結婚式 − 二つの体験談 #31メキシコ原産トウモロコシ MAIZ の秘密 #32 6年に一度の大統領就任式 #33 メキシコのピニャータ #34 火山ポポカテペトルと山麓の世界遺産−修道院群 #35 MARCHA ZAPATISTA サパティスタの行進 #36 メキシコの飲み物 第二弾 − メキシコの伝統的な飲み物 #37メキシコの飲み物 第3弾 − メキシコのアルコール飲料 #38 QUINCENERA -XV歳の社交界デビュー・フィエスタ #39 メキシコのお金 #40「民宿かず」お客さま第一号記念 #41 メキシコの祝祭日・記念日 #42メキシコ・シティから独立記念日の実況中継 #43 RUTA DE ZAPATA 革命児サパタを辿る道 #44メキシコのクリスマスと「NACIMIENTO」飾り #45メキシコの伝統菓子 #46メキシコの宝くじLOTERIA #47藤枝先生のメキシコ体験談 #48ラス・エスタカス物語HISTORIA DE LAS ESTACAS #49メヒカン・フルーツの全て(第一部) #50メキシコのルチャ・リブレ−高橋千歳さんの特別報告 #51 PAPA JUAN PABLO II メキシコ来訪メモ #52 メキシコ・シティの地下鉄 METRO EN MEXICO #53 TEMAZCALの謎 #54 メキシコ原産の野菜たち #55 唐辛子CHILE #56 命の木 EL ARBOL DE LA VIDA #57 伝統玩具JUGUETES TRADICIONALES #58 太陽の味フルーツ盛り合わせ #59 グループ・ストウ クエルナバカ・コンサート顛末記 #60 聖週間SEMANA SANTAの研究 #61 不満だらけメキシコの雑誌 #62 メキシコで働きたいですか? 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