-呑気家族のメキシコ移住計画-
出版:近代文芸社
石田 かり・著
                         「クエルナバカの碧い空」第77号
#6 本の続編 − 日本発見、 おまけの話: CHUCHUMBEで見たメキシコ
40日間の日本滞在を終えてメキシコに戻って来てしまった。

メキシコはまだ雨季真っ最中で、毎晩大雨が降り、大停電もあってメキシコらしいけ
れど、日本の気候も激しかった。35度の猛暑かと思えば、20度くらいの日もあり、
台風は通る、地震も何度か(気付いたのは私だけ)、久し振りの日本の夏を堪能しす
ぎだ。そのせいか、あまり活動しなかった割には、新日本発見の日々でもありました。

行きのメキシコ発のJALの機内誌か何かで読んだ誰かのエッセーには、海外から久
し振りに日本に帰ったら、日本人が愛想が良くなって気持ち悪いやらビックリするや
らと書かれていた。私もそれを実感。人々が親切で愛想が良い。以前、帰国の時には
怒ったように無口の人ばかりという印象だったから感動した。お店の人々も、街の人
々もなんだか日本人じゃないみたい。母や姉と一緒に病院に通ったタクシーに乗ると、
どの運転手も愛想良過ぎでずっと喋りっぱなし。次回タクシーを呼ぶときには、無口
の運転手を指名したいなどと贅沢な感想を述べる始末だ。

ある日、友達に会うために街へ出たついでに銀座に寄った。山野楽器が発売したハン
ドロールピアノというのを一目見たかったからだが、場所が分からず、駅の案内地図
の近くにいた駅員さんらしき人に尋ねた。それが、最近私は言葉が不調法で言い間違
いが多いのだが、聞いたのが、「ヤマハ楽器はどこですか?」。駅員さんは、丁寧に
ヤマハ・ホールの場所を教えてくれた。でも、行きたいのはホールではなくて楽器を
売っているお店ですと私。「ヤマハ・ホールでも楽器を売っています」と言いながら、
駅員さんは考えた。「それって山野楽器では?」。「そうそう、それそれ、ご親切に
思い出して下さってありがとう」。丁重にお礼を述べて山野楽器へ向かったのだった。

このハンドロールピアノは薄いゴム板に、薄い鍵盤が並んでいて、弾くと本当にピア
ノの音。49鍵と61鍵のピアノがあり、61鍵でも重さは1キロしかない。1キロ
の牛肉と同じ重さだ。なのに音色が100種類もあって遊べる。巻いてたためば雑誌
くらいの大きさに収まり、しかもピアノとは思えない安値で、買って帰りたい。例え
ばボルダ庭園で絵を売りながら、おもむろにピアノを取り出し、くるくると広げて弾
き始めたら(デモ曲が入っているので自分で弾けなくてもOK)、みんな目を丸くす
ること請け合い。受けを狙うなら、そして日本人としての尊敬を勝ち取るなら、これ
ほどの優れものはありません。

ところが先月も書いたように、かずさんから本物の電子ピアノも頼まれていて、ハン
ドロールピアノまで買うのは気が引ける。電子ピアノを売っているビックカメラのピ
アノ売り場では店員さんも特別に親切で、何度も通って質問する私に、汗をかきかき
調べてくれた。従来のものよりも重さが半減とは言え、これを持ち帰ることに抵抗し
ていた私は無意識に、買わずにすむ口実を探していたようだ。

ところが、このROLANDの電子ピアノも秀逸。結局買って、大変な思いをして、周囲
に迷惑をかけながら持ち帰った私に感謝、ピアノに感激したかずさんは、留守中にも
のにした一曲を、早速このピアノで感情を込めて弾いてくれました。明らかに性能が
アップしていて、タッチがさらに本物のピアノに近い。256種類もある音色から、
コーラス付きの演奏までして、ホームページ「癒しのピアノ館」を更新したのです。
ROLANDも日本の会社。誇らしくなるではないか。
本物に近いデジタルピアノでご満悦のかずさん、お留守番ご苦労さんでしたね
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あれも欲しいこれも欲しいの日本だが、つい買ってしまったのがタマの爪研ぎ。こん
なにかさばるものをなぜ買ったかは今になると不明だ。何度タマを諭しても爪を研い
でくれず、石壁の方をがりがりやっている姿を見ると、この爪研ぎのためにスーツケ
ースに入らず、持ってくるのを諦めた品々(例えば餅とか、せんべいとか・・・)の
姿が目に浮かぶ。
そっぽ向かないでこれで爪研いでよっ〜!
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物から目を転じると東京と言えども自然がいっぱい。家々の庭には狭いながらも花が
咲き揃っているから、東京の街をあるくのは楽しい。私には珍しい花々のほかに、ハ
イビスカスやブーガンビリアもあり、世界中の花が見られた。特に、姉のサボテン・
コレクションがみごと。写真はそのごく一部で、中にはメキシコでしか見られないよ
うな大型のサボテンもある。いや、メキシコと言えどもどこでもサボテンが見られる
と思ったら大間違い。温暖な中央高原では見たこともないサボテンがいっぱい。
姉の庭のみごとなサボテン・コレクション
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久し振りの友人に会ってお昼ごはんを一緒にしたら、台風の合間で空気が澄んでいた
せいか、レストランの窓からも富士の姿がくっきりと…。だけでなく、母の病院通い
の合間に、お医者さんの許可を得て、初めて母娘4人女ばかりで河口湖温泉へ一泊旅
行したときには、それこそ富士山を堪能した。で、そこでお願いした観光タクシーを
頼んだら、この運転手がまた超のつくおしゃべり。私たちは行きたくないと断ってい
るのに、強引に連行されたのが富士国際花園。これが感動もの。1300種のベゴニ
アを中心とする花々、37種200羽のフクロウ、7種70羽のインコ、30羽のエ
ミューがいる。

何よりも、ハリーポッターのシロフクロウ始め、大小さまざまな表情もさまざまなフ
クロウがいて、しかも触ったりいっしょに写真と撮ったり。メキシコにも棲むという
ナンベイヒナフクロウなど、賢そうで可愛らしい目のフクロウが、何の因果か、自然
から引き離されて日本くんだりまで連れてこられて、人に撫でなでされているのは不
憫だが、彼らを間近に見られたのは大いに感動ものだった。温泉、富士山、フクロウ
とこれ以上何を望むべき?
これ置物ではありません。生きているし、愛想が良い。
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姉の家の二階の窓から見たのが、お隣の家の石塀に囲まれた庭にある亀。剥製か或い
は石を彫って作った置物だと思ったけれど、気になって、少し時間を置いて何度かお
隣の庭を覗き見ると、その都度、ポジションが変わっている。生きているのだ。メキ
シコでもTORTUGA JAPONESA日本ガメと名乗る亀を水槽で売っているがそんな小もの
ではなく、一抱えもある大きさで、甲羅が立派な亀だ。

友人と一緒に行った六本木ヒルズはともかく、江戸東京博物館という面白くて一日中
でもいたくなるお勧めのスポットも訪れた。いやはや、心理的に何でもありのメキシ
コとは違う意味で、物理的に何でもありの日本だ。珍しいもの、美しいもの、最新の
ものが手に入るし、手に入らないものは作り出してしまう。自然も科学も文化も物質
(ついでも食べ物も)も溢れている。メキシコに帰ったら、ラジオで、「メキシコに
は豊富な天然資源が溢れているのに、なぜ裕福ではないか」というテーマで話し合い
をしていたけれど、同じ人間のやることがどうしてこうも違うか考え込んでしまう。

クエルナバカで帽子なしで毎日散歩していたのに、日本で1ヶ月余り帽子を被って歩
き回ったら、大いに日に焼けてしまった。帰りの飛行機では、スチュワーデスが、飲
み物を出すときや、食事のとき、機内販売のときなど、声をかけてくれるときはいつ
も英語。隣の座席の人には日本語で話し掛けても、私には英語だったのは何ゆえか?
単に日本人離れした黒い顔だったからか、それとも10年メキシコに住んで、すでに
日本人とは異なる匂いを発していたからだろうか。

現在メキシコに戻って、日本のカルチャーショックぼけのせいか、立ち直れずに、ぐ
うたらな生活をしている。だんだん珍しい国になる日本と、じっくり付き合ってくれ
た家族たちを思い出し、つらい飛行機の旅を考えても、近いうちにまた帰りたいなぁ
と、夢見る私なのであります。

おまけの話:  CHUCHUMBEで見たメキシコ

あれほど大きな騒ぎだったオリンピックは、ここではまったく話題になっていない。
400m走常勝ランナーのアナ・ゲバラも2位に終わり、銀がみっつに銅がひとつの
成果では、アテネでは一度も国歌が流れなかったわけで寂しい限りだ。

それはとも角、帰国早々コンサートに行って来た。バイオリニストの黒沼ユリ子さん
が知らせて下さった CHUCHUMBE-FANDANGO DEL SUR DE VERACRUZで、FANDANGO DEL 
SUR DE VERACRUZと言うのは、ベラクルス南部地方で、祭りや儀式の時に演奏される
陽気な歌と踊りの音楽だ。チュチュンベというグループがこれらの歌や踊りを研究し
ながら、古くからの楽器や新しい楽器を作り出して演奏しているそうだ。今回も初演
奏の楽器も出演の楽しいコンサートだった。

このマリアッチとも異なる、話し掛けるような、即興音楽のような歌に合わせて一人
の女性が踊るのですが、これが非常に魅力的で絵になる姿。ところがある曲で、舞台
上に観客を招いて一緒に踊りましょうと言うと、さすがメキシコ人。ためらいもなく、
狭い舞台に容姿年齢さまざまな女性が10人以上舞台に上がり、ひしめき合って踊り
始めるではないか!タップのように足を踏み鳴らし、スカートをひらひらさせ、まっ
たく踊り子に負けない堂々とした踊りっぷり。ジーパンにTシャツの人もいるし、踊
ることを予想していたみたいなひらひらのスカート姿の人もいる。
さすがメキシコ人、音楽があればどこでも踊り出す
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別の曲では観客の男性が引きずり出されたのですがこれもサクラではないかと思える
ような上手さ。そのうち、呼ばれもしないのに舞台に上がって踊り出すカップルもい
て、まったく何を考えているやら。そう言えば、メキシコには学校の運動会や体育祭、
合唱コンクールなどもなく、一般的にも、競争したり、そのために練習に励むという
姿勢が希薄なようだ。たとえ、玄人はだしの芸を見せても、それは切磋琢磨した結果
ではないし、名誉を求めたりするものでもなく、純粋に楽しみのためだけのよう。

日本人が、たとえ趣味でも一生懸命に勉強、研究し、少しでも進歩や向上を目指して、
日々励んでいるのに対して、メキシコ人の踊ったら踊りっぱなしの態度は潔すぎやし
ないだろうか。もっとも、そういう生き方もあると認めてしまえば、別にそれで良い。
私自身、どう考えても、メキシコ人的生き方をしているし・・・。

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バックナンバー
#1 「運転しよう」から:何でもありのメキシコ式運転
#2 「猫」から:猫の獲物はどうする?
#3 「免許証」から:ここでは買うんです
#4 「仕事をしよう」から:押し掛け助手は大活躍
#5 「仕事をしよう」から:コンサート後のご馳走
#6 「仕事をしよう」から:黒沼邸でのミニコンサート
#7 「スペイン語」から:無口な日本人
#8 「免許証から」から:車の所有税
#9 「クエルナバカ」から:蜂鳥
#10 「猫 パートII」から:捨て猫アナスタシア
#11 「猫穴」から:アメリカ・ドライブ・転々旅行
#12 「女性」から:老化現象と更年期障害
#13 猪俣猛作曲「クエルナバカの碧い空」
#14 日本へ一時帰国しました/その他
#15 運転したら事故はつきもの
#16 私たちの夏休み日記
#17 最近の感動:みんな生きている!
#18 ホームページ1周年記念
#19 仕事人「かり」
#20「葛飾諏訪太鼓」の日々
#21 クエルナバカから謹賀新年
#22 薬の話
#23 社交サロンの話
#24 夏時間、ク日比較アンケート
#25 母は強し
#26 我が家のガーデニング
#27 選挙裏話と日ク比較
#28 国際ピアノ・コンクール
#29黒沼ユリ子さん邸CASA DE VIOLIN増築祝い−ペット・ロス症候群
#30 2周年記念・シドニーオリンピック・おまけ「スキャンダル」
#31 我が家に棲みつく魑魅魍魎、おまけの話「無料電話」
#32 私達のSEXENIO、おまけの話「歌のクラス」
#33「CREA」取材のコーディネータ初仕事、おまけの話
#34「日本週間」、おまけの話「コーディネータ、プロ宣言」
#35 ニューヨークの白い空、おまけの話「夏時間」
#36 巣立ちの夏 、おまけの話「民宿 かず」
#37悲しい話、おまけ:雑誌TITLE
#38健康に自信がありますか?;おまけの話:TELECABLE INTERNET
#39  コンサート・デビュー;おまけの話:テレビ番組の取材
#40  夏休み病気特集第二弾;おまけの話:テレビ番組の放送日程
#41  我が家の独立記念日、おまけの話:アメリカ・テロ事件
#42  続編:独立記念日、おまけの話:テロ事件のメキシコの反応
#43  犬を買いませんか? おまけの話:イダルゴ州の温泉
#44  日本メキシコ学院リセオで講演;おまけの話:2001年総括
#45  謹賀新年、 おまけの話:子供達の里帰り
#46  ベラクルス珍道中: おまけの話: 月刊誌NOVARK 
#47  女性についての考察: おまけの話:日本一時帰国のお知らせ
#48  一時帰国報告: おまけの話: JAL悟空格安チケット
#49  「清流」とサッカーの話: おまけの話: かずの写真館
#50  7年半目の情緒不安定: おまけの話: 癒しのピアノ館
#51  ホーム・コンサート決行;おまけの話:帰ってきた子供達
#52  老人ホーム慰問コンサート; おまけの話:パパ訪問
#53  タマがうちにやって来た。おまけの話:慰問コンサート
#54  私の公園デビュー、おまけの話: キャデラック売ります。
#55  売れた! おまけの話:今年一番長い夜
#56  タイ旅行報告、おまけの話:クリスマス・コンサート
#57  NY息子救出作戦、おまけの話: レコーディングとラジオ番組
#58  タマ、おまけの話:ラジオ番組
#59  薬害?それともアレルギー、おまけの話:メキシコの苦悩
#60  最近読んだ2冊の本と戦争、おまけの話:リコーダー
#61  気になる最新ニュース、おまけの話:最後のミサ
#62  メキシコに住むということ、おまけの話: 日曜日も有料に!
#63  200歳、200歳 2SIGLOS おまけの話: コンサート
#64  夏休み雑感、 おまけの話: 稼ぐ!
#65  繁子さんの死、 おまけの話: 扶養家族
#66  人生の節目5周年、 おまけの話: アミーゴスの仕事
#67  私はクエルナバカ、おまけの話:かずさんは日本
#68  返品自由、 おまけの話:みんな仲良く
#69  年末・年始 雑感 − おまけの話:バイオリンの家での新年会
#70  スペイン語で講演; おまけの話: 大統領選
#71  シンプル・ライフ; おまけの話: ENGLISH JOURNAL 
#72  胸がドキドキ、おまけの話: 十二支の絵馬
#73  豆製品料理教室、 おまけの話: またも会計係
#74 トラケパケの小壷、 おまけの話: 春雑感
#75 日本人の足跡、 おまけの話: 絶対音感
#76東京ネコ物語、おまけの話: 納豆菌

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