「クエルナバカの碧い空」第79号
#4 トピックス − メキシコ発世界へ
野菜、穀類、果物など、メキシコ原産品を以前に紹介しましたが、これだけではあり
ません。メキシコから世界へと広がったものが他にもたくさんあります。今回は、メ
キシコを中心に中南米産から、世界へ・・・を紹介します。

1)チョコレートCHOCOLATE

原材料のカカオがメキシコ原産で、原住民はカカワトルCACAHUATLと呼びました。原
産のカカオ豆には大小4種類ほどあり、美味しいチョコレートに使われる他に、貨幣
として使われるものもありました。日本の米俵が石高で現されるように、粗布の大袋
COSTALに入れられて、現在でも、400 COSTALESを1 IZONTLIと数え、薪などの単位
として使われる地方もあるそうで、メキシコでは古くから日常のものでした。

チョコレートはこのカカオをよく挽いて湯に溶いて作る飲み物で、原住民の言葉では、
XOCO-ATL(XOCOはすっぱ苦い、ATL水)、つまり「すっぱ苦い水」と呼ばれて、万能
薬として飲まれていました。征服者コルテスがメキシコに到着したのが1519年2月、
1920年には既にスペインにカカオとチョコレートの作り方が持ちこまれたそうですか
ら、よほど気に入ったにちがいありません。

その、もともとは甘くない、健康食品だったチョコレートを、更に美味しくするため
に、スペイン人は蜂蜜、シナモン、バニラ、砂糖などを混ぜ、現在の肥満のもととも
なる甘いチョコレートが生み出され、16世紀半ばには、早くもヨーロッパ中に広がっ
たそうです。ですから世界中で、メキシコ現地語のチョコアトルに近い言葉で呼ばれ
ており、日本でも美味しいチョコレートが食べられる。食べ過ぎはよくないと知りな
がら、美味しくて、やめられない。

2)バニラVAINILLA

ベラクルスを旅行したときに、タヒンEL TAJINの遺跡の近くで、野生と思われるバ
ニラの木を見ました。丁度、長い鞘の種がなっていて、触ると、あの美味しい匂いが
しましたが、本当は実そのものは匂いがしないそうで、製造過程でバニラの匂いを出
すようになるのだそうです。しかし、私達は、その木がバニラの木と知らずにいたの
に、匂いで、「あ、バニラ!」と思ったのですから、何かが匂ったのでしょう。その
時は花はなかったけれど、バニラの木はランの一種で、大きな白い花が咲くそうです。

もともと、ベラクルス州付近に住んでいたトトナカ族が発見しました。彼らは、陽気
で楽観的な人々で、バニラを文化の中心となるシンボルとして扱っていたそうです。
タヒンの遺跡の近くで、ボラドーレスVOLADORESの祭りを見た事がありますが、彼ら
がトトナカ族で、高さ40メートル近い棒の天辺に結びつけた紐を足首に巻き、棒の
周りを着飾った民族衣装の男たちが、空を飛ぶように舞います。
空中を舞う鳥人トトナカ族の勇者と記念撮影
(クリックで拡大)
後に征服者コルテスがバニラをヨーロッパに広げ、主にフランスで栽培されるように
なり、バニラ・エッセンスとしてケーキやアイスクリームに使われるようになりまし
た。バニラの木はアジアでも栽培されるようになり、また、人工バニラにも開発され
て、メキシコ産のバニラの木の需要は大幅に減り、現在、世界で商品化されているバ
ニラ・エッセンスはほとんどは外国製のもののようです。

ただし、今でもベラクルス地方では、バニラから作ったリカーXANATHが飲めるそうで
すので、是非、お立ち寄りの際にはお試しください。

3)七面鳥GUAJOLOTE

スペイン人が持込むまでは、メキシコ人は馬などは見たこともなく、その代わり、も
ともと、鹿、山猫類、イグアナ、イノシシ、アルマジロなどがいました。しかし、古
代メキシコ人は動物の肉はあまり食べず、戦争の時に鹿の皮を着たりするなど、皮や
骨は利用していたようですが、どちらかというと菜食主義だったそうです。

そんな動物の中に七面鳥がいます。今でもちょっと郊外に出ると、家々の庭や前の道
路を、ニワトリとはちょっと異なる七面鳥が地面をつついています。これは野生の七
面鳥で、ウワホローテと呼ばれています。

現在では、アメリカなどで特別なお祭りの食べ物であるようですが、メキシコでは、
ハムやソーセージにも七面鳥の肉を使ったものが多く、普段からスーパーに出ている
のでよく食べます。脂身が少ないので健康的かな?と思っています。

4)ゴムHULE

ウーレ、現地語でULLIもそのまま世界語になっています。ゴムの木は、メキシコか
らブラジルにかけて、中南米で広く自生しており、メキシコでは、チワワ州、コアウ
イラ州、ドルランゴ州など北部の州でよく見られるそうです。古代メキシコ人は主に
球技用のボールを作って、弾ませて遊んでいたという記録が残っています。

この木は、現在では世界中で栽培されており、1820年代ころから、工業用材料とし
て重用されるようになりました。1839年にアメリカ人のネルソン・グッドイヤーが
更に耐久性のあるゴムを開発し、タイヤが生産されるようになりました。現在では、
防水用、消しゴムや輪ゴムなどの日用品、そしてチューインガムにも、世界中どこで
でも見られる製品ばかりです。

5)タバコTABACO

便利で身体に良いものばかりではありません。はた迷惑な商品の代表例タバコもメキ
シコを含むカリブ海周辺の国々の原産です。タバコを吸うためのパイプのことを原住
民が「タウァコTAHUACO」と言っていたことから、後に渡ってきたスペイン人が、その
ままタバコと呼んだそうです。またクリストバル・コロンブスCRISTOBAL COLONの探
検隊が、現在のハイチでタバコを発見、当時、ハイチがTOBAGOと呼ばれていたことか
ら、タバコの語源となったという説もあります。

古代メキシコ人は、ナウアトル語でPICIETL、マヤ語ではKUOTSと呼び、香りの良い
葉を選んで、特に宗教儀式などで、土器製の美しいパイプでふかしていました。さら
に、乾燥した葉を筋肉に当てて、痛みや疲労の緩和に使うなど、薬としても用いられ
ていたそうです。パレンケの遺跡の神殿の中に描かれている男性が、最も古い喫煙者
の絵とされているようです。

現在、メキシコは世界で5番目のタバコ生産国であり、パッケージの商品名から言う
と90のブランドがあるそうです。当然、喫煙者が多いのですが、喫煙は18歳以上
という法律にも関わらず、若年層の喫煙者が多いこと、自分が吸わなくても強制的に
煙を吸わされる受動喫煙者が多いこと、それに伴う様々な病気の増加が大きな社会問
題となっています。

6)綿ALGODON

名画「風と共に去りぬ」で、黒人たちが腰を屈めて白い綿を摘んでいるシーンがあり
ましたが、この綿の木は、ものの本によると紀元前3000年もの昔からメキシコでは
栽培されていたそうです。木綿にも色々あって、インドなどのアジアの国が原産と言
われていますが、メキシコもそうなんです。

ですから、征服者コルテスがメキシコに来た当時も、上流階級の人々の服装は非常に
色とりどりで、メルカドにも生地や糸が溢れていたそうです。天然の染料を使ったこ
れらの服飾品は今もオアハカ州やゲレロ州で見られますが、そのカラフルなことに驚
いたコルテスは早速、これらの品をヨーロッパに送ったそうで、単なる必需品ではな
く、美しい刺繍などがヨーロッパ人の目を惹きつけたことは間違いありません。

7)ポインセチアNOCHE BUENA

11月になると、クエルナバカの庭、道路、広場といろんな場所で、野生のポインセ
チアが赤く色づいているのが見られます。ポインセチアは、クエルナバカのあるモレ
ーロス州の原産です。赤い部分は、葉が紅葉したもので、本当の花は、真ん中の小さ
な黄色い部分です。それだけ見ると、可憐で香りもよく、美しい花です。

現在では、クリスマスになると世界中で飾られるポインセチアは、ナウアトル語で
IN XOCHITLと言い、クリスマス近くになると自然に色づく事から、メキシコでは、
NOCHE BUENA(クリスマス・イブのこと)と呼ばれています。もともとの野生種は背
丈が3メートル、4メートルにもなる程の大きなものです。

現在、世界でポインセチアと呼ばれているのは、在墨アメリカ大使だったPOINSETT
氏が、1828年に、この花の種を故郷のチャールストンに送ったのがきっかけて、彼
の名前がつき、後に、ヨーロッパから世界へと広がりました。メキシコ人に聞いても、
ポインセチアという名前は知られていませんから、ポインセチアと言っても何のこと
やら…という感じでしょう。更に、日本では、顔が赤くなることから、猩猩木(ショ
ウジョウボク)と言う学名がついているそうです。もっとも、種類が沢山あって、赤
だけではなく、黄色、黄緑色、小さな白の花がチロチロと咲くものもあります。
白いポインセチアもあります
(クリックで拡大)
すっかりクリスマスの花となったポインセチアですが、モレーロス州では10月から
1月くらいまで、青空の下で咲いています。また、道端でも鉢植えが売られるように
なると、今年もそろそろ師走の気分です。

8)ビールはコロナCERVEZA CORONA

(7)までは、メキシコ原産物を挙げましたが、日本で言うならウオークマンとか、
何か工業製品とか発明品はないかと探しました。ありました。メキシコが誇る美味し
いもの、コロナ・ビールです。
メキシコ代表のコロナビール
(クリックで拡大)
「コロナには、飲っていいことと、悪いことがある」というのを知っていますか?こ
れは日本でのコロナのポスターの文句です。昔はメキシコ・レストランだけでしか飲
めなかったコロナ・ビールですが、最近ではちょっと大手の酒屋さんにはおいている
ようですね。

国内はもちろん、輸出に力を入れているGRUPO MODELO社は、1985年にカナダ、日本
への輸出を始めたのを皮切りに、2000年には世界150国でコロナ・ビールが飲ま
れるようになりました。米国では、1997年から全米売上げ第一位を獲得しています。
さっぱりとしてコクがある…美味しいコロナ・ビールはいかがですか?

9)トリオ・ロス・パンチョスTRIO LOS PANCHOS

古いとお思いでしょうが、代替わりしながら、現在も活躍するグループです。1944
年にニューヨークで結成されたメキシコ人トリオは大成功を収め、1948年にはメキ
シコに本拠地を移し、日本でもよく知られる存在になりました。私は現在の活躍はよ
く知らないのですが、今でも誰でも知っている懐かしいメロディーが沢山あります。

最近では、日本でもなじみになったLUIS MIGUELがいます。彼はプエルト・リコ生ま
れのメキシコ人。甘い声が魅力で、切々と歌うバラードが心に沁みます。

もう一人、テノール歌手の大御所プラシド・ドミンゴPLACIDO DOMINGOはマドリッ
ド生まれですが、8歳の時にメキシコに移り住み、メキシコで音楽を学び、オペラ・
デビューもメキシコ。オペラだけでなく、ラテン音楽も大好きで、数多くCDを出し
ています。私はメキシコの芸能界のことは何も知らないのですが、他にも日本で有名
な人がいるかも…。

以上、思いつくままに書き上げました。他にもあったら、ぜひ、教えてください。


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バックナンバー
#2 メキシコの住宅事情
#3 警官への賄賂
#4 音楽友の会 10周年コンサート裏話
#5 ノーチェ ブエナ物語
#5 クリスマス行事
#6 年末年始の休みとグアダラハラ家族旅行
#6 トレス レイエス
#7 ビザの種類と更新
#8 モナルカ蝶の聖域ツアー
#9 ガールスカウト奈良支部
#10 チャイコフスキーのバレー「白鳥の湖」
#11 メキシコ縦断アメリカ転々旅行
#12 メキシコの飲み物
#13 テキーラ
#14 花が咲いて実がなった(街で見る果物)
#15 アステカ・カレンダリオの謎
#16 2000年・年越し祭り
#17 9月16日 独立記念日
#18 特別ゲスト、中村さつきさん
#19 DIA DE MUERTOS 死者の日
#20 葛飾諏訪太鼓メキシコ滞在記 (リーダー水澤啓一 記)
#21クエルナバカの年末年始
#22 メキシコ病院事情
#23 今も懐かし、街頭の物売りたち
#24 養老院YALENTAY慰問コンサート
#25 メキシコの温泉も気持ちいい(*^o^*)
#26 ノパール NOPALで健康に!
#27 メキシコの選挙
#28 ロマンチック・アシエンダ(荘園)街道巡りの散策
#29メキシコ、愛国心のしるし
#30メキシコの結婚式 − 二つの体験談
#31メキシコ原産トウモロコシ MAIZ の秘密
#32 6年に一度の大統領就任式
#33 メキシコのピニャータ
#34 火山ポポカテペトルと山麓の世界遺産−修道院群
#35 MARCHA ZAPATISTA サパティスタの行進
#36 メキシコの飲み物 第二弾 − メキシコの伝統的な飲み物
#37メキシコの飲み物 第3弾 − メキシコのアルコール飲料
#38 QUINCENERA -XV歳の社交界デビュー・フィエスタ
#39 メキシコのお金
#40「民宿かず」お客さま第一号記念
#41 メキシコの祝祭日・記念日
#42メキシコ・シティから独立記念日の実況中継
#43 RUTA DE ZAPATA 革命児サパタを辿る道
#44メキシコのクリスマスと「NACIMIENTO」飾り
#45メキシコの伝統菓子
#46メキシコの宝くじLOTERIA
#47藤枝先生のメキシコ体験談
#48ラス・エスタカス物語HISTORIA DE LAS ESTACAS
#49メヒカン・フルーツの全て(第一部)
#50メキシコのルチャ・リブレ−高橋千歳さんの特別報告
#51  PAPA JUAN PABLO II メキシコ来訪メモ
#52 メキシコ・シティの地下鉄 METRO EN MEXICO
#53  TEMAZCALの謎
#54  メキシコ原産の野菜たち
#55  唐辛子CHILE
#56  命の木 EL ARBOL DE LA VIDA
#57  伝統玩具JUGUETES TRADICIONALES 
#58  太陽の味フルーツ盛り合わせ
#59  グループ・ストウ クエルナバカ・コンサート顛末記
#60  聖週間SEMANA SANTAの研究
#61  不満だらけメキシコの雑誌
#62  メキシコで働きたいですか?
#63  ファースト・レディPRIMERA DAMA 
#64  広い範囲で薬MEDICAMENTOS 
#65  野球BEISBOLはどうなってる?
#66  名前に関する考察
#67  メキシコの治安
#68  まちゃのメキシコ体験記
#69  2003年メキシコ十大ニュース
#70  パンも美味しい
#71  ところ変れば…
#72  チワワ鉄道旅行記
#73  渡邊氏のハチドリ子育記
#74  宇野氏の「トラコテの水」報告書
#75  メキシコ移住−小木曽氏の場合
#76  ところ変われば… − 第二弾
#77  メキシコ一のお金持ち
#78  初級スペイン語会話

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